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 圧倒的敗北っ!?

 突然場内は騒がしくなり、外からは剣戟の音まで聞こえ始めた。


 「アムハムラ王?」


 「うむ」


 言葉少なに確認し、僕は袋の中からショテルと、アムハムラ王用にツヴァイハンダーを出す。


 新しくショテルをオリハルコンで作ろうとしていたのに、なんてタイミングだ。


 「どうぞ」


 「おお、すまぬな」


 ツヴァイハンダーを手渡し、2人で唯一の入り口を警戒する。

 僕も王も、仲間がいる。下手に逃げ回れば敵に発見される危険と、仲間と合流できない可能性がある。


 アムハムラ王が気を利かせてくれたお陰で、この部屋の周囲は人払いが済んでいたようだ。


 確かに話の内容的に、護衛とはいえ余人を交えて、とはいかなかったのだが運の悪い。


 僕はアムハムラ王に構わず、アンドレに話しかける。


 「アンドレ、例のマジックアイテムを造り出す余裕はあると思うか?」


 『おすすめはできません。装備している最中に襲われかねません。ですが今のあなたの身体能力では、不安があるのも事実です』


 だよな。


 僕はスマホからスニーカーを一足作り出した。


 靴はこの部屋に入る時に脱いでいたので、簡単に履き替えれる。


 スニーカーを履き替え終わると同時に扉が開き、白銀の鎧と純白のマントに身を包んだ3人組が入室してきた。


 「アムハムラ王?」


 「いや、我が国の兵ではない。アヴィ教の聖騎士のマントだ」


 うわっ……!!よりによってアヴィ教かよっ!?


 「こんにちはアムハムラ王」


 真ん中に立っていた優男が、恭しく頭を下げた。金の髪に甘いマスク、騎士然としたプレートメイルとマント。これがおとぎ話なら間違いなく、王子様ポジションにいるイケメンだ。少女漫画なら確実にヒロインと結ばれるヒーローである。


 「此度はこのような無礼な来訪をお許し願いたい。我々は、一刻も早く世界からあの穢れた魔族どもを一掃しなくてはならないのです。

 本来であれば、アムハムラ王にも我々の計画の一助となる機会を与える予定でしたが、この国の民の思わぬ妨害に交渉を行うだけの時間を逸しました。

 真に遺憾ではありますがここでその御命、頂戴つかまつります」


 うわー、話には聞いていたけどやっぱり無茶苦茶な連中だな。

 自分の思い通りにならなければ、何でもしていいとでも思ってんのか?まんまガキじゃねえか。


 「それは教会の総意か?」


 「神のご意志です」


 「話しになんねえな、狂信者」


 堂々と言い放った聖騎士に、僕は吐き捨てるように言ってやる。


 「てめえのケツくらいてめえで持てやボケ。神様のせいにすりゃ、何でも許されるとか思ってんじゃねぇ」


 「………どうやら君も、信心が足りていないようだね」


 「ハッ!信心?馬鹿言っちゃいけねぇよ、僕ほど神様を信じ、感謝してる奴なんて他にいねえっての!まぁ、あんた等の神様とはだいぶ違うがな」


 「成る程、異教徒だったか。ならばなんの躊躇もない。今すぐ裁きを下してあげよう」


 しゅらぁ、と白刃を抜き放つ聖騎士に、僕もショテルを向ける。


 他の2人はどうやらアムハムラ王を相手にするようだ。


 「神へ祈れ、少年」


 「いいのかよ?僕の信じる神は、あんたの神じゃねえぞ?」


 「そうだった、撤回しよう。神は愚かしい異教徒である君も、きっとお許しになる。安心して眠れ」


 いやー、僕が死んだら神様はガッカリするんじゃないかな。まぁ、この人達の言う神が本当にいたら、そっちの人は大喜びなんだろうさ。


 なにせ、期せずして魔王が死ぬことになるのだから。


 僕としては、さっき造ったスニーカーに期待するしかない。




 「身体強化魔法『トレホ』発動!」




 途端に羽のように軽くなった体で駆ける。


 うおっ!ホントにはえー!


 「ほう、身体強化魔法が使えるのか」


 甲高い音が鳴り響き、僕の動きが止まる。斬りかかった僕のショテルをいとも容易く受け止めて、聖騎士の男は感心するように呟いた。


 マジかよ。


 「それになかなか良い剣だ。私の剣が少し欠けてしまった。だがその程度の剣筋で、私をどうにかできると思うなよ?」


 「―――くっ!」


 僕は一旦距離をとり、鎖袋からカイトシールドを取り出す。ショテルは本来盾の後ろから攻撃するための剣だ。

 今度は盾を前面に構えながら、僕は突撃する。


 「ほう、その奇剣はそういう使い方をするのか」


 くっ、バレた。やっぱり正面から堂々と奇襲するには、この剣の形は異様すぎる。


 難なく盾をかわされ聖騎士と僕の間には、再び距離ができた。


 「面白い戦い方をするな、君は」


 聖騎士の態度にはありありと余裕が窺える。それほどまでに、僕とこの男には歴然とした差があるということか。


 「だが、いつまでも悠長に遊んではいられないな。流石は音に聞こえた武人、アムハムラ王だ。聖騎士2人を相手に互角か」


 聖騎士の男の言葉に僕がそちらを見ると、2人の聖騎士を相手にツヴァイハンダーを自由自在に操り、防戦を繰り広げていた。


 2人の聖騎士もアムハムラ王も、僕なんかとは比べるべくもない洗練された剣技を繰り出している。


 すごい………。


 その一言に尽きた。聖騎士のブロードソードを、アムハムラ王がいなし、2人同時にかかられないように牽制する。


 僕は一瞬、目の前で繰り広げられている攻防に見入ってしまっていた。それは戦闘において、致命的な隙となる筈だ。


 慌ててもう1人の聖騎士に向き直ると、その男は柔和に笑みこちらにブロードソードを向けていた。


 なぜ、今まで攻撃してこなかったのか。その答えはすぐにわかった。




 「では終わらせましょう」




 男がそう言うと、刹那の後には僕の目の前にその男が迫っていた。目にも止まらぬどころではない、完全に見えなかった。


 つまりこいつは、端から僕を殺すことなどいつでも出来たのだ。


 僕は先程確認していた彼のステータスを、今一度思い出す。




 カリス・ドルトレイク 《レベル58》

 せいきし きょうしんしゃ アヴィきょう


 たいりょく 900/900

 まりょく 624/704

 けいけんち 33/5842


 ちから 620

 まもり 55

 はやさ 792

 まほう 1003


 わざ


 けん レベル58

 じょう・ひかりまほう

 やり レベル32 ▼


 そうび


 よろい

 けん

 たんけん

 ペンダント





 身体強化魔法を付与したスニーカーも、元となる僕が圧倒的にこいつより遅いせいで、なんの意味もなかったのだ。

 なにせ、獣人であるコーロンさんより、身体能力で勝っているのだから。


 「あがっ!」


 鋭い熱を感じ僕の腹部を見れば、白銀の刃が深々と突き立っていた。




 「神の御元で安らかに眠れ」




 聖騎士の言葉を聞き終わる前に、僕は崩れ落ちた。




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