パーティー
~第三十二章~パーティー
朝、目を醒まし、昨日の残り湯で顔を洗う。
服を整え食堂へ向かうと既に宿泊客達も食堂で朝食を取っていた。
俺も、女将に銅貨一枚を渡し、朝食と昼用に日持ちする物を一緒にお願いした。
朝食を手早く済ますと、女将が作ってくれた、まだ温かいサンドイッチ?をサイドバッグへと仕舞い込み、街へと出かける。
「さて、今日はどうしようか?」
とりあえず、冒険者ギルドへと行ってみよう。
冒険者ギルドは朝だと言うのに相変わらずの騒がしさだ。
俺はクエストボードの前で依頼書を見ていると、レベッカさんがやって来た。
「オオトリさん。おはよう御座います。お早いですね。」
「おはよう。レベッカさん。何か良い仕事が無いかと思ってね。」
レベッカさんと話をしていると、ギルドマスターのヨーゼフ爺さんがやって来た。
「おう。小僧じゃねえか!早くから来てやがんな。どうだ調子は?」
「ええ、昨日、採取の依頼を達成してきましたよ。」
「ああ、レベッカから、聞いてるぜ。それに、道具屋の奴、納品された薬草の品質が良かったってんで、又依頼を持ってきやがったぜ。」
「オオトリさん、又、採取に行くんですか?」
「いえ、流石に二日続けて同じ依頼には行きませんよ。今日は討伐の依頼を受けてみようと思います。」
「ふむ、自分の力量に合わせて依頼は選べよ。それが長生きするコツだぞ。」
ヨーゼフ爺さんなりに心配してくれて居るのだろうか?
「はい、気を付けます。」
俺は、忠告として素直に聞いておく。
ヨーゼフ爺さんはそれだけ言うと奥へと戻って行った。
「ギルドマスターなりの心配ですよ。」
「え!?」
レベッカさんが呟く。
「マスターなりの優しさなんですよ。新しくギルドに入った子には必ず、ああやって声を掛けるんです。フフッ、不器用ですよね。」
「レベッカ!!喋ってないで働け!!」
ヨーゼフ爺さんが壁向こうから叫ぶ。
「あら!いけない。じゃあ、私も仕事に戻らなきゃ。じゃあね。」
そう言ってレベッカさんも受付カウンターへと向かう。
俺もクエストボードへと目を移し依頼を確認して行く。
ウサギの駆除をお願い・ハグレナイトビーの討伐・見つからない猫を探して…。
まだ、猫、見つからないのか…。
そんな事を考えながら依頼書を眺めていたら、不意に後ろから、声を掛けられた。
「ねえ、其処の君!」
最初、俺が呼ばれている事に気が付かなかった。
「え!?俺?」
自分を指さしながら聞き返す。
「そうそう。君!君!」
知らない青年が立っていた。
革の鎧に剣を携えている姿から冒険者と思われる。
「ねえ、君…。今ランクはどれ位?」
何だろうコイツ?
「えっと、Eランクですけど…。」
「そっか!良かった。」
何が良いんだ?
「えっと…。何か御用でも?」
カツアゲだったら余所でやれ!!
「いや…。さっきからクエストボードの前で悩んでいた様だからさ、声を掛けたんだ。」
カツアゲじゃ無かった…。何がしたいんだコイツは?
「依頼を決めかねているなら、どうだろう。俺達とパーティー組んで討伐に行かないか?」
ああ、パーティーの勧誘か…。…!!
「ええ!!俺と一緒に!?」
「そんなに驚かなくても…。で、どうかな?」
うーん…。どうしようか?知らない人にホイホイ付いて行くのもどうかと思うが…。
しかし、この人から、色々情報も得られるかも知れない。
動向に気を付けておけば良いかな?
「分った。一緒に行くよ。よろしく。」
「そうか!良かった。受注条件が4人以上の依頼でね。一人足りなくて困ってたんだ。助かるよ。ああ!他の二人の事も紹介するよ。付いて来て。」
青年に連れられ、ギルド内の一角にある、テーブルへと連れて行かれる。
テーブルには二人の青年が座っていた。
「おーい。お待たせ、最後の一人探して来たよ。」
そう言って青年は彼らの中に混ざる。
「じゃあ、自己紹介していくね。まずは俺ね。僕はメリクス。戦闘は主に片手剣を使用しての前衛をしてます。よろしく。」
「次は俺様。エルバンス・B・ホルエンガーだ。短槍と炎魔法で中遠距離を攻撃できる。」
「長い名前だからな、みんなあだ名で「ボン」って呼んでる。」
「なんで「ボン」なんだ?」
俺は疑問を問うとメリクスが答えてくれた。
「ああ、コイツ、元貴族のボンボンなんだよ。だから「ボン」。」
「へー、ボンは貴族なんだ。」
俺が驚いていると、ボンが怪訝な顔で答える。
「まあ。元、と貧乏が付く貴族だけどな。」
ハハハッと自分の身の上を笑い飛ばす。
中々強いハートの持ち主だ…。
そして、さっきから黙っていた三人目が呟く。
「ガ・ショウ…。」
「え?っと…。」
「ああ、えっと、紹介するね。彼は、ガ・ショウ。寡黙な奴でね。あんまり喋らない。戦闘では大盾を装備して俺と一緒に前衛に出るよ。」
三人の自己紹介が済み、今度は俺が自己紹介をする。
「大鳥 勇士です。戦闘では剣と弓を使用する機会が多いかな?あと、回復魔法が少し使えます。」
おお!と三人?から、声が上がる。
「俺の見立ては間違って無かっただろ?」
メリクスがボンに向って自慢げに胸を張る。
「いやー、このパーティーって見事に攻撃職に偏ってるだろ?回復とか、サポート出来るメンバーが欲しかったんだよ。」
確かに俺が入る事で、近距離から遠距離まで、さらに回復まで出来るとなればバランスは良い。
「ところで、4人以上が受注の条件の依頼ってどんな物なんだ?」
メリクス達に聞いてみる。
メリクスは懐から依頼書を取り出すとダンッとテーブルの上に置く。
「Eランク討伐依頼!俺達の獲物はコイツ!!ストーンゴーレムだ!!」
UPしました。
感想とか、お待ちしてます。




