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 聖なる国と赤い髪っ!?

 さてさて、やぁって来ました、聖教国!!


 空飛ぶ馬車で8時間!

 あっちの宿代が無駄だけど、もう絶対今日中には戻れないので仕方ない!!




 僕ら魔族を目の敵にし、絶滅させる事を正義と言って憚らない人たちの巣窟!!


 つまりはザ・敵地!!




 いやー、なんだろうね、この緊張感と、嗜虐感。


 おいおい、聖なる国とか言って、魔王に潜り込まれてんじゃねーか!

 魔大陸進攻の前に、もうちょっと自国の安全に気を使ったらぁ?


 嫌な感じのニタニタ笑いが止まらない。




 僕とウェパルがいるのは、アドルヴェルド聖教国、聖都アラト。………ぅぷぷ。聖都とか言っちゃって。ねえ?


 真大陸のほぼ中央に位置する内陸の国のせいか、ズヴェーリ帝国とはかなり文化様式が違うみたいだ。ゴーロト・カローナでは、木材と石材を組み合わせた家が一般的だったのに対し、ここアラトでは石材のみの家ばかりが見受けられる。たぶん地震がない国なのだろう。中世ヨーロッパ然とした町並みはやはり新鮮で、これぞ異世界!って感じ。いや、ヨーロッパっぽいのに、なぜ異世界だと思うのかは謎だが。




 検問をすり抜けた僕たちは、大通りのような石畳の道の上を、馬車に揺られてゆっくりと進んでいた。

 あ、馬車を牽くのはモーモではなく馬だ。まだ返してない。このままパクられたらどうするんだろうか?いや、しないけど。

 大通りはそのまま、町の中央に聳える教会まで続いている。


 白亜の尖塔が並び立ち、その1つ1つが、なにか宗教的な意味を持つのか、独特な建築様式で建てられている。塔は、それぞれが鐘楼になっていて、朝、昼、晩と、1日に3度鳴らされるらしい。今日の晩の分はまだ鳴っていないらしいので、ちょっと楽しみだ。

 地球で例えるなら、真っ白いサグラダ・ファミリアみたいな建物だな。いや、今現在、あれがどこまで完成しているのかで、イメージする形も変わってきてしまうのだが。


 まぁ、流石にあそこから劇的に変わるとは思えないが………。




 僕らは教会に程近い、大きな商会へ向かう。

 今回は、ちょっと荒稼ぎさせてもらうつもりなので、これくらい大きな商会がいいのだ。




 「これはっ!?」


 出迎えてくれた商人が、荷台に積まれた大量の塩と武具に驚いていた。


 「どれもよい武具です。塩も………よい質です」


 商人が積み荷を検分しながら、呟いていた。


 因みに、ここでもちゃんと塩の計量はされた。まぁ、内陸だから塩高いしね。


 「塩370kgと武具89品、合わせまして、金貨48枚と銀貨70枚、銅貨が50枚でいかがでしょう?」


 「ふむ………」


 僕は考え込むフリをして、窓の外を見る。


 「いやはや………、なかなかどうして………。金貨48枚と銀貨71枚丁度!で、いかがでしょうか?」


 商人は苦笑しながら、即座に値段を吊り上げた。『別に他の商会でもいいかな?』という演技を心がけたんだけど、どうやら上手くいったようだ。


 値段よりも、これだけ大量の塩と武具を、ライバル商会に押さえられたらたまらないだろうからね。たぶん、最初に提示した金額だって、かなり色がついていたのだから、そこからさらに値を上げただけでも、上手くいったと言える。


 僕は微笑みながら、商人と握手を交わし、お金を貰った。


 僕は貰ったお金を鎖袋に入れてから、腰につけ直す。とても、こんな小さな袋に入るような額ではなかったので、商人のみならず、お金を持ってきた女性店員さんまで驚いて、目を丸くしていた。それを確認し、


 「ああ、これですか?」


 なんて白々しい声で言ってみる。


 「実はさる貴族様が、最近お金に困っていたらしく、死蔵していたマジックアイテムを買い取らせて貰ったんですよ。時空間魔法が付与されているので、行商には大変便利な品ですね」


 いゃあ。白々しい。

 僕は地球で、人様に顔向けできない職にでも就いていたのでは無いかと、自分自身疑ってしまう程だ。

 いや、こっちでも、密入国、脱税、身分詐称と、スネはズタズタなんだけどね。


 「それをお譲りいただくことは、可能でしょうかっ!?」


 商人さんが、詰め寄ってくるのを、なんとか笑顔で抑える。おっさんが必死の形相で迫ってくるなんて、軽いホラーだ。


 「予備が2つ程あるので、それならば………」


 やっぱり商人なら、この袋は買いだよね。物資の運搬や、行商、食品の保管など、使い道は多種多様なのだから。


 「は、白金貨3枚!勿論、1つにつき、3枚でっ!!」


 「成る程。僕も白金貨2枚で仕入れたので、いい額です。お譲りしましょう」


 「ありがとうございます!!」


 勢いよく腰を折る商人。僕は袋の中から、2つ、空の袋を取り出して、商人に手渡そうとした。


 そこに―――




 「ちょぉおっと待ったぁぁぁ!!」




 鮮やかな赤い髪を振り乱した男が飛び込んできた。




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