第3話
それから。
七夕の三日前と迫った ある日。学校の教室で友達と休み時間に しゃべっていると、全然知らない女子に呼び出された。
「高田守生くん。ちょっと」
教室の入り口から、長いストレートヘアでヘアバンドをした、線の細そうな女子が僕を呼びかけ手で招く。僕は一緒に居た友達に少し冷やかされながら、女子の方へ行った。「ここじゃ、何だから。屋上まで来て」
僕はドキドキしながら、先行く女子の後を追った。
「私、天川祥子。B組よ。よろしく、高田くん」
僕はE組だった。別棟で教室が遠いし、お互い目立つタイプでもないから知らなくて当然だろう。
「実はね。高田くん」
僕は、天川さんの目を見た。真剣で、透き通った瞳。
「私……」
ドキドキ。……告白される? ドキドキ。
「実は……」
もったいぶらないでくれ。ドキドキ。
「ミルキーウェイ星人なの」
ドキドキド……「えぇっ?」
そこに愛は無かった。ただ、己の身の告白のみ。
「一体、ど・お・い・う事なんでしょうか? ……」
僕は、なぜだか こみ上げてきそうな怒りを おさえて聞いた。別に天川さんが悪い訳ではないんだけど。七夕の日まで「ミルキー」という言葉に どうやら敏感になりそうだ。
「私も あなたと同じ、ミルキー星人だという事よ。そしてそれは、今この地球上にいるミルキー星人たちの間ではトップニュース」
「何だってぇっ!?」
僕は つい大声を出してしまった。一体、どれだけのミルキー星人が地球にいるってんだ!?
「あなたが生き別れた ご両親と再会するって。有名よ?知らないの?」
……知るかよ……。
「まぁいいわ。とにかく、お願いが あるんだけど」
「お願い?」
「私を、ミルキー星に帰してほしいの。こんな星、どうなったっていいわ。ゴミは多いし、空気は汚いし。人間も うざったい。故郷へ帰りたいの。そう、頼んでくれないかしら」
……この目の前の美女は、なかなかの毒を吐く。
《第4話へ続く》