隷属の首輪とモッフモフ
~第四十九章~隷属の首輪とモッフモフ
女の子に背中を流して貰う…。
何て贅沢なんだ!じゃなくて!
「い、いや!?良いよ!一人で出来るから!」
「イイエ、ワタシ、ソレクライシカ、ヤクニ、タテマセン!セメテ、ユウシサマノセナカ、アラウ、マス。」
断りを入れてもペロは頑なに譲らない。
仕方が無く俺が折れる事に成った。
「ま、前は自分でやるから背中を頼むよ。」
流石に前を拭いてもらう訳にもいくまい。
ペロには背中を任せる事にした。
一通り、体を拭き終わり、思う。
「お湯を存分に使えるんだから、髪も洗ってしまおうか?」
この世界、存分に使えるお湯が確保出来ないので基本的には濡れた布で頭を拭く程度しか出来ない、それ故に頭を洗えるだけのお湯が確保出来るのは有難い。
まずはペロの髪を洗ってあげようか?
ペロの髪の毛は濡れた形跡が無いので拭いただけの筈だ。
「ペロ、ちょっと其処に横になって、髪を洗ってあげるから。」
「ハ、ハイ。」
ペロを横に寝かせ、桶の中に頭が入る様にして頭を洗ってあげる。
髪を洗っている間、ペロは少し落ち着かない感じでソワソワしていた。
イヌミミの中に水が入らない様に気を付けなければ…。
ペロの髪を洗い終え、次は俺の番だ。
「ゴシュジンサマ、カミ、ワタシガ、アラウます。」
「そう?じゃあ、お願いしようかな?」
ペロに髪を洗って貰う。
桶に頭を浸し上を向くと、ペロに覗き込まれる事に成る。
成るほど、これは…、気恥ずかしい、目の遣り所に困る。
ペロがソワソワしていた理由はこれか。
一通りペロに髪を洗って貰い髪を拭き終わる。
「サッパリした所で今日はもう寝ようか?」
「…!?…ハイ!」
妙に覚悟を決めた顔をしてペロが大きく頷く。
しかし、此処で重要な事に気が付く。
「あ!?そうだ、ベッドは一つしかないんだった。ペロ、俺は床で寝るから、ベッドは使って良いよ。」
「ダメ、です!ユウシサマ、ユカデ、ネル。ダメ、です。ワタシガ、ユカデ、ネマス。」
ペロは頑なにベッドを使う事を拒む。
奴隷という身分で主人を差し置いてベッドで休む事に抵抗が有る様だ。
困ったな、このままでは、二人して床で寝る事に成りそうだ。
「うーん。じゃあ、二人で寝るか?」
何となく冗談で言ったのだが…。
「ハ、ハイ!ヨロシク、オネガイシマス!」
何がよろしくかは知らないが、まあ、良い。
ライティングで出していた光球を消し、ベッドに入る。
ベッドは大きめのサイズだが二人で使うには少し小さい。
手を伸ばせば触れる距離にペロが横になっている。
そう思うと、この状況が少し気恥ずかしくなって来る…。
ペロも気恥ずかしいのか俺に背を向けて横に成っている。
まあ、気にしていても眠れないので、心を落ち着けて瞳を瞑る…。
モフッ…、モフモフッ。
何かモフモフした物が手に触れる…。
モフモフとしていて、毛触りが良い。
「(なんだ、これ?)」
毛並みに沿って何度も撫でる…。
温かく、撫で心地が良いので、心が落ち着く…。
思わずモフモフをギュッと握る!
「ワゥ!?」
隣から可愛らしい声が上がる…?
と同時に、モフモフが俺の手からスルリと抜け出て行く。
ドタッとベッドから落ちる音が聞こえる。
「ペロ!?」
ライティングを使い光球を出して確認する。
すると、ペロはベッドから降り、部屋の壁際まで逃げて、軽く震えて此方を見ていた。
「ペロ…。どうした?…痛っ!?」
ペロの傍に寄り、手を伸ばすと、ペロは「ヒ!」と短い悲鳴の後に俺の手に目掛けてガブッと噛み付いた!
途端!!ペロの体がビクンと跳ね上がる!!
「ギィャン!!」
「ペロ!?」
ペロの体はまるで電気でも流された様に痙攣する!
いや!間違い無く電気が流れているのだ!
隷属の首輪の効果。
主人である俺に噛み付いたので電撃が流れたのだろう。
電撃も収まり、ペロを抱えて介抱する。
如何やら気絶してしまった様だ、奴隷商の奴、何が「軽く少しの電撃」だよ!
こんな電撃何度も受けて良いものじゃ無い!
再び、電撃が流れない様に、今の内に隷属の首輪の設定を弄っておこう。
ペロのステータス欄を開き、隷属の首輪の設定を弄る。
「げっ!?今の電撃で「中」なのか!?「強」にしたら本当に今度こそ死ぬぞ!?」
残念ながら電撃を無くす事は出来ないので「小」よりも弱い「微」に変更しておく。
設定を終えると同時にペロが目を醒ます。
「ペロ。大丈夫か?まだ痛くないか?」
「クゥン…。」
潤んだ瞳でペロは此方を見つめる。
かなり強力な電撃だったらしく、まだ、上手く喋れない様だ。
しばらくして喋れる様に成ったペロから謝罪される。
「ゴシュジンサマ、ゴメンナサイ。ワタシ、コワカッタ…。ゴシュジンサマ、ワタシ、モトメテクレタ、デモ、ワタシ、コワカッタ…。テ、カンダ…。チ、デテル。ゴメンナサイ、ゴメンナサイ。」
どうも俺がベッドの中で触っていたのはペロの尻尾だったそうだ。
犬人の感覚では、尻尾はお尻の位置付けであるらしい…。
つまり、意図せずに俺はペロのお尻を撫で回していた…と言う事だ。
そりゃあ、怖いよな…、ベッドから逃げ出したくもなる。
行き成り、知らない男に性奴隷として買われて、ベッドの中でお尻を撫で回されたら…。
はい、俺が悪いです。
触るにしても一声かけるべきだった…。
「大丈夫、少し血が出ただけだから、すぐに治るよ。ペロ。ごめんね。怖い思いをさせたね。知らなかったんだ、ペロの尻尾があんなにモフモフだったなんて…。」
ペロの頭を撫でながら言い訳する。
ペロは車椅子に座っているから、尻尾を見る機会が無かったのだ。
しかし、ペロは頭をフルフルと横に振る。
「ワタシ、ドレイ、ゴシュジンサマ、ワタシ、サワル、トウゼン。」
「まあ、そう言うな…。行き成りはペロも怖いだろ?さっきは俺も行き成り触れたからペロを怖がらせたし…。触る時はペロに許可を取る事にするから、ペロも嫌だったら断って良いからね。」
「…ハイ。」
それから、改めてベッドに入るが、お互いに流れる気まずい空気に俺達は眠れない夜を明かすのだった…。
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