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魔石と盗賊

~第四章~魔石と盗賊


お宝!?

流石遺跡と言うべきか。お宝求めてダンジョンに潜るのは、ロマンだよな。


「しかし、お宝を前にして力尽きてしまったがの…。」


少しテンションを下げ気味にゴータスさんが言う。


「お宝を前にって、もしかしてこの鍵の掛かった大扉の先が宝物庫なんですか?」


此処まで話を聞いて、目の前の意匠凝らされた錠前付の大扉を見て、ここが宝物庫だと想像に容易い。


「まず間違いあるまい。」


扉の前に近づき扉を開けようとして見るも、やはり鍵が掛かっているようだ。


「無駄じゃ。その錠前は鍵がなければ開かぬよ。儂の開錠魔法(アンロック)でも開かぬほどじゃった。」


開錠魔法(アンロック)ですか?」


魔法が存在するのか。まあ、魔物が存在する位なのだから当然か。


「聞いた事が無いのも無理は無い。開錠魔法は、盗賊の中でも一握りの者でしか習得した者はいないと言われる珍しい魔法じゃしの。習得した者も使える事を公表はしないからの。

技自体、親から子へ、師匠から弟子へ受け継ぐ一子相伝の妙技だからの。」


「それを俺に言って良いのか?ゴータスさん…。て言うか、ゴータスさん盗賊だったのか?」


「まあ、構わぬじゃろう。知られて困る事は、今の儂には無いしの。」


魔石に意識だけの状態では、確かにそうだろう。


「それにユウシ、お前さんもこんな所に一人で居るからには遺跡の宝物狙いの盗賊なのだろう?」


いや、俺は盗賊なんかじゃ無い、と言いかけたがこの状況、別に盗賊と言う事で良いだろう。ゴータスさんには悪いが勘違いしていて貰おう。

それに此処が『ラストワールド』の中だというならば、確か俺は戦士に設定していたはずだ。俺は袋からコントローラーを取出しステータスを表示してみる。


・ステータス

・NAME「オオトリ ユウシ」

・称号:なし

・LV:1

・HP:99/100

・MP:80/80

・SP:0

・職業:盗賊

・スキル

 ・なし


ほら、戦士で間違いない…、あれ?職業:盗賊になってない?なに?ナゼ?何で?

俺、何時から盗賊になったの?前にステータス確認した時は、盗賊だったっけ?

見落としていた?それとも、それとも。もしかして、最初のキャラメイクの時に職業、選び間違えたのかな…?確か、戦士・騎士・魔術師で選び迷って、魔術師で行こうとしたが、やっぱり戦士にしようとして、キーを2(・・)押して戦士の画面に戻ったと思ったら、実はキー3回押していて盗賊選んじゃっていたと言う事なんだろうか?

何という手違い!!俺のバカ!!

これでは、戦士と違って立ち回り方を大きく変えなければいけないではないか!!


「どうした?急に黙り込んで?」


ゴータスさんの声でハッと我に返る。


「えっと、ゴータスさん、このステータス欄の職業ですけど…。」


と指示しながら質問を投げかける。が、


「ステータス欄?何の事を言っておるんじゃ?指で空中を示してもなにも無いぞ。」


おや?ゴータスさんには俺のステータス画面が見えていない様だ。他人には見えないのだろうか?まあ見られても良い事は無いだろうから、黙っていよう。


「いえ、すいません。変な事を言いました。気にしないでください。」


「ユウシは、変な奴じゃのう。」


変な奴と、捉えられたがまあいい、此処はごまかしておこう。


「で?ユウシ、お前さんも盗賊なのじゃろう?」


「はっ、はい、一応…盗賊やってます。まだ駆け出しですけど…。」


ステータス上は盗賊なので盗賊と名乗って問題ないだろう…。


「やはり盗賊か!この遺跡迷宮の入り口は儂が入る時に他の者の侵入を阻止するために手練れの盗賊でないと見抜けない細工を施したからな。見破るとは見事だ!

それに、見たところ碌な装備を持ってきている様には見えないし、此処までやって来て、怪我らしい怪我をしている様にも見えぬし。中々の腕を持っておる様じゃな。」


さっきから色々と誤解されているが、訂正するのも面倒なのでこのまま誤解していて貰おう。


「と、ところでゴータスさん、この錠前の鍵は何処に在るんですか?」


せっかく宝物庫の前に居るのだ。中身を確認してみたいではないか。


「鍵か…。鍵は…、この迷宮守護者(ダンジョンガーディアン)であるドラゴンが守っておる…。」


「ド、ドラゴンですか?」


ハイ!!ドラゴン!! 来たー!思わず心の中で叫んでみた。

序盤で出会う魔物であるはずが無い。

LV:1の盗賊が手を出して良い相手ではありません。


「この宝物庫の前の広間の扉の先に居るのじゃが、儂でさえ手も足も出なかった。辛うじて鍵が背中の鱗の中にはめ込まれているのを確認できたのじゃが…。運悪く毒を食らっての、この部屋まで逃げ込んだのは良いが毒消しを切らしてしまってな。この有様じゃ…。」


悲しそうにゴータスさんは自分の遺体を見てつぶやく。や、石に目は無いのだが…、何となくそう感じさせる。そう思いながらフッと思い出し袋から金色の鍵を取り出す。


「ゴータスさん、この鍵なんですが。前の部屋で手に入れたんですが…。」


そう言いながらゴータスさんに鍵を見せる。


「!! おお!!あのドラゴンを倒したのか!!儂が思っておった以上の実力者だったと言う訳か!!」


違います。と言いたい。たぶん鍵を手に入れた時、ドラゴンは扉を背もたれにして寝ていたのだろう。だから背中の鍵が目線の位置まで来ていたのを知らずに盗っちゃったと。

流石のドラゴンも宝物庫側から侵入されるとは思っていなかったか。

迷宮守護者(ダンジョンガーディアン)、仕事しろよ!!いや、待て。仕事をしていたら俺は死んでいたのかな…?居眠りドラゴンGJ!


「ま、まあ。偶然手に入ったんですよ。」


今更真実なんて口にできない…。ちょっと後悔。


「ユ、ユウシよ!その鍵を使って、扉を開けてみては貰えないだろうか!?」


ゴータスさんが興奮気味に開錠を進めてくる。

扉の前に立ち錠前に鍵を差し込む。

鍵をクルリと回すと錠前は抵抗もなくカチンッと音を立てて開いて床へと落ちた。


「「よっしゃ!開いた!」」


緊張感もなく二人してはしゃいでしまう。扉に力を入れ引き開ける。

部屋の中には宝箱が静かに鎮座していた。落ちた錠前を拾い上げておく。

良い錠前だ、何かに使えるかもしれない、貰っておこう。

さあ、お宝とのご対面だ!!宝箱に近づき箱に手を掛ける。


「あれ?開かない!鍵が掛かってる!」


ウソだろ!厳重な扉の先にある宝箱に鍵が掛かっているなんて。

先ほどの錠前の鍵を試すも鍵穴が合わない。

ゴータスさんも何も喋らないままである。気まずい…。


「ユウシよ…。」


ゴータスさんが重々しく口を開く(口無いけど)。


「ユウシ、お前さん、開錠魔法を覚えてみる気があるか?」


おお!魔法を教えてくれるのか。是非もない。


「でも、良いんですか?確か一子相伝の技と言ってましたが?」


「構わぬよ、儂には弟子はおらぬし、子は盗賊をしてはいないからの。ここで君に出会えたのはある意味運命だったのじゃろうな…。」


「運命ですか?」


「そう、この日この時の為の運命じゃ、だからこそ、儂はこうやって魔石の中に意識を保って居られたのだろう。儂の培ってきた技術と技をお主に授けよう。無論そのままソックリと言う訳には行かない、後の修練なども必要になるだろう。だが必ずや君の糧となるだろう。」


教えてくれるというならば教えて貰っても無駄にはなるまい。

それに宝箱の中身も拝んで見たいしね。


「お願いします。俺に開錠魔法(アンロック)を教えてください。如何すれば使える様になりますか?」


俺はゴータスさんに教えを乞う事に決めた。


「ユウシ…、魔石を…、儂を砕くのじゃ!!」


UPしました。

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