インテリアはセレブっ!?
神様が去った。
しかし、最後の慌てた様子、一体どうしたというのだろう?なんか、すごい不安になる。もしかしたら、何か重大なことを伝え忘れた、とかだろうか?でもまぁ、貰うものは貰ったし、それくらいのミスならいいや。
案外、ただ単に持ってたトーストでも落としたのかもしれないし。あれ、絶対バター塗った方が落ちるんだよな。なんでだろ?
とにかく、去ってしまったものはしょうがない。いつまでもくよくよせず、神様のくれたアドバイスを活かそう。
僕はアプリを起動したままのスマホに、再び視線を落とす。
「あれ?これはなんだ?」
画面下部に並んだ、3つのアイコン。『カスタム』『セーブ』『ステータス』の1つ、『ステータス』に『!』のアイコンが付いていた。
不思議に思ってステータスを確認する。
アムドゥスキアス 《レベル1》
まおう ダンジョンマスター
たいりょく 100010/100010
まりょく 10002/10002
けいけんち 0/100
ちから 4
まもり 2
はやさ 6
まほう 0
わざ
まりょくのいずみ
かみのかご
かんてい ▼
そうび
がくラン
スニーカー
スマホ
名前がついてた。
これが、神様の言っていた、最後のとっておきのプレゼントだろう。しかし、なぜこの名前なのだろうか。
アムドゥスキアスは確か、ユニコーンの姿で現れる、音楽関連の恩恵をもたらす悪魔だったはずだ。ソロモン72柱の悪魔、その序列67番。
というか、僕はなぜこんな知識があるのだろうか?
知識が勝手に『オタク』というワードを検索してきた。うん。よくわからない。なぜ家の丁寧語が引っ張ってこられたのか、僕にはとんと見当がつかない。
まぁいい。とりあえず、神様のアドバイスに従おう。
先程造った、この白い部屋から伸びる5メートルほどの通路、そこに足を運ぶ。
ここもまた、真っ白い石材で出来た通路だった。突き当たりも白い壁だ。なぜか、天井から明かりが降り注いで来るので暗くはない。ただ、そろそろ空が見たい。
まずここに大きな広間を造って、そこからさらに地上へ続く階段を造ろう。寝室や、トイレも造らなきゃな。
『カスタム』をタッチ。そこから『迷宮』をタッチ。『作製』からさっきまでいた部屋の3倍くらいの大きな部屋を作製。セーブ。
「やっぱりキモいな」
固い石材が、にゅるりと動くのは、やっぱり違和感しかない。
「自分で造っておいてなんだが、ひっろいなぁ〜」
広い広い、広大な純白な部屋。端から端に行くまで、歩いて数分はかかる。その間に、この部屋に調度品を揃える。
円卓、椅子、壁の一面は鏡張りにして、クローゼットを付ける。食器棚に、陶器の食器や銀のナイフとフォーク、スプーン。トイレは当然水洗。ウォシュレット付き。住人が増えた時も考えて、男女別。風呂場は大浴場。これは男女共用。いや、アレだよ?水の節約とか、そういう理由だよ?
ポンポンと『カスタム』で造り出していくと、壁に到達。
「確認よし。ほい、セーブっと」
振り向くと、立派なリビングが出来上がっていた。 さらにはドアが3つ増え、それぞれ寝室、トイレ、大浴場に繋がっている。まぁ、今は水がないからトイレも大浴場も使えないんだけどね。
「しっかしホント、簡単すぎるな、これは」
大豪邸の一室のようなリビングが、ものの数分で出来上がるのだ。これがあれば、万里の長城も一日で完成させる事ができるな。
あ、いいな。万里の長城風迷宮。一本道だから迷宮って感じじゃないけど。
まぁ、そういう具体的な話は後々。今は今やるべき事に集中しよう。
僕が再び、くるりと振り返ると、そこには新たに通路ができていた。僕が入ってきた通路の丁度反対側に、もう1本の通路が伸びている。これは地上へ続く道だ。
しかし、扉がないのは見栄えが悪いな。観音開きの扉を付ける。ついでに反対側の通路にも。
「うん。なかなか様になってきたじゃないか」
部屋をぐるりと見回して、僕はその扉を開き、奥へと進む。