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ハロウィン・レルムの奇妙な二人  作者:
第一章 少女は吸血鬼の花嫁となる
9/21

変態貴族

「あいつ……サルーガは、一応伯爵の位置にいるんだが、あの恰好をいつもしているせいで周りからは『女装伯爵』と呼ばれている」

「……単純ね」

「分かりやすいと言ってくれ」


 微妙に呆れた顔をしているあたり、レインもそのネーミングには疑問を抱いているらしい。


「まあとにかく、そのサルーガは五十年ほど前までは普通の青年だったんだが」

「ちょっと待って」

 そうだった、ここは異世界なんだったわ。


 そう思いながら訝しげな顔をしているレインに視線を向ける。

「どうした?急に」

「いやあのね、あなたたちの世界ではこれ、普通なのかもしれないけど、私たちの世界では隔離されてもおかしくない事象だから一応聞いとくわ。……あんたらって、普通の、つまり平均しての寿命って、何歳くらいなわけ?」


 レインやシュラストについては『吸血鬼と悪魔だから』で片が付いてしまった出来事ではあるが、どうやら終わってはいなかったようだ。普通の住民たちの寿命というのはどれくらいのものなのだろう。

 すると、しばらく何かを計算していたらしいレインはこちらに赤い瞳を向けて、さらりと告げた。


「七百……ぐらいか?」

 絶句した。

「な、七百?」

「ああ。種族によってばらつきがあるし、俺ら吸血鬼は問答無用で不老不死だが……それがどうかしたのか?」

 不思議そうにこちらを覗き込んでくるレインを殴りたくなってくる。


 その衝動を必死で押さえつけながら、瑠璃はレインに鋭く聞いた。

「じゃああんたって、今何歳くらいなのよ。それと何代目の王なわけ」

「四百十六歳の、十五代目の王だが」

 眩暈がした。

 ふらりと倒れこみそうになる瑠璃の体をレインが慌てて支え、「大丈夫か?」と瞳を覗き込んでくる。


「大丈夫なわけ、ないでしょうがっ!!」

 耳元で叫んでやると、レインは驚いたようにびくっと体を揺らした。それでも瑠璃の体を離さなかったのは称賛されるべきかもしれないが、残念ながら瑠璃にそこまでの配慮をする余裕はなかった。


「どういうこと四百歳って!私の世界で言ったらそれ完全に研究のために解剖されるくらいの年齢じゃないのよ、なんでそんな若く見えんのよ!」

「なんで怒ってんのかわからないが、俺たちは不老不死だからずっとこの姿のままだ。そうじゃない奴らも死期が近づいてこない限りは老いていかない」


 それを聞いていくらか冷静になった瑠璃は、体をレインから話して聞いた。

「死ぬどれくらい前から老いていくのよ」

「大体一か月前くらいだ」

「マジか」

 思わず俗語が出てきてしまった。

 余命一ヶ月って。

 末期のがんでもそこまでじゃないのではと思いながら、瑠璃はため息をついた。


「……分かったわ。いえ全然分かってはいないし理解してないことがまだあと十個はあるけど、とりあえずはサルーガの話をしましょう。あとでこの国のことについては本を読んで勉強するわ」

 色々な疑問を決死の思いで心の奥へと押し戻すと、瑠璃はそう言ってレインに説明を求めた。


「そ、そうか……?ならまあ再開するが……本当にいいのか?」

「いいって言ってんでしょはっ倒すわよ」

 暗い瞳で鋭く睨み付けてきた瑠璃にひるみ、レインはこくこくと頷いた。

「わ、分かった。分かったからその拳をしまってくれ」

「……」


 冷や汗を浮かべたレインをじっと見ると、瑠璃はすっと黒いオーラを後ろ手に隠した。それにほっとしたのか、レインは口早に説明を始める。

「サルーガは、五十年前までは普通の貴族の青年だったんだが、なぜかその時急にガラッと服装を変えたんだ。服装というか、性格もなんだが。それでああいう風になってしまって、厄介なことに『私は男も女もどっちもオッケーよ』とか言い始めて……」


 嫌な記憶がよみがえったのか、レインはげんなりとした顔で肩を落とした。

 なんだかさすがに気の毒ね、と瑠璃は思った。


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