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 旅路と精霊っ!?

 またあの仰々しい見送りを受け、僕らは一路アムハムラへ向かった。


 間に海があるので、最初だけは飛んでいく。僕らはと言ったが、馬車には僕1人だ。飛行はフルフルが断固として拒否したために、後で転移の指輪を使って追い付く手はずになっている。あぁ………。本当に魔力の無駄遣いだ。


 『マスター、言っておきますけど、あなたの魔力でもダンジョンの維持はギリギリなんですからね?ストックがなくなれば、2日に1度は全魔力を提供してもらわなければダンジョンの維持が出来ないんですよ?おまけに、奴隷解放やマジックアイテム、通貨や使い捨ての転移陣までこの端末で造るんですよ?いくらこの2ヶ月せこせこ溜め込んだ魔力でも、使い続ければ無くなるんですからね?聞いてるんですか、マスター?』


 「………はい………」


 予想通りのアンドレの説教を受けながら、僕らは空の旅を続けた。


 『あなたは本当に身内に甘いですね。フルフルやパイモンだって強く言えば聞き分けるだけの分別はありますよ?

 かと思えば、敵対者には非情なまでに冷酷な対処をするのですから掴めません。

 わかっていますか?あなたは既に、魔王を含む2000人もの魔族を殺しているんですよ。なぜそんなにあっけらかんとしていられるのか、少々疑問です』


 いや、じゃないと僕殺されてたし。殺しに来たんだから、殺されたって文句はないでしょ?

 誰かを殺していいのは、その状況に置かれたとき、自分が殺されても仕方がないと思った人だけだよ。


 『はぁ………。ついつい忘れてしまいがちですが、そういえばあなたは生まれて間もない、人生経験の乏しい存在でしたね。


 普通は命を奪う事への忌避感や、奪ってしまった罪悪感を感じるものです。生まれて1月で命を狙われ、相手を返り討ちにし、その首をもぎ取ったあなたは、もうまともな情操教育なんて不可能でしょうね………』


 いや、人を人格破綻者か殺人鬼のように言うのはやめてくれよ。

 僕は望んで誰かを殺したり、嬉々として刃を向けたことなんてないぞ。


 『嬉々として誰かに刃を向けたことならありますよ。コーロンの時とか、コションの首を取ったときとか』


 「いや、あれはホラ、例外っていうか、顔で笑って心で怒る、みたいな?」


 確かにどちらの時も笑っていた記憶はあるが、あれは違う。違うからノーカン!


 『まぁ………、過酷な運命が、あなたにそうである事を強いた結果なのでしょうが。………正直少し同情します』


 いや、なんかスゲー哀れみを受けてる気がするんだけど!?僕ってそんなに可哀想なの!?やめてくれよ!!僕ほど恵まれた魔王って他にいないでしょ!?生後2月で美女美少女に囲まれて酒池肉林なんて、この世の春じゃん!?だからそんな可哀想なものを気遣うような台詞はやめてくれ!今日のアンドレの毒舌は方向性が違うよっ!?なんか心にザクザクくるよ!?







 1度沿岸にある村を飛び越し、あまり目立たないよう周囲に村落の無い地帯で、僕らは着陸した。飛行中僕の精神がガリガリ削られていた気もするが、順調な旅の始まりだったと言えなくもない。


 僕はフルフルにイヤリングで連絡し、馬車で転移してきてもらう。


 「フルフルなのー!」


 ああ、たった数十分離れてただけなのに、フルフルのバカさが懐かしい。こいつを旅の道連れに選んで良かった。


 「よっし!じゃあしゅっぱぁーつっ!」


 「出発なのー!」


 モーモに牽かれ、先程通り過ぎた村まで行く。牛車と聞いて想像するほど、車速は遅くない。モーモは馬よりは遅いが、牛よりは遥かに速く進めるようだ。これで乳さえ不味くなきゃ、最高のペットなのに。なんなら牧畜でも始めようかな。人員も増えたし、城壁都市内で飼育してもいいだろう。あ、また魔力使う羽目になるな。やめた。


 フルフルを隣に座らせ、僕らはゆっくりと進む。ここから1時間は馬車に揺られなければ、村へは着かないのだ。のんびり行こう。


 しかし寒いな。今はだいたい初夏と言っていい季節だそうだが、ここは学ランでも結構寒い。


 防寒具造っておけば良かった。


 「フルフル、寒くないか?」


 「全然なの!キアスはこの程度で寒いなんて軟弱なの!」


 いや、お前の場合は水の精霊だからだろうが。それを忘れて問いかけた僕も僕だが。


 「フルフル、前々から思ってたんだが、フルフルって精霊魔法使えるよな?」


 「?使えるの。それが何なの?」


 「いや、僕も精霊魔法は使えるんだけど、その実態がよくわかんなくてな。精霊に魔力を与えて、協力を仰ぎ、発現してもらう魔法ってのはわかるんだがその意味がさっぱりなんだよな」


 「そのままなの。精霊に魔力をあげて、魔法を使うの」


 「いや、そんなざっくり説明されてもわかんねーんだって。じゃあそもそもそれって、精霊がいなきゃ使えないって事だろ?僕お前以外に精霊って見たことがないんだけど」


 「精霊はどこにでもいるの。石にも、空気にも、水にも、火にも、草にも、木にも、ご飯にも、パンにも、なんにでもいるの」


 ああ、前半ではわからなかったけど、最後の2つで何となくわかった。


 要は八百万の神々と同じってことだ。


 ありとあらゆる物に宿る精霊に魔力を与える。つまりは精霊がボディーで、動力と燃料が魔力。目的と動力と燃料、それを与えて魔法を発現させる魔法ってこった。


 「あれ、でもそれって普通の魔法とどこが違うんだ?」


 普通の魔法でだって、火を出したり水を出したり出来るのに、わざわざそれを精霊魔法でやる意味はないだろ。むしろ、普通に魔法を発現させるより、精霊魔法の方が魔力コストが高い。わざわざ精霊魔法を使う意味って何なんだ?


 「キアス、キアスはバカなの?」


 うわっ!フルフルに言われたっ!!フルフルだけには絶対言われたくない台詞だったのにっ!!


 「精霊魔法は人間や魔族が使えば、全部の精霊にお願いできるの。普通の人間や魔族は、魔法が使える人ってそんなにいないの。それに魔法が使えてもその属性の魔法しか使えないの。でも精霊魔法なら色々な魔法が使えるの。それが精霊魔法なの」


 ………確かに僕がバカだった。


 属性に縛られない魔法は、普通の人にとっては確かに利点だろう。敵に合わせて臨機応変に使う魔法を変えたり、私生活でも火を起こし、水で洗い、土で作り、風で乾かすというマルチな使い方ができる。


 まぁ、結局のところ僕は全属性持ってるし、そもそも魔法が使えない以上あまり役に立たないのだが。

 ダンジョンにも、わざわざコストの高い精霊魔法を使う意味はない。




 お、村が見えてきたな。





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