緊急依頼
~第六十章~緊急依頼
「緊急依頼ですか?」
「はい、ギルドには、稀に緊急を要する依頼が舞い込みます。それが緊急依頼です。危険性が高い依頼が多いですが、その分、報酬も良いですよ。オオトリさんも受注してみますか?」
「因みに、依頼の内容は?」
「村が突然、山賊の襲撃を受けたそうで、村人達が連れ去られたそうです。そこで急遽、村人の救出と、盗賊の討伐が決定しました。」
山賊の襲撃か…。
襲われた村も大変だな。
まあ、わざわざ危険を冒して俺が助けに行く理由は無いかな?
「えっと、ちなみに襲われた村は、サリオン村ですね。」
え?…今なんて言った?
サリオン村って言わなかったか?
聞き覚えのある村の名前が出た事により、背筋に冷たい物が走る。
サリオン村と言えば確か、エリナさんの住む村では無かったか?
急にエリナさんの無事が気に成り始めた…。
「因みに村が山賊に襲われたのは何時頃ですか!?」
「サリオン村から、馬で救援を求めて来たのが、つい先程です。村からこの町まで、馬を飛ばしても4時間程掛かりますから…。」
「約五時間程前…。朝方に襲われたと言う事ですか…。」
「はい、そうなります。」
俺は難しい顔をして考えていた様で、ペロが心配そうに俺を見ていた。
「御主人様。顔色が優れませんよ?大丈夫ですか?」
「ああ、うん。大丈夫。少し、緊急依頼の内容に驚いただけだから…。」
「誰か、村にお知り合いでも?」
「うん、俺の恩人のお孫さんがね…。前に立ち寄った時に少し、仲良く成ったんだ。」
「そうでしたか…。それで、御主人様は如何するのですか?」
「如何する、か…。如何しようか?今更、行って間に合うのか?」
「もしかしたら、山賊の襲撃を逃れているかもしれませんよ?」
「…そう、だな。うん!間に合うか?なんて、此処で考えても仕方が無いよな!!」
「はい!」
「俺は、今からサリオン村へと向かう。ペロ、村はまだ山賊がうろついて居て危険かもしれない!レミアムの街で留守番を…。」
「嫌です。付いて行きます。」
俺が言い切る前にペロはキッパリと自分の考えを口にした。
「いや、でも…。」
「何と言われようと、私は御主人様に付いて行きます!御主人様が危険に飛び込むなら、私も飛び込んで付いて行きます!」
これは、何を言っても無駄かな?
無理やり置いて行っても、後から付いて来そうだ。
俺の目の届かない所で無茶されるより、目に届く所に居てくれた方がまだ安心出来る。
「分った。ペロ!俺に付いて来てくれ!」
「はい!御主人様!!」
「…では、オオトリさん。緊急依頼、受注ですね?」
俺達のやり取りの一部始終を見ていたレベッカさんは、淡々と事務処理を終え、依頼書を俺に手渡す。
…冷静なツッコミを受けた感じで、少し照れる。
「では、依頼の説明を致します。」
俺とペロは姿勢を正してレベッカさんの話に耳を傾ける。
「依頼内容は、攫われた村人の救出と山賊の討伐、もしくは捕縛です。詳しい状況などはまだ、ギルドに情報が回って来ていません。現状は直接、サリオン村で聞くのが一番早いと思われます。なお、現在、先遣隊は、馬屋から早馬の貸し出しが無料で利用出来ます、御活用下さい。夕刻には第二陣も出発します。」
それだけ聞ければ十分だ。
「ペロ!早速向かうぞ!」
「はい!」
俺とペロは冒険者ギルドをでて、馬屋へと向かう。
馬屋は、ギルドのすぐ隣に在る。
「冒険者ギルドの者です!馬を貸して下さい!」
馬屋に向って叫ぶ!
「はい、いらっしゃい。どの馬にする?」
馬屋の中には様々な馬が並んで居る、どれにしようか?
悩んでいるとペロが一頭の黒い馬を指さす。
「御主人様…。この子が良いと思います。」
「何故、この馬?」
別に馬の目利きなど俺には出来ないので、どの馬でも良かったのだが。
ペロがやけに迷い無く選んだので理由が知りたくなったのだ。
「この馬、目がとても力強いです。私が選んだと言うより、この馬に選ばれたという感じです…。」
馬屋がこの馬について語る。
「いや、お目が高い。この馬はウチで一番の駿馬でして、持久力も高い!ですが、如何せん乗り手の技量を図る所が御座いまして…。ハッキリ言って、じゃじゃ馬なのです。並の乗り手では振り落とされてしまうでしょう。失礼ですが、止めておいた方が…。」
ペロはじゃじゃ馬を俺に推した事に申し訳なさそうにしている。
そんな顔をするなよ、ペロ…、大丈夫だから。
何といっても俺にはスキル「騎乗」が有るからな!
「では、この馬。お借りします。」
えっ!?と馬屋とペロは同時に答える。
流石に乗れない馬を借りるとは思わなかったのだろう。
馬屋は渋々、馬を柵から連れ出すと俺の所に連れて来る。
俺は連れて来られた馬の横腹を撫でてやると、されるがままに大人しく撫でられている。
馬に跨り、軽く走らせてみるが、従順な物だ。
とても、じゃじゃ馬なんて、信じられない。
その光景を見ていた馬屋は信じられない物でも見た様に、アングリと口を開けていた。
「ペロ!乗って!」
「は、はい!」
俺はペロを後ろに乗せて一路、サリオン村へと向かうのだった。
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