時間との戦いっ!?
『最上級属性魔法、全種』『最上級光魔法』『最上級闇魔法』『最上級身体強化魔法』『精霊魔法』『回復魔法』『時空間魔法』『古代魔法、各種』『無属性魔法』『鑑定』『鍛冶技術・レベル100』『錬金術・レベル100』『調合技術・レベル100』
『わざ』の欄が凄いことになってた。
なにせ『最上級』のオンパレードだ。神様曰く『もうここまで強化しちゃったら、間違いなく世界最強だろうね』だそうだ。
そりゃそうだ。でなきゃ『最上級』が泣く。なにせ『最上級』だから。
因みに、鍛冶や錬金術はダンジョンで落とすアイテムを作るために使うそうだ。神様が言わなかったら忘れてたよ。ダンジョンといえばお宝だもんね。レベルは勿論MAX!!
ふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ。
あーっはっはっはっはっはっはっはっはっはっ!!最早僕に敵はないっ!!
勇者?知らんなそんな雑魚。僕は魔王!!世界最強の魔術王だっ!!
………………………………………………………………………………………………ごめん調子乗ったごめんごめん謝るからごめんなさいお金払うから言いふらさないでそんな目で見ないではずかしいっ凄くはずかしいっ!!
なんか僕の知識が『中二病』とか『黒歴史』とか、追い討ちをかけるような知識を検索してきやがる!!
心に軽い心的外傷を負いながらも、その代償は計り知れない。
自分の身を守るには、過剰すぎる気もする。それでも、無いよりは有る方がいい。いざという時に、白旗振っても助かる保証なんて、無いのだから。
「ありがとう、神様。これで僕も、やっていけそうだよ」
『うんうん。それは良かった。やっぱりお礼言われると、嬉しいね。普段は物言わぬ魂に恩恵を与えるだけだから、やっぱり味気ないんだよね』
「うわぁー…………。なんか、ベルトコンベアで流れてくるご飯に、手作業で具を詰める作業員みたいですね、それ」
しかも扱ってるのは、人の魂………。シュールだ。
「神様、魔法の試し撃ちしたいんだけど、いい?」
そんな事より今は魔法だ。うぅ〜っ!!ワクワクするぅ〜っ!!
しかしそこで、ちょっと焦ったように神様が僕を止める。
『ちょっと待ってくれ。試し撃ちは、後で広い部屋か、地上で使ってくれ』
「どうしたんですか、神様?なんかちょっと早口ですよ?」
『いや、実は私が地上に干渉できる時間は、そんなに多くないんだ。その時間がそろそろ迫ってきているのでね』
「え、神様といつでも話せるわけじゃないの?」
そのつもりだった僕は、愕然とする。神様がいなくなったら、僕はここに1人。それは、あまりに寂しい。僕この神様、結構好きなんだよな。子供っぽいところとか。
『別れを惜しんでくれるのは嬉しい。だけど、声だけとはいえ私が地上に顕現し続ければ、それはそれで大変なことなんだよ。
実際、今地上の『魔王の血涙』は、最大級の魔力災害が起きてるはずだからね。だからそろそろお別れだ。
だがその前に、君にはいくつかアドバイスをしてから行かないとな』
「そうですか………」
やっぱり寂しいな。でも、ここまでしてもらって、さらにアドバイスまでしてくれると言うのだから、僕はそれを心して聞こう。残された僅かな時間を、大切にしよう。
『ふふふっ。そこまで気負った顔をしないでいいよ。1年もすれば、5分くらい君と話すことは出来るはずさ。
だからまずは、これからの君の行動についてだ。
まずは、地上に海まで続くダンジョンを造ってほしい。これは、地上を真大陸と魔大陸に分断するためであり、そして君の生活に欠かせない水を手に入れるため、という意味もある』
「あ、そうか。ここで生きていくなら、水の確保は必須だね。他にも食べ物とか………」
あれ?そう言えば、肉はどうやって仕入れればいいんだろう?まさかこれからずっと、ベジタリアン生活なのだろうか。それともワイルドに狩りだろうか?
『まぁ、実を言うと君は魔王になったから、飲まず食わずでもやっていけるんだよ。でも、精神的には飢えるし、渇く。だからやっぱり水は必要なんだよ』
「そうだね。できる、って言われたって、やっぱヤだもん。食べて飲んで寝る。それが人間らし生きかただよね」
『うわー………、ダメ人間だぁ………』
うん。聞こえないね。なんにも聞こえない。
『んん。ま、それはとりあえず置いておいて。
ダンジョン経営は、やっぱり1人じゃ辛いだろう?そこで、仲間を増やしなさい。アプリの『カスタム』』から『召喚』を使えば、仲間になってくれそうな人が来るから、協力して頑張ってね』
そうか。『カスタム』の『召喚』には気づいていたけど、そういう使い方をするのか。てっきり、ダンジョンを徘徊するモンスターを呼び出すためだと思ってた。
『ん〜、あとは………。そうだ!他の町に行くこともオススメだよ。通貨や、物流を知っておけば色々便利だし、お金を稼げば色々ウハウハだよ』
実を言えば、それは最初から考えていた。
いかに強くなろうと、いかに金を稼ごうと、女の子のいない生活なんて耐えられない!
町には人がいる。人がいるということは、女の子がいる。女の子がいるということは、美人がいる。召喚の事を知らなければ、今日にでも町を探して飛び出していただろう。
だが、よく考えれば今の僕は、あからさまに怪しくないだろうか。
学ランで、スマホ片手に、緩む顔。
うむ。なぜ5・7・5なのかはわからないが、学ラン脱げばきっと大丈夫だ。
『じゃあ最後にとっておきのプレゼントをして、私はお暇するよ。
くれぐれも無理はしないで、体に気を付けてね。君は強いけど、世の中どんな落とし穴があるか、わからないんだから』
神様の言葉に、僕はにこやかに頷く。
「神様、本当にありがとう。なんだか流れで引き受ける感じになっちゃったけど、できるだけこの世界の人たちが死なないよう、頑張るよ!」
『うん。こちらこそありがとう。
今日から始まる君の人生が、愉快痛快であらんことを。
じゃあね。
――――――――あっ、やべっ、ちょ、まっ――――――』
………最後に聞こえた神様の声に、頭の片隅で危険信号が鳴った気がした。