奴隷市開催
~第四十四章~奴隷市開催
街へと戻ると街の往来がいつもより賑やかだ。
「今日は、何か有るのか?」
武器屋へと向かう途中にメインストリートへと差し掛かる。
何やら馬車の往来が多い、しかもどれも只の馬車では無い。
荷馬車には、どれも檻が積まれており、檻の中には人の姿が見受けられる。
「あれは…。犯罪者の護送って感じじゃあ無いな…。」
まあ、今は先に武器屋へと向かおう。
メインストリートを横断する為に、馬車の隙間を通って反対側に抜ける。
武器屋には相変わらずヒゲ親父が売り子をしている。
「ヒゲの親父さん、頼んだ強化は終わってるかい?」
店のカウンターに居たヒゲ親父に声を掛ける。
「おお!?兄ちゃん!いらっしゃい。強化は終わってるぞ。」
そう言って胸当てとロングソードを店の奥から持って来る。
ロングソードと胸当てを受け取ると盗賊の鑑定眼で確認する。
『直剣・ロングソード・LV:8/10・銀貨1枚、銅貨1枚』
『装備品・鉄の胸当て・銀貨5枚、銅貨5枚』
それぞれ強化されている様だ。
ロングソードに関してはLV1から、一気にLV8まで強化されている。
「流石にアイアンゴーレムの鉄だけ在るぜ。久しぶりにいい仕事出来たぞ。」
確かに、いい仕事をして貰った様だ。
胸当てはその場で装備させて貰い、ロングソードはサイドバッグに収納しておく。
「あ!?そうだ!ヒゲの親父さん!この剣って強化出来るかな?」
突如思いついた俺は「妖精の剣」をヒゲ親父に見てもらう。
ロングソードと違い妖精の剣はLV:EXと表示されている。
強化出来るか、出来ないかは、確認が必要だろう。
親父は妖精の剣を手に取るとヒゲを弄りながら剣をマジマジと見つめる。
「兄ちゃん…。悪いがこの剣はこれ以上の強化は出来そうに無いな。何処の誰が強化したか分らねぇが、並の強化じゃ無い…。俺の腕じゃあこれ以上の強化は無理だな。」
そう言ってヒゲ親父は剣を俺に返して来た。
ダメ元だったが、やはり無理だった様だ、素直に諦めよう。
武器屋での用事も終わり、ヒゲ親父と世間話を少しする。
「そういえば、今日はやけに人通りが多いけど何か有るのか?」
「ああ、今日は奴隷商が奴隷市を開催するんだよ。奴隷目当ての奴らが街にやって来てるんだろうよ。」
「奴隷商なんて有るのか…?」
「ああ。東門から路地裏を進むと、奴隷商の店が有るんだ。兄ちゃんも興味が有るんなら行ってみると良い…。」
ヒゲ親父と会話もそこそこに俺は武器屋を後にする。
しかし、奴隷ねぇ?この世界も中々に物騒な世界の様だ。
奴隷市に行ってみるか?
しかし、そんな所に1人で行くだけの勇気は持ち得ていない…。
そんな事を考えながら歩いていると、見知った顔に出会う。
「おや?ユウシ殿では?」
声を掛けられ振り向くと、其処に居たのはトレー商会の若旦那ことディアス・トレーその人だった。
「ディアスさん!?お久しぶりです。」
「ええ、お久しぶりです。冒険者ギルドでの活躍は、お聞きしていますよ。」
「いえ、そんなに言うほど活躍なんてしてませんよ。」
「いえいえ、ご謙遜を、アイアンゴーレムの討伐、お聞きしております。トレー商会でも先日アイアンゴーレムの鉄を取り扱わせて貰ったばかりですから。」
ギルドへと売却した素材は転売されて、トレー商会で取り扱っている様だ。
「手広く商売してますね。」
「ええ、貧乏暇なしですよ。」
ハハハッとディアスは笑っている。
「で、ユウシ殿は今日はこの様な所で如何しました?ユウシ殿も奴隷市へと行かれるのですかな?」
「も。と言うと?ディアスさんは奴隷市に行かれるんですか?」
もっとクリーンな人かと思っていたが…。
「ええ、商売で荷卸しの為の人足を探していまして…。良い奴隷は居ないかと。」
なるほど、商売の為の人員探しか。
「この辺りでは、奴隷は普通に売り買いされているんですか?」
「ええ。我がトレー商会では奴隷の取り扱いはしていませんが、奴隷制度自体は珍しいものでは在りませんね。」
なるほど、国自体が奴隷の所有を良しとしていると言う事か…。
そういえばディアスさんを襲った山賊も奴隷として売り払った覚えが有る。
犯罪者などは、国が牢屋に放り込むより、働かせた方が面倒が無いのかも知れない。
「ユウシ殿?宜しければ奴隷商の店へご一緒しませんか?」
「え?俺とですか?えっと…。良いんですか?」
「ええ、もちろん。失礼ですが、ユウシ殿は奴隷市に付いて余りご存じ無い様に見受けられましたので。宜しければ私の買い物に同行してみませんか?」
一人で行く程の度胸が無かった俺には良い機会かもしれない。
「はい。では、同行させて貰います。」
俺はディアスと共に奴隷市が開催される、奴隷商へと向かう事に成った。
UPしました。
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挿絵入れたいな…。




