ダンジョンマスターのお仕事はっ!?
『マスター侵入者です』
「おおっ!なんか久しぶりだな!」
最初にコションが来たのが約2ヶ月前、トリシャが来てから約2週間といったところか。
『魔大陸側から、数は約1200です』
「多いなっ!!」
コションの時は約800人くらいだったのに。コションが消息を絶って2ヶ月も経ったからなぁ。応援なり、状況の確認なりに来たんだろ。まぁ、コションもその部下も全滅したんだけど。
『また警告を発しますか?』
「まぁ、一応ね。コションの部下だからって必ずしもバカばかりじゃないだろうし、雇い主が死んだなら、すごすご帰ってくれるんじゃない?」
『相手がコション並みのバカだった場合は?』
「そういえば、地下迷宮の状況はどうなってる?」
『はい。適度に仕上がっているかと』
「稼働実験は必要だよな?」
『そうですね。どこかにいい被験体は居ないものでしょうか?』
「うーん、早々都合良くは………。あれぇ?そういえば………」
『ああ、そういえば!丁度いいタイミングで侵入者が居ました』
「なんだか話ができすぎてるなぁ〜」
『まぁ、これも日頃の行いがいいおかげですよ』
さ、そろそろこの三文芝居も終わりにしよう。意外と恥ずかしい。
僕は確認をしながら、マイクまで向かう。うーん、相手の出方次第だけど、本当に殺しちゃってもいいのだろうか?僕の迷宮で死んだのって、今のところ魔族だけなんだよなぁ………。
このままじゃ、魔族に敵対して人間の味方をする魔王だと思われかねない。やっぱり生かして返すべきかなぁ。
「あーあー、マイクテスマイクテス。なまむぎなまもめなまままも。
こんにちは、魔王のアムドゥスキアスです。侵入者の諸君、まずはようこそ。歓迎しよう。
ただ、歓迎のしかたは君達の目的次第だ。君達は何を目的として、我がダンジョンを訪れたのかな?」
僕の問いに、魔族の一団が俄にざわめき出す。中でも一番上等な鎧を纏い、大きなハルバートを携えたトロルが前に出て、口を開く。
『まだ生きてるとは驚きだぜ新米魔王!』
あ、いいや。
こいつ等には死んでもらおう。
『俺達はコション様の加勢に来た!なぜ一向に報告も無いのかと思っていたが、まさかここまでバカでけぇモン造ってたとはな!
だが俺達が加勢に来たからには、お前ももう一貫の終わりだぜ!小便チビりながら待ってやがれ!』
「ああ、はいはい。入り口はそこから階段を登った先の門からとなります。とっとと入ってくださりやがりませ」
そしてとっとと実験動物として死んでくださいますよう、当方切に願っております。
わらわらと階段を登っていく魔族達を確認しながら、僕はスマホで最初の門に転移陣を付与する。これで、あの門をくぐれば無酸素回廊の先、地下迷宮へとご案内だ。
というか、こいつ等はやっぱりバカなのだろうか?
コションがいまだに生きていたとしても、現状僕が殺されていないのにあっさり合流などできるわけがないだろう。その時はコション達は2ヶ月分も迷宮を進んでいるのだから。
ああ、迷宮の存在を知らなくて、僕とコションが昔ながらの合戦よろしく、配下の者達を戦わせてるとでも思ってるのかもしれないな。それにしたって、援軍の分断工作や遅延工作は定石だろうに、なんの疑いもなく入って行くあたり絶対バカだ。
魔族軍1200人が地下迷宮に入った後、門から転移陣を消して思う。
やっぱり、魔族側にも色々と説明しなきゃマズイよな。コションの住んでた場所は現状無政府状態だし、そこに住んでいる魔族達を思えば、このままにはしておけない。
唯一の救いは、コションが無能な支配者だったらしく、元々大して治安が良くない地域のようで、これ以上の悪化には時間がかかるとか。まぁ、パイモンもそこまで詳しくないらしいので、やはり一度確認しておかねばならないだろうな。
何より、通貨を流通させる上でコションの元支配地域には安定していてもらわねばならない。そこを玄関口にしなければ、通貨を魔族に普及させるのは難しいのだ。
でも、僕が支配者になるってのはなぁ………。
色々と仕事が増えそうで面倒くさい。何より、これから城壁都市も本格的に稼働し始めるのだ。そんな事をしている余裕はない。
あ、でも魔大陸側の城壁都市にはコションの支配地域から人を引っ張ってきたいな。
いくらなんでも。いくらなんでもっ!コションの支配地域の住民だからって、バカばかりじゃないだろうし!ないよね?なんか本当に不安なんだけど………。
『マスター、侵入者が全滅しました』
「早っ!!」