ストーンゴーレム討伐へ・まさかのアイアンゴーレム戦へ
~第三十八章~ストーンゴーレム討伐へ・まさかのアイアンゴーレム戦へ
カキィィィィン!!
金属を弾く甲高い音が響く!!
「駄目だ!!関節の継ぎ目を狙って剣を差し込んで見ようとするけど密度が高すぎて剣が弾かれる!!」
メリクスは剣を足の関節に捻じ込み体勢を崩そうと考えている様だ。
核は顔の部分に填まっている。
立ち上がると一番高い位置に来るのだ、4メートルも高さが有るゴーレムの核に直接攻撃を加えようと思ったら、体勢を崩させ転倒させなければならない。
しかし、鉄の体が剣の侵入を拒む!
前衛は打つ手が無い様だ。
中衛のボンが魔法の詠唱に入る。
「火よ。すべてを灰に戻す力を此処に。ファイヤーボール!」
アイアンゴーレムの顔面へと目掛けて投げ付ける!
しかし、鉄の腕に阻まれ顔の核に届かない!
ストーンゴーレムを攻撃した時は炎で全身を包み込んだがアイアンゴーレムには火の回りが悪いのか、炎が広がらず掻き消されてしまった…。
「くそ!魔力がたりねぇ!!」
ボンはそろそろ魔力が付き掛けている様だ。
「ボン!あと何発撃てる!?考えがある!!」
「後、撃てて3発ぐらいが限度だ!如何すれば良い!?ユウシ!?」
俺はボンに作戦を伝える。
「良し!!任せろ!!ファイヤーボール!ファイヤーボール!!」
両手に二発のファイヤーボールを出現させて、思い切り投げ付ける!!
二発のファイヤーボールは重たい自重を支える軸足と成っている左足へと向かって飛んで行く!
ドッ、ドオッッン!!
ファイヤーボールはアイアンゴーレムの左足…、のすぐ隣の地面を抉っただけだった!
「外した!?」
メリクスが叫ぶ!!
「いいや!作戦通り!!ガ・ショウ!!思いっきり体当たりだ!!」
俺はガ・ショウに指示を飛ばす!!
「…!おう!!」
大盾をガッチリ構え、思いっきり側面からブチ当たる!!
少しだけアイアンゴーレムの体勢が崩れる…。
しかしそれで十分だ!
アイアンゴーレムの体勢が崩れた事で、地面に重量が掛かり、ファイヤーボールで穿った穴が崩れ落ちる。
そのままアイアンゴーレムは左足が穴に滑り落ちる結果と成り、さらに大きく体勢を崩す事に成った!!
大きくバランスを失ったアイアンゴーレムはそのまま仰向けに倒れ込む!
その好機を逃すまいと、メリクスが仰向け状態のアイアンゴーレムに走る!
「ユウシと、ボン!ガ・ショウが作ってくれた好機!無駄にはしない!!」
メリクスは頭部の核に持っていた剣を突き刺す!
「「「・・・・・・。」」」
場に静寂が訪れる…。
静寂を破ったのはメリクスだった。
静かに剣を引き抜くと大きな赤い核を取出し高々と掲げる。
「うおーーー!!やったぜーーー!!倒した!!」
ボンが勝利の喜びを体一杯で表現している。
「………フッ。」
ガ・ショウも静かに喜んでいる様だ。
大きな赤い核を持ってメリクスも此方に手を振っている。
しかし、メリクス以外、喜びも一瞬で戦慄に急変する!
「「「メリクス!!避けろ!!」」」
核を抜き取られて動けない筈のアイアンゴーレムが腕を振り上げていたのだ!
俺達の言葉に反応出来なかったメリクスは思い切り、振り抜かれた鉄腕に吹き飛ばされる!!
「グフッ!?」
吹き飛ばされ壁に叩き付けられる!
壁に叩き付けられたメリクスは動かない…。
「テメェ!!何しやがる!!ファイヤーボール!!」
ボンは怒りに任せてファイヤーボールをアイアンゴーレムの胸に叩き付ける!
鉄製の胸は高熱により少し溶け落ち、赤い核の光が漏れる…。
「コイツ、核が二つ有るのか!?道理でまだ動く筈だぜ!!」
核が二つ!?やっと倒せたと思ったのに!
しかし、体内に核だと?核の光が漏れるだけで刃が通る程の隙間は無い!
どうやって体内の核を破壊すればいいんだ!?
剣は鉄の体に跳ね返される。
魔法は今、最後であろう一発を撃ち終えた…。
俺達にはもう有効な攻撃を与える手段が…無い!!
あの鉄の体の防御を何とか無効化出来ればいいのに!
防御を…、無効化…、する方法…。
「…出来る!出来るかも知れない!ボン!ガ・ショウ!悪い少しの間、注意を惹きつけ置いて!」
二人にアイアンゴーレムの気を惹いていて貰っている間に俺は、サイドバッグを漁る。
「確か此処に入れた筈…、あった!」
俺は、サイドバッグから一振りの槍を取り出す!
その名は『聖騎士の斧槍』遺跡迷宮で手に入れた武器の一つだ。
聖騎士の斧槍の特殊効果は『防御貫通』!!
あの鉄の体が防御の概念なら何とかなるかも知れない!
一か八かだ!!
「二人とも!アイアンゴーレムの両手の封じてくれ!」
俺は、アイアンゴーレムに向って走る!
俺を迎撃しようと右手を振り上げる!
「…させない!」
振り下ろされる右手をガ・ショウが大盾を構えて受け止める!!
アイアンゴーレムは右手での迎撃は無理と悟ったのか今度は左手を核の防御の為に胸の上に持って来ようとする!
「甘いんだよ!!残りの魔力全部注ぎ込んでやるぜ!弾き飛べ!ファイヤーボール!!」
ボンが残り少しの魔力を全て注いだファイヤーボールを撃ち込み、胸に置かれた左手を弾き飛ばす!!
「貰った!!」
両腕が封じられ、ガラ空きと成った胸の核へ目掛けて、聖騎士の斧槍が迫る!
ストッ!
軽い音が響く…。
手応えがとても軽い、金属の体を攻撃したとは思えない程、すんなりと刃が突き刺さる。
軽い手応えだったが、聖騎士の斧槍は的確に体内の核へと突き刺さっていた。
途端にアイアンゴーレムから、力が抜けその場に崩れ落ちた!
バラバラと体が崩れるアイアンゴーレムを見詰めていると、メッセージ画面が現れる。
『LVUP!! 10→14』『スキル:槍術を取得』
どうやら今度こそ本当に倒す事が出来た様だ…。
LVが一気に4も上昇したぞ!?
アイアンゴーレムがそれだけ強敵だったと言う事か…。
同時にスキル:槍術も取得出来た。
しかし、ステータスの確認は後に回そう、今は先にアイアンゴーレムに吹き飛ばされたメリクスの元へと駆け寄る!
ボン、ガ・ショウもメリクスの元へと駆け寄る。
ボンが倒れたままのメリクスを抱き起こす。
「おい!メリクス!シッカリしろ!」
「…っう!?ガハッ!…ハァ、ハァ…。ガハッ!」
抱き起こされたメリクスは意識を取り戻すと同時に吐血する!!
胸からは出血が窺える!
息も絶え絶えで苦しそうだ!
視界の隅にあるメリクスのHPバーを見ると、残りが一割ほどしか残っていない!!
しかも今現在、HPは減少を続けている!
非常に不味い状態だ!
メリクスを抱きかかえたボン、ガ・ショウが叫ぶ!
「おい!メリクス!!こんな所で死ぬんじゃねぇぞ!」
「…メリクス!意識をしっかり持って!!」
メリクスを抱えたボンの腕が赤く染まって行く…。
どうやらメリクスは壁に叩き付けられた時に胸を怪我した様だ、態勢を変えたせいか、出血が激しく成っている!
「ボン!メリクスを寝かせろ!その態勢じゃ、出血多量で死んでしまう!」
俺の言葉にボンはそっとメリクスを横にする。
「治療を始めるぞ!」
横にされたメリクスへ、小ヒールを掛ける…。
HPバーが少し回復するが、すぐに減少する!
「駄目だ!回復量が少な過ぎる!!」
サイドバッグから回復魔法強化の効果を持つ『鎚・聖者の慈悲』を取出し、再び小ヒールをメリクスに掛ける!
小ヒールを10回程掛け続けるとメリクスのHPバーは三割程に回復する。
しかし、HPの減少は止まらない…、回復する傍から減って行くのでこのままでは俺のMPが尽きてしまう!!
「お、おい!ユウシ!メリクスの胸から血が止まらねぇぞ!?」
メリクスの状態にボンが若干、パニックに成っている…。
俺が小ヒールを掛ける傍でガ・ショはメリクスの怪我の状態を調べている…。
「…不味い。背中側の肋骨が折れて心臓を貫通してる…。」
「なっ!?それじゃあ、回復させる傍から傷口広げる様なモンじゃねぇかよ!?」
ボンの意見は全く持って正しい。
心臓を貫通する肋骨を抜き去らねば治癒は出来ない…。
しかし、今、肋骨を抜き去れば一気に血が溢れ出し、残り少ないHPは一気に0に成るだろう…。
小ヒールでは回復力が足りない…。
肋骨を心臓から抜いた瞬間に傷を塞がなければいけない!
もっと高威力の治癒が必要だ!
ここはアンブロシアの出番だろう!
俺はサイドバッグから青い液体の入った瓶を取り出す。
「ボン!ガ・ショウ…、これは賭けだ。」
「賭け?」
「ああ。これはアンブロシアと言うポーションだ。飲めば、恐らくメリクスの怪我を治癒出来るだろう…。でも、まず、心臓に突き刺さった肋骨を抜かなきゃいけない。でも、肋骨を抜いてから飲んだんじゃ効き目が出るまで、メリクスが持たない。だから肋骨を抜いたら、心臓に直接振りかける!」
「…。分かった!俺が心臓に刺さった肋骨を引き抜く!ユウシはポーションを振りかけてくれ!ガ・ショウはメリクスを抑えておいてくれ。」
ボンはナイフを取出し、既に意識の無いメリクスの胸の傷を少し広げ、顔を見せた骨の破片を掴む…。
「用意は良いな?」
俺とガ・ショウは頷く!
ボンは力を込めて突き刺さった肋骨の破片を引き抜く!
意識を失っていたメリクスは、その痛みで意識を取り戻し暴れる!
ガ・ショウが暴れるメリクスを組み敷き抑える。
俺はメリクスの胸の傷にアンブロシアを振りかける…。
すると、傷口が煙を上げながら急速に治癒されて行く!
痛みに暴れていたメリクスは痛みが薄れて来たのか抵抗が少なくなって来た。
HPバーの減少も止まり、回復を始めている。
メリクス自身も先程よりも顔色が良くなり、呼吸も落ち着いて来ている。
「せ、成功だ!!」
「しゃあ!!やったぜ!!」
「…良かった。本当に良かった。」
その後、もう一本、アンブロシアを飲ませると、体は完全に回復した様だった。
UPしました。
感想お待ちしてます。
過去にUPしたお話の誤字を修正しました。




