遺跡探検と骨
~第三章~遺跡探検と骨
小部屋を出て前の大部屋へと出てきた。
広さ的には普通の体育館並といった所だろうか?
広い割には何も置かれては居ないようだ。
部屋の真ん中付近まで来て両サイドに扉がある事に気が付いた。
大きな扉と普通の扉だ。とりあえず大きな扉の方へ行ってみよう。
扉に手を掛け引っ張ってみるとすんなりと音もなく扉が少しだけ開いた。
扉の隙間から中の様子を覗き込んで見ると。
「なんだ?これ。」
何か大きな物が扉のすぐ向こう側で塞いでいる。
そっと扉の隙間から手を触れてみる。
「お!?少し暖かい。岩の様だ、ゴツゴツとしていて固い。おや?」
固い岩肌の表面に金色の鍵がはめ込まれている。爪を引っ掛ければ取れそうだ。
爪でカリカリとやっているとポロッと鍵が岩肌から取れた。
とりあえず貰っておこう。
しかし、この岩肌、同じ形の岩が規則正しく並んでいる。
「凹凸がまるで鱗の様だ。…あっ。」
違った。まさしく鱗だった。
大きすぎて解らなかったが何か大きな生き物が寝ている様だった。
幸い寝息が聞こえるので起こしてはいない様子だ。
生物だとは全く気が付かなかった、背筋に冷や汗が流れる。
息を殺し、そっと手を離して扉をゆっくりと閉める。
あの大きさの動物に襲われれば間違いなく死ねる。
君子危うきに近寄らず、(近づく所か触れ合ってしまったけど)普通の扉の方へ行こう。音を立てないようにゆっくりと移動し普通の扉の前へやってきた。
こちらの扉も錆びつき等は無く抵抗なく開く、少し開き、中の様子を確認する。
こちらの部屋は最初の部屋ほどの広さだった。
中には大きな錠前が付いた意匠の凝らされた大扉がある。
とりあえず入っても大丈夫だろう。
扉を開き中へと入る。
「うお!?ビックリした!」
部屋の中には先客が居た、どうやら扉のすぐ脇に座って居たらしく気が付かなかった。
しかし先客からは返事が返って来る事は無い。白骨化している死体だ。
「返事がない。ただの屍の様だ…。」
気持ちは悪いが骨ならば害は無いだろう。胸をなでおろす。
気を取り直して鍵前付の大扉を調べてみよう。
そう思って骨に背を向け扉へ歩み出した瞬間。
「おい。お前。」
後ろから声を掛けられた。ビックリして後ろを振り返る。が、誰もいない。
「だ、誰だ!?何処にいる!?」
「此処じゃ、此処におる。」
声はすれど姿が見えない。
「だから何処だよ!?」
「こっちじゃ、こっち、死体の方を見よ。」
白骨死体から声がする。
「屍じゃが返事位は出来るぞ。」
「骨が喋ってる?・・・・・・・・・ふぅ。」
意識が遠のく。ここに来てから驚き過ぎている気がする…。
「うっ・・・。体が痛い。石床で横になっていたからか?あー、悪い夢見た、骨が喋るなんて悪い夢だ。」
「起きたか?うなされておったぞ。」
夢じゃなかった。骨が当たり前に話しかけてきやがった。心配までされてしまった。
「こんな所で、意識を失うなど、お前さん魔物に食ってくれと言っておる様なモンじゃぞ。」
説教までされてしまった。と言うか、骨の状態のアンタに言われたくないのだが…。
「骸骨に急に話掛けられたら普通、誰だって驚くだろう?」
骨に普通に言葉を返している。驚きの連続で感覚が少しマヒしているのだろうか?
というか、いま骨の奴、魔物とか言ってなかったか?
「なあ?今、魔物って言った?魔物って何?」
聞きなれない言葉を骨に質問をしてみる。
「何?とは可笑しなことを言う、魔物は魔物じゃろう。お前さんも遺跡迷宮に、まして遺跡の最奥に居るのじゃから魔物と戦って来て此処におるじゃろう?それでなくても、森に入れば嫌と言うほど狼などの魔物達とやり合うじゃろうが。変な事を聞く奴じゃな?」
呆れられて居る様である。仕方が無い、知らないのだから。
話方から割と常識的な存在の様だ。まあ、話を聞く感じ野生の動物や此方に危害を加えようとする様な物を魔物と呼ぶのだろう。ますますゲームっぽい。
「そういえば白骨さん、あんた・・・、」
「ゴータスだ。」
「えっ?」
「ゴータス・ソラトだ、好きに呼べば良い。」
「えっ?あっと、俺、大鳥 勇士です。」
互いに名乗り合い先ほど口に仕掛けた疑問を問いかける。
「えっと?ゴータスさん?だっけ…。アンタもいわゆるスケルトンって言う魔物になるのかな?」
普通、語りかけて来る白骨死体など魔物以外いないと思うが…。
「バカモン!!儂が魔物なら問答無用で襲い掛かっとるわ!それに儂は死体では在るがスケルトンでは無い。体も動かせんからな…。」
そういえば先ほどからゴータスさん(骨)は一ミリも動いては居ない。あれ?口すら動いていないぞ?そもそも声帯もナシに何故、喋れるのか?言われて気が付いた。
「ゴータスさん、あんた一体何なんだ?」
「うむ。ユウシよ、儂の肋骨辺りを調べて見てくれるか?」
言われるがまま骨だけとなったゴータスさんの遺体を調べて見る。
すると、肋骨に拳大の黒い石が付着しているのを確認できた。
「黒い石があるじゃろ?それを取ってくれんか?」
骨とはいえ、死体には余り触りたくは無いが、しょうがない。
ゴータスに言われるがままに黒い石を肋骨から取り外す。
石を外す時に一緒に肋骨が一本折れてしまった。やばい。怒られるかな?
「こ、これでいいのか?ゴータスさん?」
「ああ、すまんの。」
黒い石からゴータスさんの声が喋り掛けてくる。どうやらこちらが本体の様だ。
「あんた骨じゃなくて石だったのか…。」
「うむ。これは魔石という石じゃ。」
「魔石?」
「うむ、年を経た魔物や、強大な魔物等がこのような魔石を稀に体内に宿すのじゃ。さらに稀にでは在るが人間も魔石を宿す事がある、と聞いた事もあったが眉唾物と思っておった、よもや儂自身が宿すとは思わなかったがな。」
ガハハハッとゴータスさん(石)が笑う。
「あんたこの状況、笑い事じゃ無いだろう。」
体は朽ちて骨、もとい石になってしまった現状に本人はどこか楽観的である。
「まあ、すでに死んでおるからな。本来は体が活動を停止した時にこの意識も消えゆく運命であったが、何の奇跡か、意識だけ魔石の中に存在しておる。」
意識だけ在って動くことも出来ないのは流石に精神を病みそうになる位キツイのではないだろうか?
「ゴータスさん、どれ位此処にこうして居るんですか?」
直接本人に聞いてみた方が早いか。
「かれこれ五年ほどになるかの…。」
五年間ずっとこの状態のままで…。
「辛くは無かったですか?五年間も此処でジッとして居たんですよね?」
「なあに、ほとんどの時間は石の中で眠りについていたよ。石からしてみれば時間など一年も一時間も大して変わりは無いと言う事だな。だが不思議と眠りに就いていてもどれ位の月日が流れたかは知る事が出来るな。」
ゴータスさん本人にしてみれば、つい先刻死んでしまった様な事なのだろう。
そもそも何故ゴータスさんはこんな所(遺跡迷宮)で死んでいたのだろうか?
「ゴータスさん。所で何故貴方はこんな遺跡にやって来て命を落としたのですか?」
「決まっているだろう。お宝の為さ!!」
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