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 夜と明日っ!?

 「んで、とりあえず、売るもん売ったし、明日はどーすんだ?」


 コーロンさんは、鶏肉のようなもののソテーを食べながら、そう聞いてきた。名前は、『丸ボロ鳥のソテー』。森で良く獲れる鳥らしい。これに、塩とコショウ、それに酸味の強い果実の絞り汁がかかっていて、とてもうまい。

 ぷりゅぷりゅと歯応えのいい鳥肉の味が、それらの調味料との、絶妙な親和性を産み出している。


 この肉1切れで、僕はご飯をおかわりした。


 因みに、ズヴェーリ帝国では、パン食より米食が普及している。真大陸ではどうやら、北は米食、南はパン食が多いらしい。


 一緒に炒められているタマネギのような野菜も、ほのかな甘味と、香ばしさが最高だ。


 なぜ、これが生だと、あんなに辛くて、臭いのだろう。


 サラダは、今はウェパルが黙々と食している。


 ジャリジャリと、いかにも新鮮そうな、野菜の断末魔が僕らのテーブルにこだましていた。

 まぁ、こだましてるんじゃなく、次々にウェパルが平らげているだけなんだけど。


 野菜好きだったのだろうか?




 その調子で、全部平らげてくれ。

 まぁ、子供は好き嫌いしたら、大きくなれないからねっ。健康的に育ってほしいもんねっ。ねっ!?




 しかし、火を通さない野菜が、あそこまでの破壊力を持っているとは。

 僕は緑黄色野菜を舐めていた。


 え?いいんだよ!魔王は好き嫌いしてもっ!だってだって、食べなくても死なないんだからっ!人間のウェパルは、好き嫌いしちゃダメだけど、僕はいーのっ!!言い訳じゃないよっ!言い訳じゃないっ!




 ………………ごめんなさい………。




 「おい、無視すんなよ。軽く傷つくぜ?」


 「え?あ、ああ、ごめんごめん。えっと、なんだっけ?」


 コーロンさんは、『7星豚のシチュー』から、ニンジンのような野菜をパクつきながら、文句を言ってきた。このシチュー、僕の知っているクリームシチューではなく、どちらかと言うとポトフのようだ。トロトロになるまで煮込まれた、7星豚と、野菜は、絶品である。

 そして、どうでもいいけど、その、スプーンをくわえた表情は、拗ねてるようで可愛い。


 「だぁーから、明日の予定だよ!よ・て・い!」


 「ああ、明日は買い出しだね。

 えーと、食糧、野菜の種、衣類もしくは布、糸、あ、それと寝具だ」


 「結構な量になるんじゃねえか?」


 「まぁね。だから、明日は1日中買い出し三昧」


 うへぇ………。と嫌そうな呻きをあげるコーロンさん。


 「そんな嫌そうな声をあげなくても大丈夫だよ。明日、コーロンさんは別行動だから」


 「へ?」


 呆けたような表情を浮かべるコーロンさんに、僕は大事な事を忘れていることを告げる。


 「僕らがこの国に来た、本来の目的は?」


 「あ」


 コーロンさんには、明日から伝手とやらを頼って、皇帝との話し合いをセッティングしてもらわなくてはならないのだ。


 「わ、わりぃ、忘れてた………」


 「大事な事なんだから、忘れないでよ」


 そもそもコーロンさんの頼みなんだからね、コレ?


 「悪かったよ。アタシが皇帝陛下と渡りをつけて、キアスが奴隷を呼び出して解放する。だったよな?」


 「うん。

 ただ、解放はもしかしたらすぐとはいかないかもしれないね」


 「あん?何でだよ?」


 コーロンさんは、平らげた丸ボロ鳥の骨をかじりながら、疑問の表情を浮かべる。


 「セン君が言っていただろ?

 『食糧の高騰は、国も商人も望んでないから、抑えてる』って。

 高騰するって事は、需要が供給を上回っているってことだ。今、何万人と奴隷を扶養すれば、この国だってパニックになる。とてもじゃないが、今すぐってのは無理だろうね」


 実際、今回の高騰には、不作などの明確な理由など無い。

 だから、落ち着きを取り戻すことも可能だが、今いきなり、大量の奴隷が解放され、この国に住むことになれば話は別だ。


 食糧の市場はパニックになる。


 「よくわかんねぇけど、お前が乗り気じゃねぇ、って事じゃねぇんだな?」


 「僕はむしろ乗り気だよ。ノリノリさ。

 でもやっぱり、この国にも、僕のダンジョンや、アムハムラ王国と同じ問題があるってことさ」


 僕がそう言うと、コーロンさんは、安心したようにため息を吐く。


 「まぁ、そうなったら、そうなっただな。アタシには、難しいこたぁわかんねぇけど、それでも、お前がやってくれるってんなら、お前に任せる」


 「まぁ、簡単な解決策も、無いではないんだけどね」


 「本当かっ!?」


 身をテーブルに乗り出して、こちらに詰め寄るコーロンさん。余程、無理矢理奴隷にされた人達が心配なのだろう。


 けど、これってあんまり気が進まないんだよなぁ。

 最悪、皇帝や、この国の貴族なんかに、僕が恨まれる。


 「どうすればいい!?」


 「それは―――」


 ゴトン。


 僕が口を開きかけた時、テーブルから、まるで固い物と固い物がぶつかったような、硬質な音が聞こえた。


 「ぅぅ………。痛い………」


 そこには、半目のウェパルと、すでにすやすやと寝息をたてているフルフルがいた。

 ウェパルは、少し赤くなったおでこを押さえ、ちょっと涙目だ。


 気付けば結構話し込んでいたようだ。


 「この続きはまた今度」


 「まぁ、仕方ねぇか」


 僕とコーロンさんは苦笑すると、それぞれの部屋に、フルフルとウェパルを連れていくことにした。





 うわっ!ホントにフルフルの体って冷たい。





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