黒の魔王の狂歌・3っ!?
あの空飛ぶ煙突群が忽然と姿を消してから、俺たちはすぐさま体勢を立て直した。幸いにも、あの一斉攻撃で死んだ者はおらず、肩が外れた重傷者以外はかすり傷程度の被害におさまった。ちなみに、第十二魔王軍は空からの魔道具攻撃にすっかり萎縮してしまったようで、俺たちとは距離をとって守勢を堅持している。第十二魔王軍と第十三魔王軍は友軍同士のはずだが、どうやら噂通り、力関係では第十三魔王様の方が強いらしい。
そしてその第十三魔王様には、体勢を立て直していた俺たちを、休ませるつもりはまったくないようだった。
「敵影確認! ザー将軍、ご指示を!」
「やはりあれで終わりではないか……」
空飛ぶ煙突群が現れた方角の空に、新たな無数の影が登場した事で、俺たちの緊張は再び高まる。だがしかし、最初から相手が空から現れるとわかっているのなら、対処の方法は無数に存在する。
俺は一呼吸置いて心を落ち着けてから、声を張り上げる。
「総員、要警戒! 魔法攻撃の準備! 射程圏内に入り次第、一斉攻撃。のちは、任意で続行。威力よりも数を重視! 魔法使い以外は、投擲の準備! 用意のない者は石でかまわん。攻撃のタイミングは、魔法攻撃を躱した魔道具があれば、それを狙い撃て。なおも躱すようであれば、俺が直接叩く」
所詮あれは魔道具であり、竜や龍よりもはるかに脆いはずだ。先の投石を回避した事から、それなりに機動力はあるようだが、いかな広い空とはいえど、蟻の這い出す隙間もない程の面攻撃の前では回避など不可能。よしんば、辛うじてかわしきれたところで、そこに魔法が使えぬ者が投石や投擲武器による攻撃を加えれば、十分に殲滅できるだろう。それでもなお決め手に欠けるようであれば、もう直接攻撃すれば良い。
俺の瞳術は衝撃波を飛ばす事しかできないが、それでも威力と速さだけなら第十三魔王様配下の瞳術使いにすら勝ると自負している。数機程度の残存であれば、跳躍して攻撃するのもいいだろう。
これだけ用意しておけば、どれかは当たる。そして、一つでも当たればいいのだ。
ベルベットのような魔法使いならいざ知らず、ただの魔道具が臨機応変に魔法を使えるはずもない。ただでさえ空を飛ぶ為に魔法を発動しているのだから、それ以上の事に使えるリソースは限られるはずだ。いや、流石にそうでなければ、いくら第十三魔王様とて卑怯すぎる。空飛ぶ魔道具が攻撃してくる時点で、既に大概なのだから、空を飛びつつ多彩な魔法が使える魔道具などというふざけた代物は、流石に彼の魔王様でも作れないと思いたい。最低限、その程度の常識はあると信じている。
「敵、射程圏内に到達!」
「まだだ! 投擲の届く範囲まで、今少し引きつけよッ!!」
緊張からか、焦る部下を諌めて静かに敵を待ち受ける。
空に浮いていた影は、次第にその輪郭をハッキリとさせていった。方や球体から手が生えたような物、方や角ばった姿で、空飛ぶ煙突や球体よりもふた回りは大きな姿の物と、異形の空飛ぶ魔道具たち。球体の方はやや数が多いが、ずんぐりとした方は一つだけである。
そんな正体不明な物体を近付けては、なにが起こるかわかったものではない。先程は守りを優先して先手を許してしまったが、今回は先に攻撃する。相手がなにかをする前に逃げ場のない一斉射を食らわし、魔道具ごときが戦場に居場所などないと知らしめてくれる。
球体と巨体は、ゆっくりと俺たちの攻撃範囲へ侵入する。その瞬間——
「敵、なおも接近中! 頃合いかと!」
「よし、攻撃開始!!」
俺の号令とともに、色とりどりの魔法が空を走る。無数の魔法の輝きが、一直線に空の異物たちめがけて殺到し、その最終到達点で凄まじい閃光となって消えていく。一拍遅れて衝撃が、さらに数拍遅れて轟音が届く。
俺の指示通り、部下たちは威力よりも数を重視し、広範囲を覆う魔法攻撃を放った。あの魔道具群に、逃げ場などなかったはずだ。
だが、俺はあの空飛ぶ魔道具群がこれで終わりだとは思わなかった。なんというか、こちらが攻撃をした瞬間の連中の動きが、あまりにも落ち着き払っているようにおもえたのだ。無論、魔道具の動きから敵の意思を読み取れる程、自分の洞察力に自負があるわけではない。だがそれでも、戦士の勘がまだ油断するなと、俺に警告を発していた。
そして案の定——
「なッ!? 結界だと!? それで防げるものなのかっ!?」
部下の一人が驚愕も露に、依然として空に飛び続けている魔道具を凝視する。
そこには、あの球体から手が生えたような魔道具が、片方の手を伸ばして盾でも構えるように浮遊していた。それも、一つだけではない。無数の球体が、まるで丸盾のように結界を張り、整然と隊列を整えていたのだ。
陸上ならまだしも、空に防御陣形を作り上げるとは……。
しかし、もし空で陣形を組んで、結界を盾に防御をしたのだとしたら、部下の驚愕には大いに同意できる。威力を度外視したとはいえ、あれだけの魔法攻撃を、空中で受け止めきれるはずがない。地上なら踏ん張りも利くだろうが、舞台は空中だ。どうして、正面から敵の攻撃を受けて、その場でとどまれるというのだ?
「まぁいい! 手筈通り、投擲攻撃に移れ!」
とても予定通りとはいえない展開だが、それでも攻撃の手を休めるわけにはいかない。敵がなにをしてくるかわからない以上、棒立ちで死を待つような愚行は避けねばならない。
それに、もし俺の予想通り魔道具のリソースが有限であれば、あの空飛ぶ球体にできるのは、防御だけだろう。そうなると、攻撃役があの巨体の方なのだが、そちらに対する警戒は一旦置いておこう。
部下たちが一斉に、投槍や投石で攻撃を開始する。攻城兵器のような威力で飛んで行くそれ等は、瞬く間に空飛ぶ球体へと到達する。それでも、魔法攻撃程の密度はない。あの空飛ぶ煙突であれば、回避は容易だっただろう。
だが球体は、背後の巨体を庇ったのか、それとも煙突と違って機動力がないのか、回避行動を取らない。そのかわり、今まで構えていた盾を引っ込めると、もう片方の手にある盾を構え直した。そして再び、防御隊列を形成した球体は、俺たちの攻撃を見事防ぎきった。実に危なげなく、実に的確にだ。
その動きは、賞賛に値するものだろう。だが、その行動で結界のカラクリは読めた。
◯●◯
「魔法特化の結界と物理特化の結界を、左右のアームで使い分けているのですか?」
「そういう事。まぁ、単純な話だろう?」
「それはまぁ、たしかに言葉にするだけならば単純な話ですが……」
なにかを言い澱み、半透明な画面を見つめるアリス君。その視線の先では、シールド・ボールがまるで重装歩兵のように整然と陣形を組んで盾を構えている姿が映っていた。多少地上戦と違うのは、守備を三次元的に展開しないといけない関係上、見た目はファランクスというよりはテストゥドっぽいところだろう。下もちゃんと守ってるけど。
ラテン語で亀を意味するテストゥドは、古代ローマで用いられた戦術である。その名の通り、亀のように正面と上部を盾で覆い、その奥に引っ込むという戦法である。
今空で展開している防御陣は、テストゥドの名の通り亀の甲羅のような半球状に防御陣を展開している。その陣形は防御一辺倒なれど、遠距離攻撃に対してはかなり高い防御力を誇る。まぁ、弱点がないわけじゃないけど。っていうか、弱点多いんだけど……。
弱点が多いってのも、本家のテストゥドっぽいよね。
ちなみに、テストゥドを僕が知っていたのは、別に戦術に詳しいからじゃない。このテストゥドが破られたカルラエの戦いは、テストゥド戦術を用いたローマ軍の敗残兵が「光り輝く旗を見た」と報告した事から、ヨーロッパが絹に対する関心を高めるきっかけになったのだ。それが遠因となり、シルクロードは西ヨーロッパまで延長された。
史上最も大きく、最も豊かな通商路を築く原動力となった凡戦、それがカルラエの戦いなのである。
小物連合が開拓した通商路は、まだシルクロード規模ではないけれど、ウチのマジックアイテムを運ぶ道としては、かなり優秀に機能してくれている。商売をするうえで、やはり道というものは重要なのだ。
と、今は戦争に集中しなきゃなので、蘊蓄はこの辺でおしまい。
画面の向こうの戦場を俯瞰していたアリス君が、難しい表情でなにやら考えていたと思ったら、唐突に口を開く。
「魔法防御に特化した結界は、魔法を発現する為に必要とされる魔力を散らす事に主眼が置かれたものです。たしかに、魔法を防ぐという一点においては、無類の効果を発揮するでしょう。しかし、逆にいえば魔法以外の攻撃には、あまりにも脆いはず」
「勿論、それは承知のうえだよ。だからこそ、もう片方のプロペラには、物理防御特化の結界を張らせたんだから」
「その物理防御特化の結界とて、弱点がないわけじゃないでしょう?」
「というか、特化なんだから、弱点だらけに決まってんじゃん」
「ええ、その通りです」
魔法防御特化の結界は、物理攻撃に非常に脆い。逆に、物理防御特化の結界は、魔法攻撃に非常に脆い。紙同然とまではいかないが、カルラエの戦いで用いられたローマ兵の盾くらい脆い。
もっと汎用的な結界であれば、魔法も物理もある程度防いでくれる。特化の結界を使うと、その特化している点以外を突かれる可能性が高く、いちいち張り直すのも大変なので実戦ではあまり使用されない。まぁ、敵の攻撃に合わせて結界を使い分けられるのは、マジックアイテムだからだといえる。
物理防御特化の結界は、敵の攻撃の威力を分散、吸収する。だから上空であろうと、敵の攻撃で押し込まれる事はない。だが、これが魔法攻撃となると、魔法の持っている魔力と、結界の魔力が干渉してしまい、防御の効果が十全に発揮されない。結果として、素通りとまではいかないが、結界の奥にまで魔法攻撃が届いてしまう。
そんなわけで、特化の結界はどちらもピーキーな仕様なのだ。
それでも、特化した攻撃に対しては、それぞれ無類の強さを持つ。ノーマルな結界では、実際の戦争で最前線に用いれるレベルの代物をマジックアイテム化しようと思えば、必要とされる魔法陣の大きさも、それを運用する為の魔力量も、さらには製造の為のコストも、実用レベルを大きく逸脱してしまう。一点物として用いるのはアリだろうが、とてもではないが部隊にするには向かない。
「そんなわけで、実用レベルのものとなると、特化の結界を両方用いる方が効率的だったんだ。まぁ、穴は多いけどね」
「はい」
僕がシールド・ボールの弱点をほのめかすと、アリス君は躊躇せず頷いた。まぁ、こういうのは素直に言ってくれた方がいいんだろうけど、あれでも苦心の末に作り上げた自信作なんだよ?
「ああ、やはり敵もシールド・ボールの弱点に気付いたようですね。魔法を水魔法と土魔法に絞り、魔法攻撃と同時に、投槍と投石を行い始めました」
「まったく、魔法と一緒に武器攻撃をすると、魔法に弾き飛ばされちゃうってのに……」
「それを考慮しても、同時に特化結界を展開できない以上は、有効な戦法でしょう」
「まぁね……」
僕等がそんな事を言っている間にも、敵の攻撃はシールド・ボールに迫る。
火魔法、風魔法と違って、水魔法と土魔法は質量のある魔法だ。魔力を散らしたところで、既に発現している水も石も、幻のように消えたりしない。いくら魔法特化とはいえ、本来はただの水や石を弾く程度の事はできるのだが、数が多いと流石に厳しい。しかも、同時に投槍や投石まで向かってくるのだ。
魔法と物理攻撃の併用。単純な守りには、単純な攻略法という事だろう。この攻撃を魔法特化の結界で防げば、投擲による攻撃で結界は破られてしまう。逆に、物理防御に特化した結界で防ごうとしても、やはり魔法が干渉して結界が用を成さないだろう。質量を持っている水魔法と土魔法に絞られたのも、この場合は痛い。
だが、そんな安直な方法で、あっさりと僕の用意したシールド・ボールが破れるとでも、本当に思っているのだろうか?
——破れるんだなぁ、これが……。
シールド・ボールたちは、フレイム・シップを見捨てて三々五々に逃走を始めた。幸い、敵の攻撃が質量のあるものに特化した為、後ろに下がれば威力や射程も減衰する。だがそうなると当然、それまで盾に守られていたフレイム・シップは丸裸だ。敵の攻撃に晒され、次第に黒煙を上げ始める。シールド・ボールが逃げた事で、さっきまで控えられていた火魔法や風魔法まで使われ始めた。
「キ、キアス様、あれではもう、継戦は無理ではないでしょうか? 撤退させた方がよろしくありませんか?」
「うーん、実はフレイム・シップって、重くて機動力が皆無に近いんだよねぇ。だからこそ、シールド・ボールたちが守ってたわけだし……。今から逃げようとお尻向けたら、敵は喜んでオカマ堀にくるだろうね」
「で、ですが、このままでは……」
そう言って画面に視線を戻し、言葉を呑み込むアリス君。まぁ、彼がなにを言おうとしたのかは明白だ。
このままでは、フレイム・シップは墜落する。
だが僕は、アリス君のそんな心配をよそに、戦場の推移に集中する。ホログラムチックな画面のなかで、フレイム・シップは敵の集中砲火を浴びて、その全身から黒煙を巻き上げていた。だが、その前進は止まらない。まるで、決死の覚悟の特攻だ。
だが——まだだ。
「これは、失敗……なのでしょうか?」
いよいよ火を吹き始めたフレイム・シップ。それを見たアリス君が、何度も僕と画面の間で視線を往復させる。きっと彼には、僕の無表情が冷徹なものに感じている事だろう。だけど僕は、そんなアリス君の心配に頓着してやれるような、心の余裕はない。
——だって、ここが山場なのだ!
ワクワクと逸る心を、必死で抑えつける。まだ——まだだ。まだ失敗の可能性はあるんだ。気をぬくな。
だがそんな自制心で抑えつけていた僕の表情も、空中でフレイム・シップが爆散するに至り——
——破顔する。
◯●◯
「他愛ないな」
「は、魔法と武器の混合攻撃の前には、あの盾球もなす術なしでしたからね。足の遅いあの巨体など、図体がでかいだけの、的でしかありません」
俺の呟きを聞き取った部下が、黒い煙とオレンジ色の炎をあげて高度を落としつつある空中の魔道具に対し、嗜虐的な笑みを浮かべて答える。どうやらあの盾球で奥の巨体を守りつつ接近し、なにかをするつもりだったようだが、こうなってしまえばその策も水泡に帰したと見ていいだろう。
盾球の方は逃してしまったものの、あのずんぐりとした飛行用魔道具を撃墜できたのは、大きい戦果だ。あの第十三魔王様の手札を一つ減らせたと思えば、我等の奮戦も意味があっただろう。問題は、こちらも武器や魔力を消耗してしまい、今さら敵本陣に攻撃を仕掛けられるかと問われれば、即答し難い状況にあるという点だろうか。
果たして、あの巨体を一つ落とした事は、どの程度の戦果として数えられるのだろうか……。
——などと、そのときまでは、楽観していられたのだ。
変化はやはり唐突だった。
俺たちの集中砲火に、ほとんど火だるまといった状態になった魔道具が、目を焼くような閃光を放って爆散したのだ。そう、爆散である。
——なぜ爆発するっ!?
◯●◯
「まぁ、僕なんかの感覚だと、飛行機が爆発するっていうのは、そこまでおかしな光景じゃないんだけどね。こっちの世界の魔道具って、別に壊れたからって爆発しないんだよね」
燃料とか積んでないし、魔力が暴走したとかいうファンタジーな理由でも、結論が爆発なんてオチにはならない。
「それはそうでしょう。爆発するとしたら、それはそういう魔道具——あっ!」
「そういう事さ。フレイム・シップは文字通りの火船。自爆目的の無人船だよ」
いってしまえば、今まであそこに浮いていたのは、超巨大な手榴弾だ。……手に収まらないものを、手榴弾とは言わないだろうけど……。
そのコンセプトは、敵の頭上から破片の雨を降らせる以外にない。敵中に突っ込ませて自爆させるという戦法もないではないが、どう考えてもその前に撃墜されるので、最大限シールド・ボールで守りつつ敵陣に近付き、一定の距離でセーフティを解除しつつ離脱すると、敵が勝手に誘爆させて自滅してくれる素敵仕様だ。
まぁ、セーフティを解除した時点で、火気に反応して中級火魔法の『爆発』が発動するので、敵が誘爆させなかった場合には、こっちの任意のタイミングで爆発させるけどね。
「ものすごい土煙ですね……」
チムニー・ライダーたちの砲撃にも戦慄していたアリス君だが、今彼が浮かべている慄きの表情は、どこか同情じみた色まで混ざっているようにすら思える。
フレイム・シップの破片が降り注いだ地上には、アリス君の言う通りもうもうと土煙がけぶっており、現在の状況を窺い知る事はできない。
「まぁ、破片の数と重さは、チムニー・ライダーたちの砲撃の比じゃないからね」
あの破片を、適度な大きさと形に整える為に、どれだけ苦労した事か……。中級火魔法によって木っ端微塵にならないよう、僕がどれだけ頑張ったかをアリス君にも知ってほしいね。飛んでいくときに鋭角になるようにとか、翼を刃状に保ちつつ吹き飛ばす方法とか、ホント、いろいろ考えて作ってあるのだ。
「これで機動力があれば、より手がつけられない兵器になるのでは?」
「そりゃあそうだろうね。でも無理」
もしフレイム・シップをもっと速く動かそうと思えば、無人機のままでは絶対に無理だ。緊急脱出装置のように、爆発する部分と飛行機を別で作って、導火線に火をつけてから高速で逃げるってやり方も考えたんだけど、どう考えても神風特攻かます連中が増えるように思えたから、誰にも伝えずボツ案にした。やっぱり危ないしね。
飛行と中級火魔法、それと無人航行にほぼすべてのリソースを注ぎ込んでいるので、フレイム・シップにそれ以上の能力を持たせるのは不可能なのだ。
「お、土煙が晴れてきたな。どのくらい生き残りがいるか……」
「流石にあれでは、敵も無傷とはいかないでしょう」
「そりゃそうだろ。砲丸と違って、鋭利な破片が無数に、それなりの重量でもって高速で飛来したんだ。チムニー・ライダーたちには悪いけど、比較にならない威力だよ」
「……? それでは、チムニー・ライダーの存在意義がなくなってしまうのでは?」
「うん? そんな事ないぞ? チムニー・ライダーには単純な火船戦術なんかにはない、自由な——」
僕がそこまで言いかけたところで、アリス君がその言葉を遮る。
「キアス様、生き残りです!」
画面のなかには、数人の魔族が満身創痍といった状態で立っていた。