教会へいこう!
~第四十章~教会へいこう!
「ただいま!」
冒険者ギルドのドアを開け挨拶しながら中へと入る。
「あら?お帰りなさい。そして、お早う御座います。オオトリさん。」
レベッカさんが入って来た俺達を見つけ返事を返してくれる。
俺達は受付カウンターに向い依頼の完了報告を行う。
「これが討伐したストーンゴーレムの核3個です。」
サイドバッグから討伐証明の核を取出し、確認を取ってもらう。
「はい。結構です。確認を取りました。討伐お疲れ様でした。」
確認の終わった核を返して貰い、報酬の入った革袋を一緒に渡される。
これで終わりかと思ったら、メリクスが前に出て来てレベッカさんに尋ねる。
「すいません。ギルドマスターは今、居ますか?討伐の事で報告が有るんですが…。」
レベッカさんはギルドマスターに確認を取りに奥に行くとすぐに戻って来た。
「ギルドマスターが部屋に通す様に仰せつかりました。どうぞ、此方へ。」
俺達はギルドマスターが待つ部屋へと赴く。
部屋の中に入るとギルマスのヨーゼフが書類仕事に追われていた。
「悪いな。ちょっと手が離せなくてな。で、報告ってのは何だ?」
メリクスが一歩踏み出て口を開く。
「実はストーンゴーレムの討伐にモーラ山へ行った所、アイアンゴーレムが出現しました。」
ヨーゼフは、アイアンゴーレムと言う言葉に反応して書類から視線を外し、此方へと向き直る。
「アイアンゴーレムが出たのか!?おかしいな、あの辺にはアイアンゴーレムは出現しない筈なんだが…。それでお前ら、アイアンゴーレムを如何した?」
「アイアンゴーレムは、何とか四人掛かりで討伐しました。ユウシ君、核を…。」
サイドバッグからアイアンゴーレムの核を取出し、ヨーゼフへと渡す。
「確かに!アイアンゴーレムの核だ!お前ら確かランクはEだったよな?良く五体満足で討伐して帰って来れたな!?アイアンゴーレムは確かCランクの魔物だった筈だぞ?」
「ホントにギリギリの戦いでした。」
「本当だぜ、メリクスなんてユウシが居なけりゃ死んでたしな。」
「…運が良かった。」
何か歯車が噛み違えば今此処には居なかっただろう…。
「討伐出来たのは、皆の協力が有ったからですよ。」
そんな俺達の言葉を聞き、ヨーゼフはうーんと、声を出して唸る…。
そして、一人納得して、此方を見据える。
「この件はギルドが少し調査をしておく事にしよう。それでだ、お前らの功績を考えて、ギルドランクをEからDに上げてやる。」
ヨーゼフの突然の昇格を聞かせられ皆のテンションは最高潮に高まる…。
だが、それを嗜めるようにヨーゼフが言葉を挟む。
「いきなりランクが上がったと言っても、お前らの経験で上位の依頼を受けるのは自殺行為だからな!シッカリと自身の強化をしてから依頼を受ける様にしろよ!」
俺達はギルドカードの書き換えの為に受付カウンターに戻り、手続きをお願いする。
手続きには少し時間が掛かる様で、その間に討伐で得た素材を売り払う事にした。
買取価格は、今回の報酬を含めて、金貨4枚、銀貨9枚、銅貨4枚となった。
報酬を四頭分で分け、一人当たり、金貨1枚、銀貨2枚、銅貨3枚、青銅貨5枚となった。
「結構な稼ぎに成ったな。」
「そうだね、ストーンゴーレムだけでは此処まで稼げなかったね。」
「…懐が温かい。」
日本円に換算すると、123,500円程の稼ぎに成った訳だ。
「結構稼げたな…。」
報酬の山分けを終えた所でギルドカードの書き換えも終わり、新しいカードを受け取る。
「さて、じゃあ、ここで解散だな。」
ボンが解散を提示する。
「もう解散するのか?」
「ああ。報酬も入った事だし、装備品の買い出しとか、修理も有るからな。」
「そうだね。ここで一時解散かな?僕や、ボン、ガ・ショウは基本的に良く同じパーティを組んでるから、ユウシも又僕らに声掛けてよ。また一緒に討伐任務に行こうね。」
「…達者で。」
三人とはここでパーティを解散して俺はギルドを後にする。
「まあ、ギルドに来れば皆居るから別にこれが最後の別れって事じゃないからな。」
また三人とはパーティを組む機会も有るだろう。
さて、今日はこれから如何しようか?
そうそう、確か教会でライティングの魔法を教えてくれるんだっけ、其方に行ってみよう。
一度、文字を習う為に教会へ行った事が有るので迷わずに辿り着いた。
教会の重厚な扉を開き中へと入る。
教会の礼拝堂には、この前の神父さんとシスターの人達、そして市民の人達が共に朝のお祈りを捧げていた。
いわゆるミサと言う奴だ、俺は邪魔に成らない様に入り口近くの椅子へ腰を落ち着かせると、ミサが終わるのを待つ事にした。
「(そう言えばこの教会は何を祀っているんだろうか?)」
などと考えていると、お祈りの時間が終わりを告げ、礼拝堂に居た市民の人達が教会から出てゆく。
神父の手が空いた事を確認して、俺は神父に声を掛ける。
「すいません。今、良いですか?」
「はい、構いませんよ。おや?貴方は、この間、本を差し上げた方ですね?今日は如何しました?」
神父は俺の事を覚えていた様だ。
貰ったというか、ほぼ買った様なものだが、まあ良いや。
「あの、此方でライティングと言う、魔法を教えて貰えると聞いて来たんですが?」
「はい、お教えしていますよ。習得なさいますか?」
「はい。お願いします。」
「習得する前にですね、又、お心づけをお願いしたいのですが?」
だろうと思っていたよ。
俺はサイドバッグから銀貨2枚を取り出し、神父へと手渡す。
銀貨を確認した神父は奥の部屋へと戻ると、一冊の本を持って戻って来た。
「それでは、始めましょう。右手を出して、魔法書を載せて下さい。」
言われるがままに右手を差出し、本を…、魔法書と言ったか?を載せる
「それでは、そのまま魔法書に魔力を通してみてください。」
手順は以前、サリオン村で習得した小ヒールのスクロールと同じ様だ。
掌に魔力を集中させる様にイメージする。すると…。
表紙の文字が光輝くと、魔法書がフワリと宙に浮く。
宙に浮いた魔法書は表紙からパラパラとページが捲れ、背表紙を表にして俺の手に落ちて来た。
「以上でライティングの習得が完了した筈です。」
確認の為にも早速その場で唱えてみる。
「ライティング!」
ポウッと掌から光の玉が現れる。
そのまま、宙に投げずに掌を握ると光の玉は掻き消えた。
「なるほど、こうやってキャンセルするのか…。」
などと考えていると、見ていた神父が不思議そうな顔で此方を見ていた。
「あの…、すいませんが…、今、無詠唱で発動しましたか?まだ、呪文はお教えしていませんよね?」
しまった!少し迂闊だったか!考え無しに発動してしまった。
怪しまれない為にも、誤魔化しておこう。
「い、いえ。小声で詠唱しましたから、聞え無かっただけだと思いますよ。呪文の方も知人から教えて貰ったんですよ。」
そう説明すると、「ああ、なるほど。」と神父は納得してくれた。
俺は、ライティングの魔法書を神父に返却する。
そこである疑問が湧く。
「あれ?今回はスクロールの様に燃え尽きたりしないぞ?」
つい、疑問が口から洩れてしまう。
神父は俺から魔法書を回収して大事そうに抱えて俺の疑問に答えてくれた。
「ほう、貴方はスクロールをご存じなのですね?しかし、魔法書は初めてのご様子。簡単にご説明致しましょう。スクロールとは、習得人数が一人限定の使い捨てなのです、遺跡などで見つかる事が多い様ですね。それに引き替え魔法書は習得人数に制限が無く使い回しが可能です。ですが、発見されている魔法書は数が少なく、国や一部の教会でのみ、保管されている物だけなのです。」
なるほど、スクロールは使い捨て、魔法書は再使用可能と言う事か。
「以上がスクロールと魔法書の違いです。他にご質問等は御座いますか?」
そうだ、ボンの使っていたファイヤーボールの様な攻撃魔法は、教えて貰えるのだろうか?
「あの、攻撃魔法って教えて貰ったりとかは出来ないですか?」
しかし神父は首を横に振る。
「申し訳有りませんが、教会では争いを助長する様な攻撃用の魔法を許可なく教える事は出来ない決まりと成っております。申し訳ありません。」
「そうですか…、仕方ないですね。」
出来ないのならば仕方が無い。
俺は神父にお礼を言うと教会を後にする。
しかし、この時、教会の隅の影の中で俺の事をジッと見つめる視線に俺は気が付く事は無かった。
UPしました。
ああ…。もう40話か。短い様で長かった…。
あと少しで、ヒロインその2が登場予定です。




