ペロ・シーバ 3
~第五十四章~ペロ・シーバ 3
私と御主人様は食事を終え、部屋へと戻って来ました。
そう言えば、まだ私は、どんな仕事をすれば良いのか御主人様に窺っていませんでした。
「ア、アノ…。ゴシュジンサマ。ワタシハ、コレカラ、ナニ、スレバヨイデス?」
御主人様に仕事内容を聞いてみましょう。
「オレハ、ボウケンシャ、ヲシテイルッテ、セツメイシタカナ?」
初めて聞く内容に私は首を横に振って返事する。
「ペロニハ、オレノシゴトノ、テツダイヲ、シテモラオウト、オモッテル。」
冒険者…。
お仕事自体は誰でも聞いた事のある職業なので理解出来ますが…。
自由に歩き回れない私の足では、仕事の邪魔にしか成らないのではないでしょうか?
「ワタシ、アルケナイ、ゴシュジンサマノ、アシデマトニ、ナル。ます。」
そんな私の問いに対して御主人様は、意外な言葉を返して来ました。
「ペロ。オレハ、キミノ、アシヲ、ナオセル、カモシレナイ。」
まさか!?そんな事が…、出来る訳、無いですよ…。
私はお母さんを思い出し、俯きながら呟く…。
「ワタシノ、オカサン、アシ、ナオスタメ、ガンバッタ…。デモ、マホウモダメ、ポーションモ、ダメダッタ。です。オカサン、タオレルマデ、ガンバタケド、ワタシノ、アシ、ナオラナイ…。」
一瞬の静寂…、それを打ち破ったのは御主人様でした。
「ソレデモ、タメシテミヨウ!」
「…ハイ。」
私は只、頷く事しか出来ませんでした…。
御主人様は、暫く物思いに耽っていると、突然思い付いた様に、質問をして来ました。
「タシカ、マモノニ、アシノケンヲ、ヤラレタンダッケ?」
「ハ、ハイ。コドモノトキ、オソワレタ。マシタ。」
あの時の事は良く覚えては居ないのですが…。
「ジャア、マズキョウハ、カイフクマホウヲ、タメシテミヨウカ。アシヲ、サワルヨ。」
「ハ、ハイ。」
御主人様は私の足を触ると、古傷を確認してから、ソッと手を当てます。
「小ヒール。」
何度も続けて回復魔法を試します。
普通、回復魔法で治癒を頼むだけで沢山のお金が必要なのに、御主人様は私に惜しげも無く使用します。
しかし、効果は…、有りませんでした。
「ペロ。今日は此処までにしておこう。」
御主人様は何度も続けて回復魔法を使用していました、流石に疲れたのでしょう。
無理も有りません。
「ハ、ハイ。アリガト、ゴザマシタ!」
夕食後、御主人様が大きなタライを持って部屋に戻って来ました。
お洗濯でしょうか?
「センタクデスカ?ワタシ、シマス。です。」
「ウン。センタク、モスルケド、スコシ、タメシタイコトガ、アルンダ。」
「?」
一体何をするのでしょうか?
「アクア!」
途端に、掌からバスケットボールサイズの水球が現れる。
水球をソッと桶の中に入れ、水を溜める。
「ゴシュジンサマ、マホウ、ツカエルデスカ?スゴイ。です。」
凄い…。回復魔法が使えるだけでも凄いのに、他の魔法まで使えるなんて!!
犬人である私には、到底出来ない芸当です!
関心していると、御主人様の右手が真っ赤に輝き始めます!
離れた場所に居るのに少し、熱気が届きます。
「ワッ!?ゴシュジンサマ!?テ!マッカです!?」
ジュ!!と音を立てて、右手を桶に突っ込むと、桶から湯気が立ち昇り始めました。
「ウン、オモッタトオリ!オユノ、デキアガリダ。」
魔法って凄い!
こんな使い方が有るんだ!
「ペロ。カラダノ、ヨゴレヲ、オトシテオクトイイ。オワッタラヨンデクレ。キガエハ、コレヲ、ツカウトイイ。」
御主人様は私に着替えを渡すと部屋を出て行った。
体を清めておけ…か。
私は貰ったお湯で体を丹念に洗うと、渡された着替えに袖を通す。
少し変わった服ですね?
きっと、本来は私なんかが着られる代物では無いのでしょうが、わざわざ御主人様が用意してくれた服です、有難くお借りしておきましょう。
服を着替え終わり、少し心の準備を…、大きく息を吸い…、よし!
心の準備を整え、御主人様をお迎えに行くと、食堂でお茶を嗜んでいました。
「ゴシュジンサマ、オマタセ、マシタ。」
御主人様に続いて部屋に戻ります。
ま、まずは、お背中を洗って差し上げましょう。
「ゴシュジンサマ、ワタシ、セナカ、アラウ、ます。」
自分の口から出た台詞とは言え、少し恥ずかしいです…。
まさか、男性の背中を流す日が来るとは思っていませんでした…。
御主人様の体を洗い終えると、御主人様は私の髪を洗ってくれました。
ただ、洗ってくれている最中、顔が近くに来て、少し、ドキドキしました。
私の髪を洗い終えたので、今度は御主人様を洗って差し上げる事にします。
「ゴシュジンサマ、カミ、ワタシガ、アラウます。」
御主人様も髪を洗われると少し視線が泳いでいました。
時折私の胸付近に目が行っていたのは気のせいでしょうか?
「サッパリシタトコロデ、キョウハモウ、ネヨウカ?」
「…!?…ハイ!」
ついに、御主人様からお呼びが掛かりました…。
初めてなので、その、少し…、怖いです。
「ペロ、オレハユカデ、ネルカラ、ベッドハ、ツカッテイイヨ。」
「ダメ、です!ユウシサマ、ユカデ、ネル。ダメ、です。ワタシガ、ユカデ、ネマス。」
幾らなんでも、御主人様を床で眠らせる訳にはいきません!
「ウーン。ジャア、フタリデ、ネルカ?」
御主人様は優しくしてくれるでしょうか…。
心配です…。
しかし、私は奴隷、いつか抱かれる時が来るなら、早い方が良いでしょう。
「ハ、ハイ!ヨロシク、オネガイシマス!」
大きめのベッドとはいえ、二人で寝るには少し狭い。
私は御主人様に背を向けて、横に成っています。
求められた時は、きちんとご奉仕しなければ…。
そんな事を考えていると、突然尻尾を撫でられました!?
「(ワゥ…、ウゥゥゥ。)」
恥かしくて顔が赤くなるのが分ります。
今まで優しく撫でていた尻尾をギュッと握られる!?
「ワゥ!?」
驚きと共に、ギュッと握られた痛みに怖さが広がりました。
や、やっぱり…、嫌だ!!
御主人様の手の届かない所に逃げる為に這い逃げる!
途端地面が(ベッド)無くなり、ベッドから落ちる。
そのまま、壁際まで逃げ、壁に縋り付く…。
「ペロ!?」
突然の事に驚く御主人様の声が聞こえ、明かりが点く。
御主人様が此方にゆっくりと近づく。
「(お、怒られる!?)」
主人の寵愛を拒否したのだ、只では済むまい…。
「ペロ…。ドウシタ?」
私に手を伸ばす御主人様…。
殺されると思った!瞬間、体が勝手に動き、御主人様の手に目掛けて噛み付いてしまった!
途端!!急に首元が苦しいと感じた瞬間!体に痛みが襲いました!
「ギィャン!!」
痛みは全身に広がり、私は意識を失いました…。
目を醒ますと御主人様が心配そうに見下ろしていました。
「ペロ。ダイジョウブカ?マダイタクナイカ?」
しまった、と思いました。
御主人様を拒絶したばかりか、怪我をさせてしまうなんて…。
「クゥン…。ゴシュジンサマ、ゴメンナサイ。ワタシ、コワカッタ…。ゴシュジンサマ、ワタシ、モトメテクレタ、デモ、ワタシ、コワカッタ…。テ、カンダ…。チ、デテル。ゴメンナサイ、ゴメンナサイ。」
「ダイジョウブ、スコシ、チガデタ、ダケダカラ、スグニ、ナオルヨ。ペロ。ゴメンネ。コワイオモイヲサセタネ。」
御主人様は私の頭を撫でながら、謝っています。
何故でしょうか?悪いのは私なのに…。
「ワタシ、ドレイ、ゴシュジンサマ、ワタシ、サワル、トウゼン。」
「ペロ、イヤダッタラ、コトワッテ、イイカラネ。」
「…ハイ。」
それから、改めてベッドに入り、思います。
私は、役立たずだ…、主人の求めにも応じられず、怪我までさせて…。
私は、この人の役に立つ事が出来るのでしょうか?
UPしました。
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