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護衛完了

~第二十七章~護衛完了


翌朝、目覚めた俺は宿を引き払いディアスの店へと足を伸ばす。

店の前まで辿り着き店を見上げる。


「昨日も思ったけど、大きい店だな。」


周りを見回してもディアスの店以上に大きな建物など数える程しか見当たらない。

店のドアを開けて中に入ると、「いらっしゃいませ!!」と大きな声が飛び交う…。

なかなかに繁盛している様だ。

俺はカウンターで受付をしている女の子の元へ歩み寄る。


「いらっしゃいませ。トレー商会へようこそ。」


「ディアスさんは居るかな?勇士が来たと伝えて貰えば分かると思う。」


「少々お待ち下さい。確認をして参ります。」


女の子は確認の為、店の奥へと入って行くとすぐに戻って来た。


「店長がお会いになられるそうです。此方へどうぞ。」


俺は受付の女の子に案内されて奥の部屋へと通される。

通された部屋にはディアスがいた。


「おお!ユウシ殿!お待ちしておりました。昨日は失礼を致しました。なにぶん急ぎの納品でして…。店の命運が掛かっていた程ですから…。」


「命運ですか…。」


「ええ。ですが、ユウシ殿のお蔭で無事、納品出来ましたので、一命を取り留めた。と言う事です。この度はご協力頂いて幾ら感謝してもしたりません。」


ディアスは深々と頭を下げて来た。


「いや、大した事はして無いよ。」


「いえいえ。それ位私達にとっては重要な要件だったのですよ。」


ディアスは俺に一通りの礼を述べると謝礼の話へと切り替えた。


「さて、ユウシ殿。まずは先に捕まえていた山賊の件からです。」


ディアスを襲っていた山賊達の事だな…。


「山賊達と置いてきた馬車はサリオン村の者がレミアムの街まで届けてくれました。山賊達はまず衛兵に引き渡す必要が有りますので街の入り口で既に引き渡しています。奴隷商への引き渡しも衛兵がしてくれるでしょう。」


「そうなんですか…。まあ、良く分らないので任せます。」


良く分らないのでやってくれるのならば有り難いか…。


「それで、ですね。奴隷に売り払う前に、調べた所、山賊の中に賞金の掛かっている者がおりました。その者は奴隷には出来ませんが、懸賞金が出ましたので、売り払った山賊と合わせて預かっております。これです、どうぞ。」


そう言ってテーブルの上に革袋を置いた。


「金貨1枚と、銀貨5枚ほどになりました。」


えっと確か金貨一枚が10万ほどだから…。

合わせて、約15万円程になったわけか…。


「人を売り払ったという割にやけに低い金額じゃないか?」


人を売った事など当然無いが、少なくとも人間4人分にしては安過ぎないだろうか?


「それは、しょうがないかと…。」


ディアスが言い淀む。


「さすがに健康な男達と言っても、山賊に身を落とした者には価値は、殆んど無いと言っても過言では有りませんから…。ユウシ殿は犯罪者を買って、身の回りに置きたいと思わないでしょう?」


「そ、それは…。そうですね。」


まあ、好き好んで、わざわざリスクを背負い込む必要はないもんな…。

そんな事を考えているとディアスはもう一つ、革袋をテーブルの上に置く。


「そして、これがユウシ殿に、お手伝い頂いた、荷運びと護衛の報酬で御座います。銀貨8枚と銅貨20枚入っております。いささか細かい硬化が混じってしまい申し訳ありません。」


「いや、別に気にはしない。」


この世界、ちょっとした買い物で金貨などで支払おう物ならば、嫌な顔をされるに違いない。

俺は有り難く革袋を受け取りサイドバッグに収納する。

さて、金が出来たのは良いが今後を如何するかを決めなければ。

無計画に金を使っても、行き倒れるのが関の山だ。

何か、仕事を探さなくては!働かざる者食うべからずだ!

そこの所をディアスに聞いてみる事にした。

何せディアスは商人だ。この街の雇用に関して、詳しいハズであろう。


「ディアスさん、俺、しばらくこの街に居ようかと思うんですが、何か良い仕事は、有りませんか?」


ディアスは、「フムッ」と唸ると、思いついた様にポンと手を叩く。


「ユウシ殿は、冒険者ギルドには所属していますか?」


「冒険者ギルドですか?いえ、所属はしていませんけど…。」


「でしたら、冒険者ギルドで仕事をこなすと良いかもしれませんよ。」


「えっと、冒険者ギルドですか?」


「はい。ユウシ殿は剣や弓の扱いがお上手の様ですから、魔物の討伐などを行えば効率良く稼げるかと思います。何でしたら、紹介状をお書きしましょう、登録もすぐ許可が降りると思いますよ。」


「ギルドの登録…。それって住所不定でも大丈夫なんですか?」


俺は、住所どころかこの世界の住人ですら無い。


「住所ですか?必要はありませんよ。冒険者の中には世界を流浪している者もおりますからね。」


ならば、問題は無いか?俺はディアスの提案に乗る事にした。

ディアスから冒険者ギルドの場所を聞き、紹介状を書いて貰い、トレー商会を後にする。


「ユウシ殿、何かご入用の時はぜひトレー商会をご利用くださいませ。」


店を出る時にディアス本人から見送りをされたが、周りの人間からやけに見つめられた。

まあ、店主自らの見送りとなればどんな相手か確認して見たくもあるだろう。

ちなみにトレー商会は、特定の商品を扱っている訳ではなく、幅広くお客のニーズに合わせた品物を取り寄せる事で繁盛しているお店で有るらしい、何か必要な物で手に入らない物が有れば遠慮なく注文してくれと、ディアスに言われた…。

まあ、必要になったら頼んでみよう。

俺は、教えて貰った冒険者ギルドへと向かって歩いて行く。


「へぇ。昨日も思ったけど、人通りは中々多い街だな。」


市場が開かれている様で道の両端に果物屋等が立ち並んでいる。

街を見学しながら歩いていると時折、首輪をしている人間を見る…。


「あれが、奴隷か…?」


手足を鎖に繋がれボロボロの衣服を着ている。

頬は痩せこけ、体の所どころに怪我をしているのを見受けられる…。

どうやらまともな扱いは受けていな様である…。

そんな奴隷を横目に街の正面出口まで戻って来た。

冒険者ギルドは街の入り口のすぐ傍に建っていた。


「へぇー、大きな建物だ…。」


トレー商会並に大きな建物だ。

トレー商会が上品な感じだったのに対し、冒険者ギルドは何処か無骨な感じが有る建物だ。

ちょっと建物に圧倒されてしまったが、ここで手を拱いても仕方が無い。

俺は意を決して、冒険者ギルドの扉をくぐるのだった。


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