回復魔法を試してみよう
~第四十八章~回復魔法を試してみよう
俺達は食事を終えると部屋へと戻って来た。
「ア、アノ…。ゴシュジンサマ。ワタシハ、コレカラ、ナニ、スレバヨイデス?」
ペロが俺に仕事内容を聞いてくる。
「俺は冒険者をしているって説明したかな?」
ペロはフルフルと首を横に振る。
「そうか、してなかったかな?俺は冒険者ギルドで依頼をこなして金銭を得る仕事をしているんだ。ペロには俺の仕事の手伝いをして貰おうと思ってる。」
「ワタシ、アルケナイ、ゴシュジンサマノ、アシデマトニ、ナル。ます。」
ペロは自分の足にコンプレックスを持っている様だ。
まあ、無理も有るまい、歩けないからこそ、奴隷として売りに出されたのだから。
「ペロ。俺は、君の足を治せるかも知れない。」
俺の言葉にペロが反応するが、すぐに顔を項垂れ涙を浮かべる。
「ワタシノ、オカサン、アシ、ナオスタメ、ガンバッタ…。デモ、マホウモダメ、ポーションモ、ダメダッタ。です。オカサン、タオレルマデ、ガンバタケド、ワタシノ、アシ、ナオラナイ…。」
確か、親は他界したと奴隷商は言っていたな…。
薬代を稼ぐために過労が祟ったか…。
「それでも、試してみよう!」
「…ハイ。」
まずは、ペロの簡易ステータスが見れるか確認を取る為、ステータス画面を開く。
以前、メリクス達と簡易のパーティーを組んだとき同様にステータス欄の隅にペロのHP/MPバーが追加されていた。
が、メリクス達とは違い、ペロのステータスはもう少し詳しく閲覧する事が出来る事に気が付く。
ペロが俺、所有の奴隷だからだろうか?
疑問は有るが、ステータスを見られるのは有難い。
ペロのステータスはこんな感じだ。
・ステータス・隷属の首輪設定
・NAME「ペロ・シーバ」
・称号:奴隷
・LV:1 状態異常:身体欠損・脚(移動阻害LV2)
・HP:150
・MP:20
・職業:騎士
・スキル
・剣術 LV:1/10
ペロのステータスを確認して行く。
隷属の首輪の設定はステータス画面から弄れるようだ、まあ、後で良いだろう。
それよりも、気に成る項目が有る、「状態異常:身体欠損・脚(移動阻害LV2)」だ。
ペロの足は、状態異常の身体欠損に当たる様だ。
「確か、魔物に足の腱をやられたんだっけ?」
「ハ、ハイ。コドモノトキ、オソワレタ。マシタ。」
状態異常として、表示されていると言う事は恐らく治療可能であると思う。
治療を初めてみよう。
「じゃあ、まず今日は回復魔法を試してみようか。足を触るよ。」
「ハ、ハイ。」
そう言って、俺はペロの足を触診する。
ペロの足はアキレス腱の部分に目立つ古傷が有る。
恐らくこれが魔物に襲われた時の古傷だろう。
俺は古傷に向って回復魔法を掛ける。
「小ヒール。」
ポゥと緑色の光が古傷を包むが効果は無い様に見える。
今度は、鎚「聖者の慈悲」を取り出して小ヒールを唱えるが、目立った効果は無い。
俺のMPが続く限り小ヒールを掛け続けてみたが、結局治癒はしなかった。
ペロは残念そうに溜息を吐くが、俺は元々回復魔法では無理だろうとは、思っていた。
まあ、言葉は悪いがダメ元と言う奴だ。
しかし、本命はこれだ。
俺はサイドバッグから小瓶を取り出す。
そう、アンブロシアだ、メリクスや、マヌサの命を救い、体の傷まで完璧に治癒したこの薬なら、きっとペロの足も治療出来るだろう。
しかし、待てよ…。
アンブロシアには体力を持って行く副作用が有ったな?
ペロは一見健康そうだが、長い奴隷生活で少し痩せ気味である。
「(今すぐに使うのはペロの体に負担が掛かるかな?もう少しペロの体調を整えてからの方が良いか?それに普通のポーションも試してみたいし…。)」
俺は、アンブロシアをサイドバッグにソッと戻す。
「ペロ。今日は此処までにしておこう。」
「ハ、ハイ。アリガト、ゴザマシタ!」
結局ペロの治療に夕刻まで費やしてしまった。
そろそろ、夕飯の時間だ。
まだ、動き回れないペロの為に小鳥亭の食堂で夕飯を食べる。
昼同様、遠慮がちなペロをテーブルに座らせ、食事を取る。
食後、女将にお願いして、大きめの桶を借り、部屋に戻る。
「センタクデスカ?ワタシ、シマス。です。」
「うん。洗濯もするけど、少し試したい事が有るんだ。」
「?」
首を傾げるペロを横に俺は魔法を唱える。
「アクア!」
途端に、掌からバスケットボールサイズの水球が現れる。
水球をソッと桶の中に入れると、無事に桶に溜める事が出来た。
「ゴシュジンサマ、マホウ、ツカエルデスカ?スゴイ。です。」
ペロが褒めてくれる、少しこそばゆい…。
三、四回、水球を桶に溜め、次いで魔法「ヒート」を発動する。
「ワッ!?ゴシュジンサマ!?テ!マッカです!?」
大丈夫。とペロを宥めて赤く熱された右手を水の中に差し込む。
ジュ!!と音を立てて右手が水に沈むと程無くして水から湯気が立ち上る。
「うん、思った通り!お湯の出来上がりだ。」
成功して良かった。
これで何時でも汗を流せるぞ。
「ペロ。このお湯を使って体の汚れを落としておくと良い。俺は部屋を出て食堂で待っているから、終わったら呼んでくれ。ああ、着替えはこれを使うと良い。」
サイドバッグから前に俺が着ていたシャツやズボンを取出しベッドの脇に置くと、俺は部屋を出た。
ペロは奴隷商で売られていた時のボロの格好(貫頭衣?)のままで、正直余り、清潔感が有るとは言えない。
「とはいえ、この世界じゃ、シャツやズボン姿は浮くからな、早めにペロの服を如何にかしてやらないと…。」
しばらく食堂でヘニムの花茶を飲んで暇を潰していると、シャツとズボンを身に着けたペロが車椅子で迎えに来る。
「ゴシュジンサマ、オマタセ、マシタ。」
次は俺が汗を流す番だ、部屋に帰ると、ペロも付いてくる。
「ゴシュジンサマ、ワタシ、セナカ、アラウ、ます。」
ええ!?まさか異世界で女の子に背中を流して貰う日が来るとは思って無かった。
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