祝LVUP
~第十二章~祝LVUP
頭が痛い。二日酔いだ…。
昨日は食事をした後の記憶が無い。
ドワーフと酒を飲むとこうなるのか…。気を付けよう…。
ベッドの上で寝ボケ頭でいるとドランがやってきた。
「おはよう!ユウシ!さあ!木を伐りに行くぞ!」
「木を伐りに、ですか…?」
「おう。お前さん、夕べ木こりの仕事を見てみたいって言っていたじゃないか?」
全然記憶に無い…。
酒の力って怖いな…。
しかし、約束しているならば仕方ない!
気合を入れて眠気を吹き飛ばす。
装備を整えロングソードを腰に装備して、ドランと一緒に森へと向かう。
三十分程歩いてドランの今日の仕事場へ到着した。
「よし!今日はこの木と、もう一本ほど倒すか…。」
ドランが指示した木は、大の大人三人が手を繋いでやっと一周するかという太さの大木だった。これは時間が掛かるだろうと思っていたがドランは1時間程で切り倒してしまった。
「よし。じゃあ、ユウシ!もう一本を今みたいに切り倒してみろ。」
そう言ってドランは斧を手渡してきた。俺は斧を受け取り、見様見まねで斧を振るう。
やはり本職の木こりであるドランの様にはいかず、ドランに手伝って貰っても倍の2時間程が掛かってしまった。
「ご苦労さん!初めてにしては中々のモンだったぜ。」
ドランは俺から斧を受け取ると、邪魔な枝葉を落し、丸太に変えて行く。
二本の大木を丸太に変えた所でドランが戻ってくる。
「あとは丸太をこのまましばらく乾燥させにゃならんから今日はここまでだな。」
そうして俺とドランさんは家へと帰路に就く。
帰り道、フッと視線を泳がせると白い毛皮が視界に入った。
「ドランさん、ちょっと待ってください。」
小声でドランさんに静止を促す。
「お!どうした?ユウシ?」
「今、向こうの方で白い毛皮の様な物が動いたんです。」
「只の動物じゃないか?流石にこんな森の浅い層には滅多に魔物は出ない筈だぞ。」
「分りません。でも昨日のウサギの件もありますし、ちょっと確認してきますね。」
「お、おい。危ないぞ!一人で行くのは危険過ぎる!」
「大丈夫ですよ。戦いに行く訳じゃありませんから、確認したら戻ってきます。ドランさんはここで待機していてください。」
「わ、分かった…。無理はするんじゃ無いぞ!」
ドランと別れ白い毛皮の見えた方へゆっくり忍び寄る。
実はファイティングラビットに会えたら試したい事が有ったのだ。
だがその前に、ステータス画面を開き、隠密のLVを10まで上げておく。
・ステータス・アイテム・設定
・NAME「オオトリ ユウシ」
・称号:盗賊見習い
・LV:1
・HP:100/100
・MP:80/80
・SP:69
・職業:盗賊
・スキル
・開錠魔法 LV:10/10
・隠密 LV:10/10
・盗賊の鑑定眼 LV:10/10
・スタン LV:5/10
・剣術 LV:1/10
ステータスの確認を終えたら、短剣『闇烏』を取り出して腰へ装備しておく。
ゆっくり茂みから忍び寄ると予想通り、そこには一匹のファイティングラビットが居た。
まだ、こちらに気が付いていない様だ。隠密スキルはやはり忍び寄るには最適だ。
腰の短剣『闇烏』をゆっくり引き抜き、ウサギの影へ投げ付ける!短剣が影へと突き刺さると同時にメッセージ画面が現れ『スキル:投擲を取得』と表示される。
が、今はウサギが優先だ、確認は後にしておこう。
ウサギは突然の事に驚きジタバタとその場で暴れるが動けないでいる
それを確認して、俺はロングソードを抜きながらウサギの前へ移動する。
確認したい事、それは武器の攻撃力だ。
昨日ウサギと戦った時、妖精の剣では一撃でウサギを葬れたが、このロングソードではどれ程のダメージを与えられるかを知りたいのだ。
ロングソードは盗賊の鑑定眼でLV1だったので、恐らく最も低いダメージしか与えられないのだろうと予測出来る。
しかし、無抵抗の動物を一方的に攻撃するのは例え魔物だとしても心が痛む、俺だって決して鬼では無いのだから…。
なるべく苦しまない様に素早く片付けよう。
まずロングソードで一撃を入れる…。薄く毛皮を切っただけだ。
次いで二撃目を入れる…。刃が肉へと到達しウサギが暴れる。
さらに三撃目を入れる…。ロングソード突き刺さる。ウサギは半狂乱になって暴れる。
辛くなって来た。四撃目を入れる…。………。ウサギは微かな息をするだけだ。
気合を入れる。トドメの五撃目を入れる…。ウサギの息の根を止めた…。
どうやら妖精の剣はロングソードの五倍以上の威力を持っていると言う事なのだろう。
生き物を殺生した感傷に浸っているとメッセージ画面が現れる。
『LVUP!! 1→2』どうやら今のウサギを仕留めた事でLVが上がった様だ。
ステータス画面を開いて確認してみる。
・ステータス・アイテム・設定
・NAME「オオトリ ユウシ」
・称号:盗賊見習い
・LV:2
・HP:100/200
・MP:80/160
・SP:79
・職業:盗賊
・スキル
・開錠魔法 LV:10/10
・隠密 LV:10/10
・盗賊の鑑定眼 LV:10/10
・スタン LV:5/10
・剣術 LV:1/10
・投擲 LV:1/10
HPとMPが二倍になっている。伸び率が高いのか単純に倍になって行くのか?まだ検証するには情報が足りない。
SPは10P増えていた。こちらは1LVUPにつき10Pを得られる様だ。
早速、手に入れた『投擲』にポイントを振り10にしておく。
ステータス画面を閉じ、足元に落ちていた小石を拾い、20メートル以上離れた所に在る木の枝を狙って投げ付ける。カンッと小石が枝に当たる。何度か小石を同じ枝に投げる。
投擲スキルを10にしているので狙った箇所に面白い様に当てられる。
今ならストライクアウトで九枚抜き出来そうだ。
しかし、投擲を10まで上昇させて百発百中になるのなら、剣術を上げたらどうなるのだろうか?剣の達人に成れるのだろうか?
「まあ、上げといて問題は無いか?」
『剣術』にポイントを振り10にする。
これと言って体に変化は無い。剣を抜いて振ってみると何だか振りに鋭さが増したような気がする…が、イマイチよく分らない。
「まあ、追々分るだろう…。さて、ドランさんを待たせているし、早く戻ろう。」
倒したファイティングラビットをサイドバッグに入れ、ドランの元へと戻る。
「ドランさん、戻りました。」
後ろを向いていたドランに声を掛ける。
「うわ!?ユ、ユウシ!?居たのか!?ビックリした!!」
何故か、ドランにビックリされた?驚かすつもりは無かったのだが…?
「ユウシが様子を見に行ってから急にお前さんの気配が消えてな…。魔物にやられたんじゃ無いかと心配したぞ。」
「(そういえばドランと別れてからスグに隠密を10に上げたな…。)すいません。ご心配をお掛けしました。息を殺して隠れていたから、そのせいかもしれません。」
「そうか…。それで、魔物は、どうだった?」
「昨日と同じ、ファイティングラビットが一匹うろついていました。奇襲を取る事が出来たので、打ち取ってきましたよ。」
そう俺が言うとドランは「一人で魔物と戦う様なマネは危険だ!!」と説教を受けてしまったが、どこかホッとしている様だった。必要以上に心配を掛けてしまった様だ。反省。
「しかし、二日続けて森の浅層にファイティングラビットが出現するとは幾らなんでもおかしい。森に何かあったか?」
長年、木こりをしているドランは森の異変を感じ取っていた。
その日はサッサと家に戻り、ウサギ料理に舌鼓を打ちつつ早めに就寝した。
次の日、森はウサギの巣窟と化していた。
UPしました。




