護衛
~第十八章~護衛
「護衛ですか?」
「はい!山賊をあっという間に片づけたその手腕、お見事でした。」
まあ、どうせ襲われれば戦うのだしついでと考えれば丁度良いか。
俺はディアスの護衛も同時に引き受ける事にした。
「そういえばディアスさん、俺、もともとサリオン村を目指していたのだけれど。」
「はい、それでしたら大丈夫です。サリオン村はレミアムの街への通り道ですから。それに一晩くらいならば村に宿を取っても良いでしょう。」
ならば問題は無いだろう。
ディアスは二頭残った馬に馬具を取り付け出立の準備をしている。
「所でこの山賊達は村へ連れて行くのか?」
正直、山賊五人を連れて歩くのは骨なのだが…。
「いえ、馬車の回収をサリオンの村に頼みますから、その時一緒に連れて行くよう頼んでおきましょう。」
置いて行けるのならそれに越した事はないだろう。俺は特に反対はしない。
しかし問題は馬の方だ。
ディアスは俺が馬に乗れる物と思って準備しているが日本で暮していた俺には乗馬の経験など無い。
「これで良し。ユウシ殿、準備出来ましたので、出発いたしましょう。」
準備も整い、出発する事になった。馬に跨ってみると結構な高さが有って結構怖い…。
内心怖がっているとメッセージ画面が現れ『スキル:騎乗1/10を取得』と表示された。
助かった。
これで少なくとも落馬の心配は無くなるだろう。
すぐに騎乗のスキルを10まで上昇させ出発した。
「ユウシ殿は乗馬がお上手ですね。」
ディアスに褒められてしまった。全くの初心者なのだが…。
「いえ、それほどでもありませんよ。」
「いえいえ、ご謙遜を。初めて乗る馬をここまで従順に従えるなど、並の腕前ではありませんよ。」
「そうですか?この馬、結構大人しいですけど?」
「いえ、結構気性の激しい馬達を集めましたから、私でも乗りこなすのに結構掛かりましたよ。そのように大人しく人を乗せているのは初めて見受けます。」
これは、やはりスキル、騎乗の効果であろう。スキルを持たないまま出発していたら暴れ馬に振り落とされていたかもしれないと思うと少しゾッとする。
ディアスと会話しながら道中を進んでいった。
会話の中でこの世界の通貨に関しても教えて貰えた。
通貨は全部で五種類。白金貨、金貨、銀貨、銅貨、青銅貨。の五種類である。
貨幣の価値はそれぞれ、
白金貨:100万円
金貨:10万円
銀貨:1万円
銅貨:1000円
青銅貨:100円
と、言った所だそうだ。
さすがに商人だけ在って金の説明は分りやすかった。
そんな話をしながら半日近く馬を走らせていると前方に村が見えて来た。
「ユウシ殿。見えてきました。あれが今夜宿を取る予定のサリオン村です。」
サリオン村。あれが師匠の…。ゴータスさんの故郷…。
ここに師匠の孫のエリナさんが居るはずだ。
「へぇ。これは中々…。大きな村だ。」
村に着くと辺りを見回す。いわゆる田舎の農村といった感じの大きな村だった。
村に着くとディアスは馬から降りる、それに習い俺も馬を下りる。
「ユウシ殿は確かこの村に用事が有ったのですよね?」
「はい。人を探して渡す物が有るんです。」
「では此処で一度解散しましょうか。私は村長に挨拶と荷馬車と山賊の回収を頼んでから村の宿屋に行ってますからそこで合流しましょう。あっ、馬は私が宿まで連れて行っておきますね。」
そう言ってディアスは馬を連れて行ってしまった。
さあ、エリナさんを探しに村の中を回ってみよう。
早速近くの畑で農作業をしているオジサンに話を聞いてみる事にしよう。
「あの、すいません。ちょっとお聞きしたい事が有るのですが…。」
「おや?旅人さんかい?何でも聞いてくれ。」
「この村にエリナ…、エリナ・ソラトという人を探しているんですが、ご存じないですか?」
「エリナ…?ああ!シスターエリナの事だね。村の真ん中にある教会に居ると思うよ。」
早速の聞き込みで居場所が判明した。早速教会に向かってみよう。
村の中ほどに来た所で大きな建物が見えた。
あれが教会だろう。
教会の前に着き重厚な扉を開け中へと入る。
中では修道服を着た女性と司祭と思しき老人が居た。
「あの~、すいません。」
「はい、いかがされましたか?教会へはどういったご用で?」
修道服を着た女性が出迎えてくれた。
「此方にエリナ・ソラトという方が居ると聞いて来たんですが…。」
「はい、エリナは当教会のシスターの一人ですが。彼女に何か御用ですか?」
俺はゴータスさんに頼まれた事の顛末をシスターと司祭様に説明をした。
「そうでしたか…。ゴータスさんは逝ってしまわれましたか…。冥福を祈りましょう。」
司祭様はゴータスさんとは昔から面識が有ったそうだ。
知人の死を知って少し悲しそうだ。
「そういう事なら早く彼女に知らせてあげた方が良いですね。ですが、今日はエリナさんはもう家へと戻ってしまいました。家の場所をお教えしますから訪ねてあげてください。」
エリナさんの家の場所を聞き村はずれまでやって来た。
「確か聞いた場所はここだったよな?」
村はずれにある家の前に立つ。ドアに付けたドアノックを叩く。
「はーい。どちら様ですか?」
そう言って出て来たのは栗毛色の髪の美少女だった。
「…えーっと?どちら様でしょうか?」
いけない、突然の美少女に目を奪われてしまった。
「あ、えっと、俺は、大鳥 勇士と言います。エリナさんでしょうか?」
ゴータスさん…。お孫さんこんなに美人だなんて聞いてませんよ。
心の中で師匠に皮肉っぽいお礼を言っておこう。
「えっと、はい。エリナ・ソラトです…。どういったご用でしょうか?」
「はい、実は貴女の祖父である、ゴータスさんの言葉を伝えに来ました。」
UPしました。
ヒロインその1
エリナ・ソラトついに登場!




