初仕事
~第三十一章~初仕事
冒険者ギルドの扉をくぐるとクエストボードの前に立つ。
先程までは依頼の内容を確かめる事が出来なかったが今は違う。
1つ1つ依頼の内容を確かめて行く。
ウサギ肉×10の納品・キラービー×10の討伐・居なくなった猫を探して…。
お約束を含めて色々な種類が有るなぁ。
ディアスからの紹介状でEランクからとは言っても土地勘も無いのに行き成り遠くまで行くのは無謀であろう。
まずは近場の採取系の依頼から応じてみようか?
「お!これなんか良いんじゃない?」
クエストボードから依頼書を引き剥がし、レベッカさんの居る受付カウンターへと持って行く。
「あら?オオトリさん。依頼の受注ですか?」
「はい。これをお願いします。」
依頼書をレベッカさんに手渡す。
「では、拝見しますね。Fランク任務:採取・薬草を集めてほしい。ですね。」
「はい、まだこの辺の土地勘も有りませんから、薬草の採取がてら散策してみようかと思って。」
「そうですか。それなら、街の西門から出た所に在る、狩猟林に行ってみると良いですよ。」
「狩猟林ですか?」
「はい。狩猟林なら薬草も簡単に見つかるかと思います。」
「分りました。行ってみます。」
「ちなみに此方の依頼は直接、依頼主である道具屋さんに納品して下さいね。」
レベッカさんはポンと依頼書に受注中のハンコを押して返してくれた。
俺はギルドを出て時計を見ると、丁度お昼時だ。
出かける前に腹ごしらえをしてから行こう。
フラフラと街のメインストリートを歩くと昼時と相まって、其処彼処から良い匂いがする。
露店が立ち並ぶ一角で俺は黒パンに肉を挟んだサンドイッチ?の様な物を購入した。
異世界風ハンバーガーと言った所か?
味の方は、少し物足りないが、まあまあと言った所だ。
ペットボトルに入った水で喉を潤して、俺は採取へと出かける。
街の西側から外に出て少し歩くと林が見えて来た。
「あれが狩猟林だな。」
林の中は、思っていた以上に動きやすい。
もっと緑が茂っているかと思っていたが草は踝程度の高さしかない。
狩猟林と言うだけあって、人の手が多く林に入っているのだろう。
しかし、ここに来て俺は薬草がどんな草なのか知らない事に気が付く。
「現代っ子に薬草の知識が有ると思うなよ。」
消毒用エタノール万歳!!薬草なんて精々アロエ位しか解らん!!
「しかし!俺には秘策が有る!盗賊の鑑定眼!発動!!」
鑑定眼を使い辺りを見回す。
すると、茂みの中に『素材・薬草・青銅貨1枚』が表示された。
「良し!思った通り!盗賊の鑑定眼で探せる!」
茂みの中から薬草を摘み取る。
『スキル:薬草採取を取得』
こんな事でもスキルを取得できるのか。
おや?茂みの中にもう一つ何か有る。『素材・シビレ茸・青銅貨1枚』
ついでに取ってみる。
『スキル:薬毒草採取に変化』
「あれ?スキルが変化した?」
薬草を取ったら、薬草採取。シビレ茸を取って薬毒草採取。
シビレ茸は毒草の扱いの様だな。
恐らく先にシビレ茸を採取していたら、毒草採取のスキルが付いたのだろう。
まあ、どっちが先でもスキルの変化はしたのだろうけど。
サクッとSPを振って、採取を続ける。
納品用とは別に自分用に幾つか採取しておきたいしね。
小一時間ほどで薬草は20ヶ程見つける事が出来た。
半分の10ヶを納品すれば良いだろう。
「良しこんなものかな。一度街に戻ろうか。」
来た道を戻りレミアムの街へと戻る。
薬草の納品先は道具屋だったな。
「確か、メインストリートの通りに在ったのを見たが…。」
メインストリートを歩き、道具屋を探す。
「あ!あった。ここだな。すいません。」
「はいはい。いらっしゃい。何かご入り用?」
道具屋に入るとおばさんが出迎えてくれた。
「えっと、ギルドの依頼の件で来たんだが?」
「ああ、頼んでた薬草の件だね。集まったかい?」
俺はサイドバッグから薬草を10ヶ取り出すと店のカウンターの上に置く。
おばさんは薬草を手に取ると、一つ一つ確かめる。
「うん!薬草で間違いないね!それにどれも中々の高品質だ。いい仕事するね、アンタ。この品質の物なら、いい薬になるよ。依頼料は少し色を付けとくよ!」
そういうとおばさんは銅貨13枚を渡してくれた。
「有難う御座います。」
「又、依頼出しとくから手が空いたらお願いね!」
二言三言おばさんと会話を交わしてから、道具屋を後にする。
そういえばレベッカさんが確か、依頼が終わったら一応報告に来る様に言っていたな。
一応ギルドへと報告に行く為に歩き出す。
そういえば今日の宿をまだ決めていなかったな。
流石に昨日泊まった高級そうな宿は高いだろうし…。
これからの事を考えると、お金の遣り繰りに気を付けないといけないな。
などと考えていると冒険者ギルドの前まで来てしまった。
中に入り受付カウンターに向う。
受付にはレベッカさんが居る。
「あら?オオトリさん。依頼は如何でしたか?」
「うん。無事、納品を終えて来たよ。」
レベッカさんは俺から受注中のハンコが押された依頼書を受け取ると、その上から、達成済みのハンコをポンと押して返してくれた。
「では、これで依頼達成です。お疲れ様でした。」
初仕事完了!!ランクの低い依頼とは言え達成できて良かった。
「あ!そうだ。レベッカさん。」
「はい。何でしょうか?」
「この辺りに安い宿屋は無いかな?まだ宿が決まってなくて…。」
「そうですね…。でしたら、ギルドからメインストリートを挟んだ反対側に小鳥亭と言う宿屋がお薦めですよ。」
「小鳥亭ですね。行ってみます。」
冒険者ギルドを出てメインストリートの反対側に行くと、小鳥亭と銘打った看板を見つけた。
扉を開けて中へと入ると、ガヤガヤと賑やかな声が響き渡る。
宿は二階建ての構造をしており、一階は大きな食堂になっている様だ。
まだ、15時位なのだが、食堂には既に酒を飲んで出来上がった人達が騒いでいる。
喧騒を避けつつ、奥のカウンターへと向かう。
「すいませーん。」
カウンターから店の奥に声を掛けると、奥から宿屋の女将さんが出て来る。
「いらっしゃいませ。お泊りですか?お食事ですか?」
小鳥亭は、宿屋兼食事処の様だな。
「泊まりたいんですが。」
「はい。お部屋は空いていますよ。夕食付で一泊銅貨2枚になります。」
まあ、安い方か?
とりあえずこの宿で良いだろう。
サイドバックから銅貨2枚を女将さんに渡し、部屋の鍵を受け取る。
「お食事は、一階の食堂で注文してくれれば食べられますから。」
そう言って女将は他の客の世話をしに、行ってしまった。
部屋を確かめに行こう。
部屋はそんなに広くは無い、机とベッドが在るだけでシンプルに纏まっている。
ベッドに身を投げる。少し硬いが清潔にされているので心地いい。
そのままベッドで少し休んでから食堂に赴き、食事を取る。
食後、汗を流そうと風呂を探すが宿の中には風呂は無い。
「風呂?そんな高級な物、貴族様のお屋敷にでも行かなけりゃ無いよ!?」
庶民レベルでは入浴の習慣は無い様だ。
精々、お湯で体を拭くか、川で行水位だそうだ。
女将に銅貨1枚でお湯を貰い、体を拭く。
お湯は青銅貨3枚程で良いそうだが、生憎細かい硬貨を持っていない。
明日も頼むだろうから、前払いと言う事で了承して貰った。
身綺麗にした後、今日は早めに就寝する事にした。
ベッドに横になり、明日の予定を考える。
「さて、明日は何をしようかな?ギルドの仕事?街の探索?…。」
まだまだするべき事は多い。
考えは纏まらないまま、俺は眠りに就いた。
明日は明日の風が吹くか…。
UPしました。




