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 6人の王さまっ!?

 コーロンさんが倒れてから5日経った。


 僕はとりあえず、その間にやるべき事を済ませておいた。


 その間、ずっとゴーロト・カローナの宿を取りっぱなしだったし、モーモも預けっぱなしだ。清算が怖い。


 「おう、キアス。また近くの村へお使いか?」


 「もう、ロトさん、子供扱いしないでくださいよ。これも仕事です」


 最早顔馴染みになってしまった馬の門番さんに、軽く挨拶して、僕は街へ入る。


 ゴーロト・カローナは今日も平和だ。食糧や塩の値段も落ち着きを見せ、人々は活気に満ちている。


 「やぁ、キアスさん。また買い出しですか?」


 「ええ。近くの村で頼まれまして」


 「このままズヴェーリに居着いてはいかがですか?我が商会の席に、丁度空きがありますよ?」


 「引き抜き!?相変わらず末恐ろしいなぁ、君は」


 ザチャーミン商会は、僕の持ち込んだ塩で大きな黒字を出しつつ、今回の高騰で上手く儲けたようだ。

 アニーさんからの情報が役に立ったようで何よりだ。


 「今回も生活雑貨ですか?既に相当な数を出荷したはずですが」


 「ええ。まぁ、まだまだ足りないようで」


 「こちらとしても、代金を支払ってもらっているので文句はありませんが、帝都がもう1つ出来たような需要ですね」


 「実はそれくらい大規模な村が、近くに出来ましてね」


 「フフフ。キアスさんの冗談は、冗談に聞こえないから恐ろしい」


 セン君とも大分打ち解けてきた。アムハムラへの出店も近いようだし、色々と物入りな時分に、僕という固定客が重宝しているのだろう。利益ありきの関係、と言ってしまえばそれまでだが、これが僕らなりのコミュニケーションなのだ。







 さて、だいたいの準備は整った。


 コーロンさんを苦しめた輩に、最大限の嫌がらせを受けさせるべく、僕はスマホを操作した。


 『召喚』から、『状態』に、『ズヴェーリ皇帝』を入力。光が発生するのもお構い無しに、僕は次の作業に移る。『状態』から『天帝』、『ネージュ女王』、『トルトカ国家首席』、『ガオシャン皇帝』、そして『アムハムラ国王』を入力して召喚する。


 たちまち、ただの平原に6人の国家元首達が揃った。

 皆さん動揺はあるものの、取り乱したりしない辺りは、さすが王様。あ、1人王様じゃない人もいたな。

 当事者である、ズヴェーリ皇帝は当然として、他の王様達を呼んだのにはわけがある。


 北方を統治する4国、ネージュ女王国、トルトカ共和国、ガオシャン皇国、アムハムラ王国に、今回の所業があくまで僕の独断であり、ズヴェーリ帝国は関知していないと、知ってもらうためだ。それに、天帝国リュシュカ・バルドラが太鼓判を押せば、ズヴェーリ帝国は大手を振って被害者だと名乗れる。なんてったって、真大陸で一番の影響力を持つ国だ。


 所業と言ったが、別段特別なことをしたわけではない。

 当初の予定通り、奴隷狩りの被害者達を解放しただけだ。


 今彼らは城壁都市の居住区に住んでいる。こちらに住居を造った後、移住してもらう予定だ。3分の1くらいの人には、城壁都市に残ってもらう。流石に家が足りない。残った人達には、あちらで、僕の斡旋した仕事をしてもらおうと思っている。やっと人材を確保できたということだ。


 あとは、この国の方針として、奴隷狩りの被害者達を保護させれば、いくら文句を言われたからとて、悪いのは、奴隷狩りを行った犯罪者であり、そうと知ってて売った奴隷商であり、それを問答無用で奪った僕である。


 第0騎士団とやらも、大分仕事が減ることだろう。なにせ、奴隷狩り組織はもう、退路も活路もないのだ。死中にすら活の無い、詰み将棋なのだから。


 いくら人を拐おうと、全員僕が奪う。毎日奪う。そんな、確実に奪われる奴隷を買う奴隷商などいないだろう。今まで奴隷狩りに頼ってきた奴隷商には、おしなべて首を吊ってもらい、奴隷狩りで稼いでいた者達には、飢えてもらう。


 まぁ、まだ生きているだけ、今回の僕は寛容と言ってなんの過言もない。







 さて、王様達である。


 「どうもこんにちは。僕はアムドゥスキアス。あなた達の言うところの、第13魔王です。どうぞお見知り置きを」


 丁寧に頭を下げ、僕は、世界に対する宣戦布告を始める。


 「今回皆様に集まっていただいたのは、僕の所信表明とでも申しましょうか、行動方針と申しましょうか、それをあなた方に聞いていただこうと思ったからです。


 各々ご予定、私事おありでしょうが、暫しお付き合いください」


 僕の言葉に、6人の王達は言葉を飲み込み、値踏みするように僕を観察し始めた。


 1人、アムハムラ王は、親の仇でも見るような目で僕を睨んできたけど。僕、何かしたっけかな?


 「1つ、よいか?」


 6人の中の1人、壮年の男性が、腹に響くような威厳のある声で問いかけてきた。


 「はい、何ですか?」


 「この召喚術は貴殿が行ったものであるか?」


 「ええ」


 「各国の王だけを、狙いすましてか?」


 「はい。正確には、北側4ヵ国と、ズヴェーリ帝国、天帝国の王だけを狙いすまして、ですね。ああ、大丈夫ですよ。この召喚術はお互いに危害を加えることはできませんから」


 「成る程」


 「よろしいでしょうか、天帝陛下」


 「うむ」


 天帝国リュシュカ・バルドラの王、壮年の渋い男は深く頷いて、視線で先を促してきた。


 「ここはズヴェーリ帝国です」


 「なんだとっ!?」


 今度はズヴェーリ皇帝が驚きの声をあげ、周囲を見回した。


 「確かに、地形に覚えがある。しかもここは、帝都に近い場所ではないか?」


 「はい。帝都から馬車で2時間といった距離の場所です」


 「そんな………っ!貴様っ!我が国に何をするつもりだっ!!」


 ズヴェーリ皇帝が激昂しているが、その表情があまりにコミカル過ぎて違和感しかない。動物の国の王さまだから、てっきりライオンだと思ってたのに、まさか駱駝だったとは。意表を突かれた。


 「落ち着いてください、皇帝陛下。僕は別に何も、………というわけでもありませんが、街を襲ったり、人を殺したりするために来たわけではありませんよ」


 僕がそう言っても、皇帝はうろん気な眼差しでこちらを見ている。いや、駱駝ってどこかそういうダウナーな雰囲気だから、真顔なのかもしれないけど。


 「ではまず、これを見ていただきましょう」


 あらかじめ造っていたそれを、セーブし、世界に顕現させる。


 イメージとしては、タワーマンションというより、ただの団地だ。ただ、土地が狭く、建築法の厳しい日本と違い、その大きさは常軌を逸している。おまけにここは、周りに何もない平原だ。巨大建造物に慣れていない王さま達には、ちょっと刺激が強すぎたかな?


 絶句して、ただただその集合住宅を見上げる王さま達。天帝とズヴェーリ皇帝だけはよくわからないけど。


 「僕はこれから、この地に街を造ります。

 世界中から、無理矢理奴隷にされた人、酷い環境に置かれた奴隷、死にそうな奴隷を集めて、この地に解放します!」




 さぁ、奴隷解放の第一段階の完了といこうか!!





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