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ペロ・シーバ 2

~第五十三章~ペロ・シーバ 2


私の檻の有る部屋に1人の男性がやって来た。

奴隷商も一緒だ。

男性は檻を見て回っている。

男性は一つの檻の前に立ち止まると、中の子供奴隷に語り掛けている。

あの子は確か、腕を怪我していた筈だ。

こんな場所では、満足な治療もしてあげられず、腕の傷が膿み始めて痛い筈だ。

子供は男性に腕を差し出すと、ポゥと緑色の光が腕を包む。

すると、子供の腕は綺麗に治癒していた!

余りの出来事に奴隷商も、驚きの声を上げていた。

その後も、男性は、部屋の奴隷達の怪我や傷の治療をして行く。

ゴホゴホと咳き込んでいた人も、少し、顔色が良くなっている!?すごい!

この人は、何者だろうか?

でも、奴隷の怪我を無償で治療してくれる人だ。

きっと優しい人に違いないと思う。…たぶん。


男性は私の檻の前にもやって来る。

奴隷商が男性に私の説明をする、説明の中に「性奴隷」と聞こえた。

思わず身構えてしまう。


「チナミニ、カノジョハ、コノママダト、ドウナルンダ?」


「―――――――…。カイテガツカナイママデスト。サイアク、ヤスネデ、コウザンカ、ショウカン、ヘトウラレマス。デスガ、―――――――――、ショウカンデ、ハタラカセラレルデショウネ。」


奴隷商の言葉の中に「娼館で働かせる」と、有った!

嫌だ!そんな所で人生を終えたくは無い!

此処で、この男性に買って貰わなければ、私は終わりだ…。

自然と瞳に涙が溢れるが、必死に我慢して、男性を見つめ、必死に言葉を紡ぐ。


「ア、アノ…。ワ、ワタシをカ、カッテホシイ…です、頂けませんか?セ、セイッパイ!ご奉仕をシマス…。」


男性と奴隷商は何やら、お話をしています。

私は如何なるのでしょうか?

それから、すぐにお店の人が車椅子を押して、私の檻の前まで来ると檻から出る様に言います。

車椅子に乗せられ奴隷商と店の一室に入ると、先程の男性が座って居ました。


男性がお金を奴隷商に手渡すと、奴隷商は一つの首輪を取り出しました。

隷属の首輪と言う奴です。

御主人様に異を唱えると首輪から電撃が流れるそうです。


「ブッソウナクビワダナ?ドレイニシネトイエバシヌノカ?」


突然、死と言う言葉を耳にして、ビクッと体が反応してしまいました。

私は、一体如何なるのでしょうか?


男性は手に持った短剣で指先を軽く切ると、滲んだ血を首輪へと付け、此方に近づきます。

軽く屈むと車椅子に座った私と目が合います。


柔和な笑顔で語り掛けられる。


「オレハ、オオトリ ユウシ。キョウカラキミノシュジンニナルカラ、ヨロシクネ。」


「ヨ、ヨロシク、オレガイシマス、です。」


ああ、私、この人に買われたんだ。


「(今日からこの人が私の御主人…。)」


首輪を持って立つ、御主人の為に首輪を取り付け易いよう顎を上げる。

御主人の手が首に回され、首輪を取り付けられる。

思っていた程、苦しくは無い。


その後、奴隷商と二言三言喋った御主人は私を連れて部屋を出た。

部屋を出て、御主人は声を掛けられた。

如何やら、御主人の知り合いの様だ。

その後、車椅子を御主人に押されて、街の宿屋に連れて行かれた。


御主人は宿屋の女将と何か話をしている。


「アラ・・・。コマッタワネ。イッカイノヘヤデ、ベッドガフタツアルヘヤハイマ、マンシツナンデスヨ。オオキメノベッドガヒトツシカナイヘヤデイケレバ、ゴアンナイデキマスヨ、リョウキンハオヒトリブンデケッコウデスガ?」


今、ベッドが一つの部屋と言われた様な…。

え!?まさか…。行き成り…。

私は身の危険を感じ…。


「ア、アノ…。ワタシ、ユカデ、ダイジョブです。」


御主人は、部屋の鍵を受け取り、部屋へと向います。

部屋の中には大きなベッドが一つ置かれていました。

御主人はベッドに腰を下ろして私の方を向いた。


「サテ、アラタメテ、ジコショウカイヲ、シテオクネ。オレハ、オオトリ ユウシ。ヨビカタハ、スキニヨンデカマワナイカラ。」


オオトリ ユウシ様。

それが私の御主人様の名前…。

名前…で、呼ぶのは失礼だよね?


「デハ、ゴシュジンサマと、ヨバセテ貰う。マス。」


「エット、キミノナマエヲ、オシエテモラエルカナ?」


私の名前ですか…。

困りました…。


「ナマエ、ワタシ、アリマセン…。」


「エ!?ナマエガナイ!?」


「ワタシ、ドレイにナッタトキニ、ウバワレルです、ナマエ。」


奴隷に成った時に私は自分の名前を名乗る事を許されなく成りました…。

奴隷に名前は不要なのです…。

どうしても名前が必要な場合は、御主人様が付けるのが一般的です。


「―――――ホントウノナマエハ、ナンテイウノ?オレガユルスカラ、オシエテクレルカナ?」


良いのでしょうか?

私の名前を述べても…。

でも、御主人様の許しが有るのならば…。


「ペ¥%@・ロ¢♯・シーバです。」


「・・・。エ?ゴメン、モウイッカイ、イッテクレル?」


あれ?聞こえ無かったのかな?


「ペ¥%@・ロ¢♯・シーバ、です。」


もう一度私の名前を述べる。

しかし、御主人様は難しい顔をしている。

ああ、そうか!私の名前は犬人語だから…。


「エ、エッと…。犬人のコトバ。ヒトゾクニハ、キキトリナイ…かも。」


私が説明すると「アア、ナルホド。」と御主人様は納得してくれました。

次いで私について、質問をして来ました。


「タシカ、ドレイショウガ、キミノコトヲ、シーバ種トイッテイタガ?シーバ種ッテナニ?」


私の種族を聞かれました。

シーバ種って何?と聞かれても、シーバ種はシーバ種ですよ…?

他に答え様が無いのですが…。


「犬人、シュルイがタクサン、イッパイイル。ワタシ、犬人、のシーバゾク。」


納得してくれたのでしょうか?

御主人様は黙り込みます。

説明が足りなかったでしょうか?

すると、御主人様はポツリと呟きます。


「キキトレタ、タンゴハ「ぺ」、ト「ロ」カ…。ペロ?ペロ・シーバ。」


…ペロ・シーバ?どこか私の名前に似ている響きです。

ひょっとして私の…。


「ワタシ…。ペロ?ペロ・シーバ?」


「ウン。キミノナマエハ、キョウカラ、ペロ・シーバ、ダ。ヨロシクネ。」


御主人様はそう言って私の頭を撫でてくれました。

撫でる時に一緒に耳をフニフニと触られました。

ちょっとだけ、お母さんに撫でられた事を思い出しました…。


「ハイ、ヨロシクオナガイシマス。ゴシュジンサマ。」


私の名前が決まり、自分の名前を心の中で反芻していると、御主人様に呼び掛けられる。


「ペロ…サン?」


私の事を呼び捨てにしないのでしょうか?

私はこの人の奴隷です、さん付けされるのは良くないでしょう。


「ペロ、ヨンデ下さい。」


「ジャア、ペロ。ソロソロ、オヒルヲ、タベニ、イコウカ。」


ゴハンを食べに行くから付いてこいと、言う事ですね。

私は御主人様に付いて食堂へ赴き、お食事を取られる間、後ろに控えます。

すると、不思議そうに声を掛けられました。


「ペロ?ドウシタ?ナニカアッタカ?」


御主人様に問われる。

別に何も有りませんよ?

お腹は空きましたけど…、奴隷としては当然の行動です。


「ワタシハ、ドレイダカラ、ゴシュジンサマト、イショのテーブルニハ、ツケマセン。」


「イイカラ、ペロ。コッチニオイデ。」


御主人様はそう言って私の為に椅子を退けて、向かいの席を開けてくれました。

御主人様が席に着けと言うのなら、付いた方が良いのでしょうか?

私は、言われるがまま、テーブルに着きます。


「ペロハ、ドレニスル?」


メニュー表を私に見せながら、聞いて来ます。

私に料理を頼めと言う事でしょうか?

食事は私が奴隷商に居た時は、一日一食程が精々です、貰えない日も有りました。

口に出来る物を頂けるのであれば、贅沢は言いません。

私は、御主人様の余りでも良いのですが…。


「エット…。ワタシが、タノデモ、イイ、デスカ?アマリ、デ、ジュウブンです。」


「エンリョシナクテヨイヨ。オレハ、スクナクトモ、イショクジュウデ、クロウヲカケルキハ、ナイカラ。」


「ドレイハ、イチニチにニカイのショクジガ、キホンです。キキマシタ。」


「オナカ、スクダロウ?」


「…ハイ。モラエナイトキ、アリマスタ。」


「ジャア、タベトケ。ドレニスル?」


頼んでも良いらしい!

でも、一体どれを選べば良いのでしょうか?

メニュー表を見ても、私はこの国の文字を読む事が出来ません。

迂闊に注文すると、御主人様よりも高い食事を選んでしまいそうです。

ここは、無難に、同じ物を注文しましょう。


「エット…。ゴシュジンサマト、イッショです。」


御主人様が、宿の女将さんに注文すると、すぐに食事が運ばれてきた。

良い香りが漂って来ます。

運ばれてきたお皿にはマルマル鳥の香草焼きに、何と!まだ焼き立てのパンが付いています!!

美味しそうです!!

思わずゴクリッと生唾を飲み込む。

横目で見ると、御主人様が器用にマルマル鳥を切り分けていた。

た、食べても良いのでしょうか?

私の視線に気が付いたのか、御主人様が声を掛けてくれました。


「ペロモ、タベテイインダヨ。」


「ハ、ハイ!」


御主人様の許可を戴き、私はマルマル鳥へと齧り付いた!


「(お、美味しい!!)」


滴る油!口の中に広がる香り!マルマル鳥の旨味が香草によって引き立てられている!!

このパンも、黒パンでは無く、白パンだ!?

ふんわりと柔らかく、じんわりと口の中で甘みが広がる…。

久しぶりのまともな食事、白パンとマルマル鳥を一心不乱に食べ尽くしてしまった。

気付けば私のお皿の上には、何も無くなっていた…。

美味しい食べ物が無くなると、少し寂しくなります…。


「ほら、これも食べると良い。」


そう言って御主人様は、切り分けていたマルマル鳥を私のお皿に移してくれました。


「!?ゴシュジンサマ!?アリガトウゴザマス!」


食べ物を分ける。

犬人の間では、信愛を表します。

人族である御主人様がその意味を知っているかは解りませんが、何だか嬉しくなります。

やっぱりこの人は…、御主人様は優しい人です。


UPしました。

実はペロも此方の言葉がキチンと聞き取れてはいません。

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