女王蜂の薬針
~第二十二章~女王蜂の薬針
大きい…。人と変わらない位にデカい!これが恐らく女王蜂だろう。
盗賊の鑑定眼で確認する。『魔物・クイーンビー・銀貨3枚』
女王に間違いない様だ。
女王蜂は俺達に気が付いては居るが、何もして来ようとはしない…。
クイーンビーの様子を見ていた俺にエリナさんが説明してくれた。
「女王蜂に攻撃能力は実は無いのですよ。子供を増やすのが女王の仕事ですから…。外敵から女王を守るのは基本的にナイトビーやキラービーの仕事なのです。」
「つまり、ナイトビーを片づけた今は、ほぼ無抵抗と考えて良いんですか?」
「はい!間違いありません。巣が出来て間もない様なので、ナイトビーの数も少なかった様です。本来、蜂達はエルフの森に巣を作るハズなのですが…、なぜこんな草原に巣を作ったのでしょうね?」
エルフの森と聞いて深層の魔物、ハングリーベアの事を思い出した。ひょっとして森を追われた原因って…。そんな話をエリナさんに話すと納得していた。
「そんな事が有ったのですね。確かに、ハングリーベアはキラービー達をも食べてしまいますから…、きっと森を追われて来たのですね。でもハングリーベアを倒してしまったと言う事は、ここで女王蜂を倒してしまえば残ったキラービー達はきっと森へと帰って行く筈です!」
「お役に立てて良かったです。苦労してハングリーベアを討伐した甲斐がありますよ。」
エリナさんを横穴の入り口に待たせて中へと入る。
クイーンビーの近くに寄り、妖精の剣一振りでクイーンビーを屠る!
クイーンビーのお腹から薬針を取出しエリナさんへと手渡す。
残りをサイドバッグに収納しに行こうとして止められる。
「ユウシさん、女王蜂は羽と薬針以外は利用法が無い魔物ですよ。」
「おや?そうなんですね。教えてくれて有難う御座います。」
背中から羽だけを切り取りサイドバッグに収納する。
クイーンビーは体から独特の匂いを出しており、魔物を誘引するらしく、体の残りは燃やす事になった。いわゆる虫のフェロモンと言うやつだ。
魔法弓を構え、火矢を射ち込む!一撃では燃やす事が出来ないので数射打ち込む!と、突然魔法弓に填め込まれていた火魔石がパキンッと音を立てて砕け散ってしまった。
突然の事に驚きつつもマヌサの言っていた事を思い出す。
「確か…。魔石は大きさによって使用回数が決まっているんだったか…。」
どうやら弓矢に填め込んでいてもカウントされる様だ。
これがこの火魔石の限界だったのだろう。
次回、魔石を手に入れた時は考えて使用しなければいけないな。
クイーンビーが燃え尽きるのを確認してから、俺達はサリオン村へと急ぎ戻る!
行きはあれ程キラービー達に襲われたのに、帰りは全くと言って良い程襲われない!それ所かキラービーの姿さえ見えない…。草原はこれまでの騒がしさとは無縁の静けさを取り戻していた。
「本当に女王蜂を倒したら、綺麗にキラービー達が居無くなりましたね。」
「はい!これも、ユウシさんが予め森を元に戻してくれていたからですよ。」
本当に偶然だ。でも、エリナさん達の役に立てたのなら嬉しい。
「これも精霊様のお導きですね…。」
エリナは小声でユウシに聞こえない様に呟く。
帰りは魔物に遭遇しなかったので行きよりも早く村に戻る事が出来た。
急いで教会へと戻る!教会ではまだ子供達が苦しんでいる。
「司教様!!エリナ・ソラト!ただいま戻りました!此方のユウシ様に薬針を取って来て頂きました!」
教会へと戻るとエリナさんは薬針を司教様の元へと届ける。しかし…。
「エリナさん…。実は今しがた、教会のシスター達全員の魔力が切れてしまいました…。とても今から薬を生成しては、子供達の体力が持ちません…。」
「そ、そんな…。折角、ユウシさんに取って来て貰ったのに…。」
場が静寂に包まれる。子供達の傍らに付き添う母親達のすすり泣く声だけが聞こえる。
「…。エリナさん!回復魔法!使い方を教えてください!!俺がやります!!」
「む、無理です!!回復魔法は教会で素養の有る者が長期間修練を積まなければ使えない魔法なのです!!」
回りのシスター達も頷いている。が司教様だけはハッとした顔を浮かべている。
「無理では無いかもしれません!」
突然の司教様の言葉にシスター達の視線が集まる。
「シスター・マリエラ!例の巻物を此方へ!」
マリエラと呼ばれたシスターはハッと司教様の思惑を理解すると奥の部屋へ入って行った。すると巻物を持って戻って来て司教様に手渡した。
「ユウシ様。此方は回復魔法:小ヒールの書かれた巻物です。」
そう言って司教様は巻物を俺に手渡して来た。
「ユウシ様、右手の掌の上に巻物を置いて下さい。」
言われるがまま、掌の上に巻物を乗せる。
「では、そのまま巻物に魔力を注いで下さい。」
魔力を注ぐ?どうすれば良いのだろう?
とりあえず、掌に魔力が集まるようイメージしてみる。
すると、巻物を止めていた封蝋が溶け落ち、中に書かれた文字が輝く!
しかし次の瞬間!巻物は一気に燃え尽きた。
「さあ、ユウシ様。これで小ヒールを使うことが出来る様になった筈です。」
なんと!?今ので回復魔法を覚えたと?ステータス画面を開いて確認する。
・ステータス・アイテム・設定
・NAME「オオトリ ユウシ」
・称号:盗賊見習い・ドワーフの友・キラービーキラー
・LV:9
・HP:560/900
・MP:410/720
・SP:117
・職業:盗賊
・スキル
・開錠魔法 LV:10/10
・隠密 LV:10/10
・盗賊の鑑定眼 LV:10/10
・スタン LV:10/10
・剣術 LV:10/10
・投擲 LV:10/10
・弓術 LV:10/10
・挑発 LV:1/1
・騎乗 LV:10/10
・回復魔法 LV:1/6 『・小ヒール』
確かに回復魔法を覚えている。ついでに称号まで増えている…。
回復魔法のLVを最大の6まで上昇させておく、回復量が増えるのならば有難いが…。
子供達の方へと向かい先ず一人目に手をかざす。
祈りの聖句などは知らない。けど、出来る気がする!スゥと深く息を吸い。
「小ヒール!!」
ポゥと緑色の光が手から溢れる。子供は少し楽になった様だ。
残りの二人にも小ヒールを掛けて行く。
一回の小ヒールでMPを20ほど持って行かれた。
残り410有ったMPは350まで減っていた。
一人当たり後、5~6回の小ヒールが限度だ…。
残り小ヒール回数を考えていると最初に小ヒールを掛けた子供が苦しみ始めた!
「不味いぞ!!まだ三分弱しか経っていないのに!!」
再度、小ヒールを掛けて行く。
この調子ではタイムリミットは15分弱!
薬の生成が終わる前に俺のMPまで切れてしまう!
「畜生!間に合わない!」
「ユウシさん…。」
エリナさんが隣に立って心配そうに見つめて来る…。
まるで慈悲の眼差し…。最善を尽くしたよと、語り掛けて来るようだ…。
「……。ん!?慈悲?そ、そうだ!!」
俺はアイテムBOXの中を漁ると、目当てのアイテムを取り出す!
UPしました。




