出会い
~第四十五章~出会い
「金貨10!!いや、12だ!!」
「金貨15!!」
「…他に有りませんか!?」
カンカンッ!!
響く木槌の音…。
「金貨15枚のお客様、落札です!!」
俺達は奴隷商へとやって来た。
店の前の広場では既にオークション形式での奴隷売買が行われていた。
「オークションで行うんですね…。」
「はい。しかし、店の前で行われる奴隷オークションは所謂客寄せの意味合いも有りまして、質の低い奴隷が殆どなのですよ。私が行くのは店の中の方ですよ。」
ディアスに付いて店の中へと入って行く。
店は綺麗な内装をしており、落ち着きのある調度品が並べられている。
「いらっしゃいませ。奴隷商へようこそ、お越し下さいました。」
恰幅の良い男が客を歓迎する。
男は何処かコミカルでピエロを連想させる格好をしている。
ピエロは、店に入って来たディアスに気が付くとニカッと笑みを浮かべる。
「これは、これは、トレー商会のディアス様では在りませんか!?ようこそ、いらっしゃいました。本日は奴隷をお求めですか?良い奴隷を揃えておりますよ。」
「ええ、又、拝見させて貰います。」
ディアスとピエロは知り合いなのだろうか?
ピエロの口ぶりからディアスはちょくちょく奴隷商へと顔を出している様だ。
恐らく人足を増やす時はこの奴隷商を贔屓にしているのだろう。
ピエロが此方に気が付き挨拶をする。
「おや?此方の方は、始めましての方ですね?当店の店主、ピエラ・グリフで御座います。以後、お見知りおきを…。」
「えっと、大鳥 勇士です。」
「ユウシ様ですね。ディアス様のお連れの方でしたら、お安くしますよ。」
自己紹介を終えたピエラは再びニカッと笑う。
しかし、見た目だけでなく名前もピエロっぽい人だ…。
「では、ディアス様、ユウシ様。早速、奴隷をご覧に成りますか?」
「ええ、お願いします。」
ピエラは俺達を先導して歩き出す。
俺はディアスさんの後に付いて行く。
扉を開け別の部屋へと入ると先程までの落ち着いた店内の雰囲気からはガラリと趣が変わる。
急に空気がピリピリとする感じがする。
部屋の中には檻が並んでおり、中には屈強な男達が入って此方を見ている。
ピエラが一つの檻の前に立ち説明する。
「此方の男など如何でしょうか?年は26歳、とある国の騎士をしていたらしく、屈強な体をしておりますので、体を使った仕事には最適です。」
ディアスはうーんと唸りながら考えている、買うか悩んでいる様だ。
俺は辺りを見回す…、この部屋には男しか居ない様だ。
女性は別の部屋だろうか?
そんな俺にピエラが気が付き、提案する。
「女性奴隷の方もご覧になられますか?」
「え!?あ、い、いや。結構です。」
「ユウシ殿、私は少しここで奴隷と話をしていきますので、行って来たら良いですよ。ピエラ、ユウシ殿を案内してあげて下さい。」
思わず断ったがディアスが進めて来るのでさらにピエラが乗っかる。
「ええ、ぜひ見に行きましょう。ご案内いたします。此方です~。」
有無を言わさずにピエラは俺を案内する。
男奴隷の部屋から、さらに奥の部屋へと入ると、同じ様に檻が並んでいる。
が、さっきと違うのは此処に居るのは全員女性だと言う事だ。
女性奴隷の視線が入って来た俺に集まる。
ピエラに付いて奴隷達を見て回ると、一人の女性が目に入る。
「ネ…、ネ…、ネ。」
「ね?」
ピエラが首を傾げる。
が、そんな事は、どうでも良い!思わず俺は大声で叫ぶ!
「ネコミミだぁーーー!!」
みんな…。人類の至宝。ネコミミは異世界に有ったよ…。
思わず叫んでしまい、部屋は静寂に包まれる。
やっちまった…。恥かしい…。
穴が在ったら、飛び込みたい。
「流石です。ユウシ様。」
何が流石だ?
ピエラが驚嘆する。
「御推察の通り、この者は猫人の女で御座います。当店の目玉商品の一つで御座います。」
目玉商品の一つを当てた事で、ピエラは上機嫌だ。
商品の価値が分る客だと思ったのだろう。
しかし、ネコミミちゃんか…、悪くない、悪くないぞ。
良く見ると、顔も整っており美人だ。
だが、檻に付いている値札を見て噴き出す。
「ぶっ!白金貨3枚!」
高い!高すぎる!!俺の全財産合わせても金貨2枚チョイなのに白金貨3枚って…。
と言うか、ざっと値段を見て回ると、どの女性奴隷も安くても最低金貨30枚は下らない。
「いかがですか?気に入った娘は居りましたか?お安くしておきますよ。」
「ハハハッ…。ちょっと、どの奴隷も高いですかね…。」
「当店は分割も受け付けておりますよ。」
流石に金貨30枚の分割はキツイかな?
丁重にお断りをしようとして、気が付く。
「あれ?奥にまだ部屋が有るんですか?」
てっきり男部屋と女部屋の二部屋だけかと思ったがまだ部屋が有った様だ。
しかし、ピエラは少し難しい顔をしている。
「はい。まだご覧いただける奴隷は居りますが、余りお薦めは致しては居りません。ご覧に成りますか?」
さっきまで笑っていたピエロ顔から少し笑顔が消えている。
一応見せて貰おう。
「はい。一応、見せて下さい。」
そう言って俺はピエラに案内してもらう。
入った瞬間に死の匂いを嗅ぎ取る。
他の部屋同様に、部屋の中には檻が並んで居るが、檻の中に居る奴隷達は、怪我や病気をしている者が見受けられる。
「ここに集められた奴隷達は皆、怪我や病気により、商品価値の低い者達なのです。体の弱い物が多いので、労働力としても当てにはなりません。」
ピエラは檻を見て回る俺の後に付いて説明をする。
腕を怪我をしている子供の奴隷の前に来ると、声を掛ける。
「君、その腕を見せてごらん。」
そっと差し出される腕に小ヒールを掛け、傷を癒してあげる。
「ユウシ様!?」
「気にするな、俺の気まぐれだ。それか、不味かったか?」
「いえいえ、商品の傷を癒して貰い、お礼を言いたい位です。」
そのあと、部屋の奴隷達に小ヒールを掛けて行き全員の怪我を治療しておいた。
しかし、病気の奴隷を癒す事は出来ない、申し訳ない気持ちに成るが、仕方が無い。
最後に一つの檻の前に来ると、中には少女が座っていた。
少女の頭には犬の耳が付いていた、イヌミミだ!
少し痩せこけていたが元は美人だと分かる程に整っている。
俺が少女を見ていた事で、ピエラが少女に付いて説明を始める。
「其方の犬人の少女は両足が不自由なのです。戦いに秀でたシーバ種なのですが、何でも幼い頃に魔物に足の腱をやられたとかで、面倒を見ていた親が他界したのを機に売りに出されました。ですが、見ての通り顔立ちは良いので性奴隷としてならば、奉仕出来るでしょう。ああ、もちろん処女ですから、病気の心配は有りません。」
性奴隷という言葉に、イヌミミ少女はビクッと身を引く。
「ちなみに彼女は、このままだと、どうなるんだ?」
「そうですね…。買い手が付かないままですと。最悪、安値で鉱山か、娼館へと売られます。ですが、その奴隷の場合は足が不自由なので、娼館で働かせられるでしょうね。」
ピエラの言葉に少女は瞳に涙を溜め、此方を縋る様に見つめる。
UPしました。
お待たせしました。二人目のヒロイン登場です。
ネコミミだと思った?残念、イヌミミでした。
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