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深層の魔物

~第十五章~深層の魔物


ウサギ達のリーダーを倒した事により一度、家へと戻る事にした。

家へ戻るとドランが先に戻っていた。


「おお、ユウシ!マヌサ!無事だったか!?どうだ?群れのリーダーは発見できたか?」


「はい、チャンピオンラビットを見つけて、討伐しました。」


サイドバッグからチャンピオンラビットを取り出してドランに見せる。


「ほう、こりゃあ中々の大物じゃないか!でかしたぞ!ユウシ!」


「い、いえ!?仕留めたのはマヌサさんですから…。俺はチョット手伝っただけですよ。」


「そんな事無いわよ、ユウシちゃんが的確にダメージを与えてくれたから一撃で倒せたのよ。」


「そ、そうですか?ありがとうございます。」


二人から褒められると少し照れ臭い。

だが、悪い気分ではないので素直にお礼を言っておく。


「そ、それで、ドランさん。深層の魔物用の罠は準備出来たんですか?」


話題を深層の魔物へと変えるとドランは真面目な顔に切り替えて答えてくれた。


「罠の準備は終わったよ。罠は簡単に言うと落とし穴だ。」


「落とし穴ですか?」


いまいち、ピンと来ない罠だ。バラエティー番組等で目にする事は有ったが、笑いを誘う為の仕掛けとして準備されていた物なので危険性をいまいち、実感できない。


「現物を見せる方が説明しやすいからな、罠を仕掛けた所にいってみょう。」


ドランさんの提案で罠を張った場所まで確認に行く。

罠を張った場所は、俺とマヌサが探索した場所よりも奥に行った所にあった。


「どうだ?これが仕掛けた落とし穴だ!」


落とし穴を見て絶句する。大きい。とにかく大きい。

直径4メートルは有ろうかという落とし穴だった。深さも結構あり落ちたら一人では上がりきれないだろう…。これをドラン一人で掘ったというのだろうか?


「さあ、仕上げてしまおう。ユウシ、マヌサ。手伝ってくれ。」


落とし穴はそのままでは丸分りなので上に蓋をかぶせてカモフラージュする、ただ被せるだけでは野生動物が落ちて台無しになるかもしれないので、獲物が上に来た時に綱を切って発動させるタイプに仕立てる。


「これで良し!ユウシ!マヌサ!ご苦労様だ。後は魔物をここにおびき寄せるだけだ。」


役割分担を決める。

綱を切る役目は斧を持つドラン。

遠距離から牽制が出来る俺が囮役。

マヌサは俺の補佐をする事になった。


早速森の中をマヌサと共に探索に出る。森の奥深くへと足を延ばすと、森の中層に入ろうかという所で遠目に魔物を発見出来た。

かなり大きな体をしている。

盗賊の鑑定眼で確認すると『魔物・ハングリーベア・銀貨5枚』と確認できた。


「マヌサさん、あの魔物ですよね。違いますか?」


ほぼ確信がある。魔物から感じられる殺気が尋常ではない。


「ええ、間違いないわ。深層に生息するハングリーベアだわ。ハングリーベアは目に映る獲物をすべて狩ろうとする習性があるの、一度狙われたら執拗に追い掛けて来るわ。爪は鋭利だけど、幸い動きはそれほど速い訳では無いから、しっかり距離を取って誘導しましょう。」


マヌサの説明を聞き終え、作戦を開始する。

弓を構え弦を力の限り引き絞る。

標的まで結構な距離があるが弓術LV10ならば当たるハズだ。

矢を放つと放物線を描いてハングリーベアの背中に突き刺さる。

と、同時にハングリーベアに気付かれた!巨体を揺らしながら此方に迫ってくる。

作戦どうりに誘導を開始する。時々追加の矢を放ちダメージを与えておく。


「そうら、こっち!こっち!しっかり付いてこいよ!!」


なんて、挑発していたら、『スキル:挑発を取得』スキルを取得してしまった。

確認は後で良いや、今は誘導が最優先だ。

ハングリーベアの進みがゆっくりとはいえ少しずつではあるが距離が縮まって来る。

最早、追加の矢を撃ちこむ余裕さえ無くなり俺は全力疾走でドランの元へと走る。

あと、少し…、あと少しで…、見えた!!


「ドランさん!!」


大声でドランに合図を送る。ドランは斧を高く掲げる。

落とし穴の上を通り抜ける。次いでハングリーベアが落とし穴の蓋の上に差し掛かる。


「どりゃあぁぁぁ!!」


ドランが斧を全力で振り抜くと綱は綺麗に両断された。

直後、ハングリーベアの足元から地面が消えた。

ハングリーベアは突然の事に対応できず落とし穴の中へと落ちて行く。


「今だ!!」


落ちたハングリーベアに向かって、ドラン、マヌサは大岩を投げ付け、俺は矢を撃ちこんでいく!

ハングリーベアは岩や矢を受けながらも此方を見上げながら吠えている。

と、突如穴の中の壁を殴り付け始めた。

ハングリーベアが壁を殴る度にズン!ズン!と足に衝撃が走る。


「な、なんだ!?魔物の奴、気でも狂ったか!?」


「ドラン!何でもいいから今も内よ!!」


マヌサはそういって一際大きな岩をハングリーベアの顔めがけて投げ付ける!

ドカッ!と音を立てて顔に命中した。

ハングリーベアの体から力が抜け、その場で崩れ落ちる。


「や、やった!やりましたよ!倒しましたよ!ドランさん、マヌサさん!」


「ふう…。ようやく倒せたか…。しぶとい奴だったぜ。」


矢の使い過ぎでMPが残り15まで減っていた。MPが尽きる前に倒し切れて良かった。


「ユウシちゃん、ドラン。二人ともお疲れ様。帰ったら今日は御馳走にしましょうねぇ。」


「さあ!今日は朝まで酒盛りだ!!飲むぞーー!!」


二人ともハングリーベアの討伐を終え安堵の表情を浮かべている。

家へと変える前にハングリーベアの死体を回収しておこう。

しかし死体は深い穴の中…、どうやって回収しようか?

穴の中を覗きこんでいると後ろからマヌサの声が飛んで来る。


「ユウシちゃん!!危ない!!」


声が聞こえる方へと振り向くと同時に足元に亀裂が走る!しまった!!と、思った時には遅く、足元から地面が消え失せた。

落下する体で精一杯手を伸ばす。ガシッ!と落ちる寸前にマヌサに掴まれるが落下を始めた人間一人を支えるには力と踏ん張りが足りなかった。

俺とマヌサは落とし穴の中へと落ちてしまった。


「いっ、いてえ…。」


落ちた時に軽く擦り剥いてしまった。


「あいたたた。だ、大丈夫かい?ユウシちゃん?」


マヌサが心配をしてくれる。自分も落ちたのに大丈夫なのだろうか?


「ちょっと擦り剥いただけですから。マヌサさんも大丈夫ですか?」


「ええ、私は平気よ。」


「おーい。大丈夫かぁ?」


穴の上からドランが心配そうに見下ろしてくる。

落とし穴は大きく崩れ落ち緩やかな勾配が出来、歩いて登れる様になっていた。

ハングリーベアが壁を殴り付けた為に地面が土が脆くなっていたのだろう。恐るべき力だ。


とにかく一度上へと戻ろう。マヌサに先に登ってもらい俺は後を続いて登ろうとするが。


「ユウシ!!危ない!!逃げろ!!」


ドランが突然叫ぶ!

一体何の事だろう?と振り返るとハングリーベアがゆっくりと起き上がっていた。

どうやら、死んでいたのでは無く、気絶していた様だ。

血走った目で此方を見定めると、一気に間合いを詰め、丸太とも思える腕を振り上げる。

落とし穴を登ろうと背を向けて行動に移していた所での不意打ちだったので反応が出来ない…。


「(不味い!やられる!!)」


と、思った瞬間!ドンッと衝撃と共にマヌサに抱えられ横に飛んでいた。

後でマヌサにお礼を言っておかなければ…。


「こぉぉの!!くたばり損ないが!!」


ドランが落とし穴入口から斧を振り上げて飛び込む。


「どぉぉりゃぁぁぁぁ!!」


空中からハングリーベアの背中に思いっきり斧を叩き込む!!

ハングリーベアは大きく吠えると今度こそ力尽き倒れ込んだ。

や、やった。今度こそハングリーベアを打ち取ったのだ!!


メニュー画面が現れLVも4から一気に7にLVUPしていた。


マヌサに突き飛ばされてそのままマヌサに抱きつかれたままだ。


「マ、マヌサさん、ありがとうございました。も、もう終わりましたよ。」


そういってマヌサの背中に手を当てると、ヌチャ…と何かが手に付いた…。血だ…。


「マ、マヌサさん!!大丈夫ですか!?怪我してるじゃないですか!?」


マヌサの拘束から抜け出し、背中を見ると一面、真っ赤に染まっていた…。

よく見ると三本の引っ掻き傷が背中を深く抉っている…。

マヌサは苦しそうに息を荒げている。

ドランがマヌサの元に駆け寄る。


「マヌサ!!」


「ド…、ドラン…。ごめんなさい。私もう駄目みたい…。」


「だ、大丈夫だ!こ、こんな傷!すぐに治療すれば…、助かるから…、助かるから!!」


「ドラン…。ア、アナタの顔が良く見えなくなって、来たわ…。」


「マ、マヌサ!しっかりしろ!!」


そ、そんな…。マヌサが俺を庇って…、死ぬ?

ど、どうすればいい?どうすれば助かる?医者を…、救急車を呼べば…。どっちも無理だ。

せめて薬か何か…。薬?そうだ!!あれが有った!!アンブロシア!!

アンブロシアをサイドバッグから取り出し、マヌサの元へと持って行く。


「マヌサさん!!こ、これを飲んで!」


蓋を開けマヌサの口元へと持って行くが飲み込む力が無いのか、こぼれ落ちてしまう。


「ユ、ユウシ!?これは、ポーションか!?これを飲ませればいいのか!?貸せ!」


ドランはアンブロシアの瓶を受け取ると自らの口に一口含む、そのままマヌサへ口移しで飲ませる。


「ど、どうだ?何とか飲み込ませたが…。」


マヌサの呼吸はまだ細い…。と、ゲホゲホと咳き込むと呼吸は落ち着いてきた。

呼吸が落ち着いた所で残りを飲ませてあげると、背中の傷は、服に血のシミを残しただけで綺麗に消えてしまった。しばらくするとマヌサは意識を取り戻した。


「マ、マヌサ!お、俺が分るか?」


「ええ、あなたの泣き顔なんて初めて見るわ…。」


「べ、別に泣いてなんかいないさ!」


ドランは気恥ずかしそうに目元を拭うと、こちらに向き直り礼を言って来た。


「ユウシ…。ありがとう…。お陰でマヌサを失わずに済んだよ…。」


「い、いえ。すいませんでした。元はと言えば俺がもっと気を付けていればマヌサさんが怪我をする事も無かったんです…。」


「ユウシちゃん、気にしないで頂戴。貴方が居なければ私達夫婦は、そろってハングリーベアの餌食になっていたかも知れないもの。ありがとう。お陰で助かったわ。」


お礼を言われた事とマヌサが無事だった事が合わさり、少し涙ぐんでしまった。

その日は倒したハングリーベアを肴にして、ドラン、マヌサと夜まで飲み、語り合った。

そして、その酒の席で、俺は旅立つ事を夫婦に告げた。


UPしました。

ヒロインが登場しない…。

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