痛覚遮断
~第十一章~痛覚遮断
「ギイャャャャ………。」
森の中に悲鳴が上がる。他ならぬ俺の悲鳴だ。
痛みは痛覚遮断をOFFにした時に突然襲ってきた。
痛過ぎて立っていられない、その場に倒れ込む、余りの痛さに呼吸が出来ない。
特に脇腹に走る激痛…、恐らくウサギの飛び蹴りが原因で肋骨が折れているのではないだろうか?しばらく激痛にのた打ち回る、徐々に呼吸が出来る様になったが、まだ動き回れる様にはならない。
そういえば、薬を持っていたのを思い出す。
痛む体に鞭を打ち、アイテムBOXからアンブロシアを一本取出し、一気に飲み干す…。
体の痛みがウソの様に消えてしまった。
HPも10から100まで一気に回復していた。
「回復薬ってすごいな…。」
折れたと思っていた肋骨の痛みさえも消えている。
骨折さえも薬で治せるのはすごい…。
とにかく、動ける様になって良かった。
あのままでは第2のウサギが来たら、餌食と成っていただろう。この世界のウサギが肉食かどうかは、知らないが…。
しかし、この痛覚遮断というのは便利そうに見えて実は結構厄介だ。
痛みを感じないだけでダメージはしっかり体へ蓄積されるのだ。
これでは、寝ている時に刺されても気付かないのでは?
うっかり毒でも受けよう物なら侵されている事に気が付かないまま死んでしまうだろう。
痛覚遮断は普段はOFFにして状況に応じて切り替えよう。
「さて、帰ろう…。」
疲れた…。アンブロシアのお陰で体の傷、怪我は完全に治癒しているが、精神がとても疲れた、今日はもう休みたい…。
時計を確認すると午後の三時を少し過ぎていた。
ドランはもう戻ってきているだろうか?
森の中、来た道を戻り、家に戻るとドランとマヌサが出迎えてくれた。
「おかえりなさい。ユウシちゃん。」
「戻ったか。ユウシ!魔物と出くわさなかっただろうな?」
と、ドランが洒落を交えて迎えてくれる。
生憎こちらは洒落では済まなかったのだが…。
「ただいま戻りました。いや、大変でしたよ。」
俺は夫妻に森で魔物:ファイティングラビットに襲われた事を話した。
「なに!ファ、ファイティングラビットが出たのか!!お前よく無事逃げ切れたな!?」
「いえ。突然襲われて、とても逃げ切れませんでしたよ。何とか手持ちの剣で運よく仕留められました。」
「え!?仕留めちゃったの?ユウシちゃん?あのファイティングラビットを?」
「ほお!ユウシ!お前さん見かけによらずに腕が立つようだな!!」
「え、ええ…。あ!?そうだ!マヌサさん、この剣、ありがとうございました。」
借りていたロングソードと剣帯をマヌサへ返却する為差し出す。
「いいえ、よかったらこの剣、ユウシちゃんにあげるわ。いいわよね?ドラン?」
「ああ、構わないよ。魔物を討伐出来るだけの腕があるなら持って行きなさい。」
二人にお礼を言い。ロングソードを改めて装備させてもらった。
「それは、そうとユウシ。討伐したファイティングラビットはどうしたんだ?」
「ああ、それだったら。このバッグの中に収納してますよ。」
そういってサイドバッグからファイティングラビットの死体を取り出す。
二人はサイドバッグから取り出す様子を見て少しビックリしていたが、マジックバッグだと説明すると納得していた。
この世界、マジックバッグは一部の商人や貴族等なら割と所持している人は居るのだそうだ。
マジックバッグへの興味はすぐにファイティングラビットへと移る。
「ほう。こりゃあ中々の大きさだ。こいつどうする?食うか?」
「魔物って食べられるんですか?」
「ええ。魔物と言っても、その名が示す通り、肉としては普通の兎肉と変わらないわ。むしろ上質なお肉な事もあるわ。街なんかに持って行くと買い取って貰えたりもするわね。」
「そうなのですか…。ですがこいつは食べましょう。二人には助けられたお礼もありますし、コイツのお礼も出来ていませんから。」
腰に吊り下げたロングソードを指さしながら答える。
「あら。うれしい。じゃあ早速、解体して調理するわねぇ。すぐにおいしいご飯作るから、ちょっと待っててねぇ。」
マヌサはファイティングラビットを抱えて台所へと向かっていった。
さて、食事が出来るまでどうしようか?と、考えていると。
ドンッとドランが樽を抱えて戻ってくる。
「さあ!ユウシ!!飯が出来るまで飲むぞ!!」
樽にはもちろん酒が入っていた。
お酒を飲みながらドランと語る、料理を待つ間にドランは大ジョッキを3杯ほど軽く空けていた。
その後、料理を持って来たマヌサも一緒に食卓に着き、その日は意識が無くなるまで、酒に付き合わされた…。ちょっとドワーフを舐めていたかも…。
ちなみに兎肉は程よく油が乗って香辛料も効いていて非常に旨かった。
UPしました。




