君に決めた
~第四十六章~君に決めた
潤んだ瞳で見つめられる。
そんな瞳で見るなよ。
奴隷を買える程、俺は金を持っていないんだ!
ファンタジーの世界で金と言う現実を突きつけられるのは、ある意味皮肉だよね。
などと思いつつイヌミミ少女の檻の値札を見る…。
「金貨4枚…。」
他に比べて安くは有るが、手元には金貨2枚と銀貨が10枚…、合わせても金貨3枚程度にしか成らない。
簡単に頭の中で計算していると、今まで黙っていたイヌミミ少女が震えた声で口を開く。
「ア、アノ…。ワ、ワタシをカ、カッテホシイ…です、頂けませんか?セ、セイッパイ!ご奉仕をシマス…。」
少女は片言で精一杯のアピールをするが、少々持ち金が足りないのは如何しようも無い。
「王国語は少しだけしか出来ませんので、お安くしておきますよ。」
ピエラが値引きを提案してくる、ならば徹底的に値引きでもしてみるか?
「…そうですね、この少女は足が悪いんですよね?金貨1枚なら引き取りましょう。」
「いえいえ。足が悪くても性奴隷としてならば優秀でしょう?金貨3枚。」
「しがない冒険者ですから、性奴隷として置いとくだけでは、不満ですね。金貨1枚と銀貨5枚。」
「しがない冒険者だなんて、ご謙遜。アイアンゴーレムを討伐なされたとかお聞きいたしました。金貨2枚と銀貨5枚。」
「ディアスさんの知り合いと言う事で安くしてくれる筈でしたね。金貨2枚。」
「…。分りました。金貨2枚でお譲りします。」
良し!勝った。じゃない、買っちゃった。
「それでは、奴隷の引き渡しの為に手続きが有りますので、此方へどうぞ。」
ピエラに案内され店の入り口付近に在る、部屋へと通される。
しばらく、部屋で待っていると、扉がノックされる。
「お待たせしました。」
ピエラと、車椅子を押して、店の人が入ってくる。
車椅子にはもちろん俺が購入したイヌミミ少女が座っている。
「では、お会計を先にお願いします。」
俺は金貨2枚をピエラに渡す。
金貨を確認して、頷く。
「はい、確かに御代、頂戴いたしました。それでは、主人登録を行います。」
ピエラは首輪を1つ取り出す。
「それは?首輪ですか?」
「はい、隷属の首輪と言う品で御座います。これを奴隷へと装着する事で、主人の命令を無視したり、危害を加える事が出来無くなります。簡単に説明すると、絶対服従させる為の道具です。」
「物騒な首輪だな?奴隷に死ねと言えば死ぬのか?」
俺の言葉にイヌミミ少女はビクッと身を竦ませる。
「いえいえ、主人の命令を無視した場合や拒絶した場合に軽く少しの電撃が走る程度です。もちろん、主人の方が任意で電撃の強さ、命令無視の許容の調整は出来る様に成っております。」
とりあえず、いきなり命令無視で命の危険は無い様で、安心した。
「では、此方の首輪にユウシ様の血を一滴垂らしてください。それで、主人の登録が完了します。」
短剣「闇烏」を抜き、人差し指の先を軽く突くと薄らと血が滲んで来たので、首輪に血を付ける。
首輪に付けた血は、スゥーと革に吸い込まれて消えてしまった。
「以上で登録は終了です。さあ、首輪を彼女の首に付けてあげて下さい。」
ピエラに促され、店の人が車椅子に乗ったイヌミミ少女を此方に連れてくる。
潤んだ瞳で見上げられている。
そんな、イヌミミ少女に声を掛ける。
「俺は、大鳥 勇士。今日から君の主人に成るから、よろしくね。」
優しく、微笑みながら、イヌミミ少女に挨拶する。
「ヨ、ヨロシク、オレガイシマス、です。」
イヌミミ少女はクイッと顎を上げ、首輪を付け易い様に頭を上げている。
首輪をイヌミミ少女に巻き付ける、余り、苦しく無い様に少し間を開けるのを忘れない。
「以上で主人登録が完了で御座います。当店からのサービスで車椅子はそのままお持ち下さいませ。」
俺は、車椅子を押し、部屋を出ると、ディアスさんとすれ違う。
「おや?ユウシ殿。奴隷をお買いに成ったのですね?」
「はい、まあ…。」
「ほう、犬人ですね。ですが…。」
ディアスは車椅子に座っているイヌミミ少女に疑問符を浮かべている。
「ええ、足が不自由だそうです。」
「そうですか…。」
納得した顔を浮かべ、それ以上の詮索は居れてこない。
俺が性奴隷として買ったと思っている様だ。
実は、少し考えが有るんだよな…。
「ディアスさんも、奴隷を買ったんですか?」
興味本位で尋ねる。
「ええ、最初の男の奴隷と、あと数人を購入しました。」
金持ちだな、ディアスさん、さすが若旦那。
伝え聞くと女性の奴隷よりも男の奴隷は遥かに安いのだそうだ。
ディアスさんは今から、購入手続きに入るらしく、時間が掛かると言うので此処で分れる事に成った。
俺はディアスさんにお礼を言うと、イヌミミ少女を連れて、奴隷商を後にした。
UPしました。
評価&感想お待ちしてます。




