君の名は…
~第四十七章~君の名は…
イヌミミ少女を連れて、俺は宿屋「小鳥亭」へと戻って来た。
連れが車椅子と言う事も有り、宿の女将にお願いして、二階の部屋を一階へと、移して貰う事にした。
「あら…。困ったわね。一階の部屋で、ベッドが二つ有る部屋は今、満室なんですよ。」
それは困った…。
「大きめのベッドが一つしか無い部屋で良ければ、ご案内出来ますよ、料金はお一人分で結構ですが?」
どうするかな?俺が床で寝ても良いが…。
そんな事を考えていると、イヌミミ少女が口を開く。
「ア、アノ…。ワタシ、ユカデ、ダイジョブです。」
まあ、ベッドが大きいなら、二人で使えば良いか…、いざと成れば俺が床で寝よう。
俺は女将に一階の部屋の鍵を貰い、部屋に入る。
俺は大きめのベッドに腰を下ろして車椅子のイヌミミ少女に向い声を掛ける。
「さて、改めて自己紹介をしておくね。俺は大鳥 勇士。呼び方は好きに呼んで構わないから。」
「デハ、ゴシュジンサマと、ヨバセテ貰う。マス。」
此方の言葉は通じている様だが、イヌミミ少女は言葉使いが少し、たどたどしい。
「えっと、君の名前を教えて貰えるかな?」
何時までもイヌミミ少女では困るしね。
「ナマエ、ワタシ、アリマセン…。」
「え!?名前が無い!?」
「ワタシ、ドレイにナッタトキニ、ウバワレルです、ナマエ。」
「奴隷に成った時に名前を奪われた、と?」
「ドレイ、自分のホントノナマエは、ナノレナイです。シュジンでツケウです。」
「えっと、奴隷は本当の名前を名乗る事が許されない、で、俺が代わりの名前を付けると?」
「で、です。」
「ちなみに君の本当の名前は何て言うの?俺が許すから教えてくれるかな?」
イヌミミ少女は少し戸惑いつつも自分の名前を口にする。
「ペ¥%@・ロ¢♯・シーバです。」
「…。え?ごめん、もう一回、言ってくれる?」
「ペ¥%@・ロ¢♯・シーバ、です。」
何言ってるか分らない…。
「エ、エッと…。犬人のコトバ。ヒトゾクニハ、キキトリナイ…かも。」
なるほど、犬人の言葉なのか。
しかし困った。あわよくば、そのまま本名を付けてあげようかと思っていたのだが…。
そういえば、イヌミミ少女の名前の最後にシーバと、付いていたな。
「たしか、奴隷商が君の事をシーバ種と言っていたが?シーバ種って何?」
「犬人、シュルイがタクサン、イッパイイル。ワタシ、犬人、のシーバゾク。」
犬人の中の種族みたいなものか。種族人間で日本人みたいな感じだろう。
どうせなら、聞き取れた単語を組み合わせて名前を付けてあげようか?
「聞き取れた単語はぺ、とロか…。ペロ?ペロ・シーバ。」
俺の言葉にイヌミミ少女が反応する。
「ワタシ…。ペロ?ペロ・シーバ?」
「うん。君の名前は今日からペロ・シーバだ。よろしくね。」
そう言って頭を撫でる。(ついでにイヌミミをフニフニと触る。)
「ハイ、ヨロシクオナガイシマス。ゴシュジンサマ。」
お互いの自己紹介も済み、時計を確認すると、とっくにお昼を過ぎていた。
「ペロ…さん?」
「ペロ、ヨンデ下さい。」
「じゃあ、ペロ。そろそろお昼を食べに行こうか。」
「ハイ…?」
ペロは俺の言葉に疑問符を浮かべながら車椅子を操作して付いてくる。
今日のお昼は小鳥亭で済まそう。
俺がテーブルに着くと、後ろにペロが控える…。
「ペロ?如何した?何か有ったか?」
ペロに問うと、ペロが答える。
「ワタシハ、ドレイダカラ、ゴシュジンサマト、イショのテーブルニハ、ツケマセン。」
奴隷だから主人と一緒の食卓には着けないと…。
まあ、別に俺は気にしないのだが…。
「良いから、ペロ。こっちにおいで。」
そう言って反対の椅子を退け、車椅子でテーブルに着ける様にしてあげる。
ペロは、遠慮しながら食卓に着く。
俺はメニューから日替わりを選ぶ事にした。
「ペロはどれにする?」
「エット…。ワタシが、タノデモ、イイ、デスカ?アマリ、デ、ジュウブンです。」
「遠慮しなくて良いよ。俺は少なくとも居食住で、苦労を掛ける気は無いから。」
「ドレイハ、イチニチにニカイのショクジガ、キホンです。キキマシタ。」
「奴隷は一日、二食が基本と聞いた、と。でも、お腹空くだろう?」
「…ハイ。モラエナイトキ、アリマスタ。」
「じゃあ、食べとけ。どれにする?」
「エット…。ゴシュジンサマト、イッショです。」
ふむ、日替わり二つか…。
女将に注文を伝え、食事が来るのを二人で待つ。
昼過ぎと言う事で客は少なく、日替わりはすぐにやって来た。
今日の日替わりは、鶏肉の香草焼きに、焼き立ての白パンが付いている。
この世界は、白パンは意外に高く、普段は黒パンが基本だ。
白パンは保存が利き難いらしい。
だが、小鳥亭の女将はパンを焼くのが趣味らしく、宿での食事には良く、白パンが提供される。
実は、小鳥亭が人気の理由はこの白パンの為である。
日替わりを見て、ペロが目を輝かせている。
「さあ、食べようか。」
そう言って、俺はナイフとフォークで鶏肉を切り分けて行く。
ゴクリッと生唾を飲み込む音が聞こえる。
見ると、まだペロは食事に手を付けていない様だ。
「ペロも食べていいんだよ。」
「ハ、ハイ!」
俺の許しを待っていたらしい。
許しを貰い、フォークを突き刺し、ペロは鶏肉に齧り付く。
ナイフとフォークの使い方を今度教えてあげなければ…。
ペロのお皿から、あっという間に鶏肉と、パンが消える。
若干もの悲しい顔をするペロ…。
「ほら、これも食べると良い。」
そう言って切り分けた鶏肉をペロの皿に移してあげる。
「!?ゴシュジンサマ!?アリガトウゴザマス!」
驚いた顔をペロがするが、笑顔でお礼を言われる。
笑顔を向けられドキッとする。
元々、整った顔立ちのペロは、笑顔で微笑むと、とても可愛らしい娘だった。
UPしました。
二人目は、イヌミミヒロイン。ペロ・シーバの登場です。
彼女の言葉がたまに間違っているのは仕様です。
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