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黒の魔王の狂歌・1っ!?

「はぁ……」


 僕は地上で争う魔族たちを睥睨し、陰鬱なため息をついた。それを見たアリス君が、顔を曇らせる。

 彫りの深い顔立ちのアリス君が、カッチリと戦装束を着込んでいる姿は、見惚れてしまう程に似合っているのだが、どうにもお固いイメージが強い。ちなみに、下半身に服は着ていない。ケンタウロスなので、変態ではない。


「キアス様、お加減でも……?」

「大丈夫。魔王、病気、ならない」

「なぜ片言なのでしょう……?」

「いやいや、なんつーかね……」


 そこまで言ってから、多少躊躇して言葉を飲み込み、改めて地上を眺める。そこでは今、まさに血で血を洗うような凄惨な戦争が繰り広げられている。

 それに比べれば、今の僕は安全圏で、みんなの邪魔をしない事が最大の仕事、みたいな状況だ。

 場所は天空都市であり、今は移動を開始した天空都市の上から、戦場を俯瞰してアリス君と話し合っている。アリス君以外のメンバーは、難しい話が苦手なのか、それとも職務に忠実なのか、周囲を警戒している。

 こんな言い方をすると、仕事をしているように聞こえるかもしれないが、そもそも戦場を俯瞰して、逐次戦場に情報を送っている部下は別にいるし、そもそも門外漢の僕に、詳しい戦況や作戦なんてわからない。

 つまりは、僕は今立ち話をしつつ、時間を潰しているだけなのである。


「なんか、もっとこう、やる事ないのかなぁって……」

「やる事とおっしゃられましても、下手に手を出すと規定の軍務に支障をきたしてしまうのでは?」

「うん。僕が関わると、軍内の統率がメチャクチャになる。僕の意思とレライエの意思に相違が生まれたりすると、本当に面倒臭い事になるだろうね。だから軍関連の事は、全部レライエに任せたんだし」

「では、軍務以外に精を出されては?」

「軍務以外っていったら、商売とか? 行政関連も、今は戦争にかかりきりで、フォルネゥスに『余計な事はするな』と釘を刺されてるしね。でも、流石にこの状況で商売にかまける事はできないって」


 いつ緊急事態が起こるかもわからないってのに、交渉や面会のスケジュールを入れるのは、相手にも配下にも失礼だろう。みんな真面目に仕事しているってのに、僕だけ適当に遊ぶわけにはいかない。戦争用に集めた物資に消費した財を考えれば、多少は補填しておきたい気もするが。


「それにしても、アリス君のこの魔法は便利だね」

「ありがとうございます。とはいえ、この魔法を作ったのは、私ではなく私の先祖ですので、キアス様からのお褒めの言葉は墓樹へと、たしかにお伝えします」

「あ、うん。ご先祖様を大事にね」

「は」


 そう言って、嬉しそうに頭を下げるアリス君。僕はそんなアリス君から目をそらし、アリス君の魔法で投影された地上の映像へと視線を戻す。

 なんというか、ファンタジーというよりSFチックな、半透明のスクリーンにしっかりと映像が写っている。ホログラムのようなもの——といっていいのか、SFに明るくない僕にはわからないが——それが、僕たちの前に複数浮いている。

 アリス君の先祖が編み出した、遠方の映像を映し出す魔法——無属性魔法の『望遠』だそうだ。

 実に便利なのだが、こういう魔法を作るせいで、技術が発展しないのじゃないかと思う。なんでもかんでも魔法で代用してたら、そりゃあ技術だって発展しない。魔大陸は特に、魔法適性の高い種族が多いので、その傾向が強いのだろう。

 人間と魔族の技術格差は、きっとこういう部分が原因だと思う。

 まぁ、この魔法をマジックアイテム化して、さらに小型化できれば、望遠鏡のような道具がいらなくなるので、一概に魔法に傾倒する事が悪いというわけではないのだが……。しかし、結局はマジックアイテムの技術力だって高くないのだから、やっぱり文明の停滞はこういう便利魔法とそれを使える魔法使いに依存している社会が原因な気がする。


「でもまぁ、便利なもんは便利だから、利用させてもらうけどね……」


 僕はお気楽にそう言うと、地上で起こる血で血を洗う戦争を、スポーツ観戦気分で眺める。ポップコーン欲しいなぁ。

 結局のところ、そこら辺の意識改革なんて、僕にどうこうできる話じゃない。発展しない連中に合わせる理由もないので、いずれはマジックアイテム化してしまえば、焦った他の連中もついてくるだろう。来なければ、非文明国として落ちぶれるだけの事だ。


「ところでさぁ、あっちこっちで一騎討ちが始まってるけど、もっとこう、知略と数をぶつけ合う、頭のいい戦争はできないの、魔族って?」

「は、申し訳ありません。しかしながら、魔大陸の戦争というのは、往々にしてこのようなものですよ。強さがわかりやすく表現できる戦い方しか、できませんから」

「野蛮人め。策謀をめぐらせて、誘引、突破、包囲、撃滅! みたいな頭のいい戦い方はできないもんかね……」


 などと、頭の悪い事を言う僕に、呆れたようなそぶりも見せずに、アリス君は朗らかに頷きつつ応答する。


「序盤戦なら、そういう戦い方もできるでしょうね。まぁ、敵に実力者が残っている状態で、敵中を突破しようと試みると、強者のところで一網打尽になりかねませんが」

「はぁ……。ホント、魔大陸の戦争は面倒臭いよねえ……」


 個々の実力差が、ネズミと猫ぐらいの差ならまだしも、ネズミと虎、ライオン、象くらい違うのが混ざって、一斉に戦争してるんだから、単純明快に見えて本当に面倒臭い。だからこそ、最もわかりやすい戦い方で、魔大陸の連中は戦っているのだろうけど。もしくは、最もわかりやすい方法で戦う為に、それなりに頭のいい連中が思考錯誤しているのかもしれない。


「上手く運用できれば、結構化けると思うんだけど、僕はその辺からっきしだからなぁ……」


 強者に強者をぶつける一騎打ちの連続というのは、脳筋の魔族にとっては面白い戦争なのかもしれないけど、そこには知略や策謀の介入する余地がない。だとすれば、弱者で強者を屠る事ができたら、相手に対してより有利に戦を運べると思うのだが、レライエがそういう方法を取らない以上、それは問題がある作戦なのか、そもそも実現性の乏しいものなのだろう。

 僕のそんな考えを裏付けるように、アリス君は神妙に語る。


「これまで魔大陸でも用兵達者な者はおりましたが、そういった者は往々にして、分不相応な自信に溺れて強者に挑み、軍を全滅させるという末路を辿りましたからね。下手にできない事をしようとなさるより、すっぱり諦められるキアス様は賢明かと拝察いたします」

「ああ、なるほど……」


 きっと、この魔大陸では人類史に残る英傑、名将を連れてきたとしても、同様の結末を迎えるだろう。結局のところ、竜だの龍だの魔王といった規格外の存在があっては、知略の出番などほとんどない。

 ここ魔大陸の戦争というものは、ワイルドカードの多すぎるポーカーみたいなものなのだ。

 真大陸ではそういった戦争のやり方も通用するかもしれないが、少なくとも魔大陸に知将の見せ場は前哨戦だけだ。それ以上出しゃばれば、不条理な力によって条理などねじ伏せられてしまう。魔大陸《ここ》はそういう場所なのだろう。

 なるほど、魔族が脳筋になるのも頷ける。そんな社会では、勉強をして知識や知力を鍛えるよりも、訓練をして技や力を鍛える方がいいという考えが、民衆の意識の根底に染み付いてしまっていても仕方がない。その上で、より強い者の庇護下に入りたいという意識も頷ける。

 魔族が力をなによりも重視するのは、そういう歴史が連綿と紡がれてきた結果なのだろう。


「にしたってさぁ、アレはどうにかならないの?」


 僕はホログラムチックな画面ではなく、地上の方を指差して、不満の混じった質問を投げかける。アリス君はその質問に対して、これまでの朗々とした語り口を引っ込めて、歯切れ悪く答える。


「あれは……、まぁ、なんといいますか……」


 僕が指差した先は、友軍である第九、十二魔王連合軍の中央本隊と右翼部隊とが合流した部隊の、その端だ。そこでは、当初は醜悪姫ベルベットと戦っていた敵の少数精鋭部隊が暴れまわっている。たしか、配下の誰かが、ザー将軍とかいうのが率いる部隊だと言っていた。

 相応の実力者を投入しているようだが、敵もそれなりの実力者であり、なかなか排除に至っていない。とはいえ、パッと見た感じではどうしようもない程強い相手というわけでもなく、僕の配下でいえばドドゼドとどっこいか、それよりもちょっと強い感じといったところだ。

 まぁ、僕の見立てなんて、完全に素人のものなので、あてにならないのだが……。なにせ、将軍級ともなれば、魔族においては最強の証明に他ならない。まぁ、それでもやっぱり将軍級にも、ピンからキリまでいるのだが。


「あれ以上の実力者なんて、三つ目のところにも普通にいるでしょ? なんでさっさと排除しないわけ?」


 連合軍右翼は、基本的には三つ目の管轄だ。逆に、左翼はヌエの管轄である。下手に連携を取ろうとしても上手くいかないのは目に見えているので、あらかじめ別々に分けてからレライエに指揮を取らせている。

 とはいえ、魔大陸の常識的に、魔王に対してレライエが命令できるはずもないので、基本的には戦い方は個々にお任せである。レライエがするのは、いざというときに撤退の指示を出す事だけだ。

 だが、その右翼を任せているはずの三つ目のところで、ダラダラ小競り合いが続いている。排除できない相手でもないのに、いつまでも戦闘に決着がつかない。見ている方としては、実にイライラする展開だ。


「恐らくは、実力者を温存しているのでしょう。この戦局における中盤戦は、いかに敵の実力者を消耗させるかが主眼に置かれています。無論、魔大陸の戦争が、すべてこうというわけではございません。序盤戦は大方同じようなものですが、中盤戦には様々な形態がありますので、今回はこうなったというだけの事なのですが……」

「つまり、消耗合戦になったから、実力者を温存したくて、引っ込めてると。そんで、実力伯仲の者をだしたから、なかなか決着がつかないと……。はぁ……」

「恐らくは……」


 消耗合戦の目的は、敵の主力の体力や魔力を、決戦前に削るというものだろう。

 今が中盤戦だとすれば、このあとにある終盤戦は、両軍の最高戦力をぶつけ合う、総大将やその側近たちの一騎打ちだろう。その際、パンチ一発分、魔法一撃分の消耗が、勝敗を分ける事というのは、その者たちの実力が近ければ近い程、あり得る話だ。

 だからこそ、ザーとかいう敵はこちらの本陣近くまで、無理をして突っ込んできたのだ。こちらの最終戦力を引っ張り出して、消耗させる為に。

 そして、そこまで攻め込まれたなら、敵の思惑に乗ってさっさと実力者を出して排除するべきだ。ダラダラと引き伸ばせば、結局打てる手が減っていく。

 王手飛車取りが不可避なら、さっさと飛車を差し出すべきなのである。


「だってのに、あのアホ……」


 頭が弱い事でおなじみの三バカ魔王の一人は、ザーと呼ばれる中途半端な実力の敵に煩わされて、身動きが取れなくなっている。幸い、右翼方面には今、ベルベットとアルルという、広範囲殲滅の鬼みたいなタッグがザーたちの後方にいるので、そちらから攻められる心配はないのだが、そのせいで敵に対する対応もおざなりになっているように見える。


「アムドゥスキアス様! レライエ様より念話が届いております!!」


 そこで、駆け寄ってきた兵士が、大声で僕に告げる。大声なのは、屋外なのと距離が結構離れている為だ。そこで、親衛隊にイヤリングを渡した兵士はビシッと気をつけの姿勢のまま待機し、親衛隊の者から僕はイヤリングを受け取る。実に面倒臭い手続きだが、まぁ必要な事なのだろう。


「もしもし、こちらキアス。どうした、なにか問題か?」


 まぁ、さっき別れたばかりなので、その可能性は低い。なにより、僕等は戦場を俯瞰しているので、補給部隊に位置付けられているウチの軍に、なにも起きていないのは文字通りの一目瞭然だ。


『いえ、問題が発生したのではなく、少々御願いしたき義がございまして御連絡申し上げました。御手を煩わせてしまい恐縮の至りにございます。キアス様の創設された部隊を、ここで活用してみたく思うのです。とはいえ、実験も兼ねて創設され、まだまだ実戦に投入するには尚早な部隊であるのも重々承知でございますれば、キアス様の御判断を仰ぎたく……』

「それってさ、第十二魔王軍方面で戦ってる、ザーとかいう敵にぶつけるって事?」

『ッ! 御明察の通りにございます。キアス様は母上と違って、説明する手間がなくスムーズな意思伝達ができるので、配下としては非常に助かりますね。して、実験部隊の実戦投入、いかがでございましょう?』

「うーん、そうだなぁ……」


 僕はそう言って、ホログラムのような画面に映し出された、ザーとかいう敵を眺める。

 スキンヘッド(というより、元から髪の毛が生えない種族なのだろう)の頭頂に一本の角が生えた、一つ目の巨人。サイクロプスの魔族である、敵将ザー。

 多少豪華な真新しい軍服に身を包み、巨人の巨躯を思う存分駆使して肉弾戦を行う彼は、なるほどかなりの腕前だ。しかも、近接戦のみかといえばさにあらず、遠方には一つ目から空気のようなものを飛ばして攻撃している。さらには、地面に落ちているものを適当に投げつける事でも、離れた場所に攻撃をする。

 外見とは裏腹に、意外と器用な男だ。

 たしかに強い。しかしやはり、ウチの幹部であるロロイ、アルル、バルムの三人衆には及ばないだろう。ある程度の強者を投入すれば、さっさとケリがつくはずだ。


 だが、問題なのは、実験部隊の面子は基本的に、ゴブリンしかいないという点である。いうまでもなく、サイクロプスとゴブリンでは、種族としての差はオオカミと野ウサギ程も違う。しかも、ザーは将軍だ。実力差はさらに開く事となる。

 運用はレライエに任せるので、きっと安全に使ってくれるだろうが、一抹の不安があるのも事実。とはいえ、ここで実戦に投入し、その戦闘データが取れると、今後の運用的にも有用だというレライエの判断もわかる。

 やはり問題は、部隊員の安全のみだ。なら、それを言い含めておけば、実戦投入も大丈夫だろう。最悪、成果がなくても、被害さえなければ問題はない。

 いつまでもあそこでウダウダやられるのもウザいし。


「うん、部隊の安全を最優先にし、機材を敵に鹵獲されないよう留意するなら、実験部隊の実戦運用を許可する。指揮は任せるよ」

『は、必ずや、全員無事に御返しする事を御約束いたします。妾の我が儘をお聞き届けいただき、感謝の念に堪えませぬ。御期待には、必ずや成果でもって御返しいたしまする! では、失礼いたします——』


 レライエにしては手短に通話が終わり、僕はイヤリングを外して親衛隊員に手渡す。彼から先程の兵士に手渡されるだろう。


「キアス様、実験部隊というのは我々が耳にしてもいい事なのでしょうか? もし耳目を閉じておいた方がいい事柄であれば、命令して忘れさせますが……」

「ん? ああ、いや特別秘密の部隊ってわけじゃないよ。実験部隊っていっても、今回の戦争で大活躍したから、正式な部隊として使われるのは、ほとんど確実だしね」


 神妙な顔で聞いてくるアリス君に、僕は気軽に答える。

 もしかしたら、重要な機密を耳にしてしまったと考えたのかもしれないけど、実験部隊の存在はそこまで秘密ではない。既に半分運用しているような状態なので、知ってる者は知っている程度の部隊だ。


「大活躍……。レライエ様の部隊で、昨日の奇襲で勝利した者等の事でしょうか? しかし、別段特殊な部隊などなかったように思われるのですが……」


 だが、実験部隊の実態を知らないアリス君は、首を傾げつつ、そんな的外れな推測を述べる。そんなアリス君に僕は、先程色々と教えてもらったお返しに、得意顔で説明する。


「いや、あの戦いには参加してないよ。というか、これまで戦いには参加してない。これからも、基本的には戦闘に参加しない部隊なんだ」

「戦闘に参加しない部隊……? なのに活躍、ですか?」

「いや、別にクイズやなぞなぞじゃないから先に答えを言うけど、実験部隊はただの機械化部隊の事だからね。これまでは、円盤なんかで地上に降り立つと、運転や見張りの為に最低一人は戦闘に参加できなかっただろう? そういう、物資や人員の移動を担う、魔道具運用専門の部隊を作ったってだけの話なのさ」


 要は、運転手やパイロットが所属する、運送屋である。

 戦闘は他の兵士に任せて、マジックアイテムを使った移動が主任務となる予定だ。今回の戦争でも、物資を味方に届ける為に大活躍しているのだが、実験部隊ゆえに人員が少なくて手が足りないので、従来通りに他の兵士も物資の運搬は担っている。だからアリス君も知らなかったのだろう。

 さらには、今現在運用しているものよりも、高度なマジックアイテムの運用も見越している。今はユーザビリティに配慮した、ゴーカートレベルの簡単操作で動かせるマジックアイテムばかりだが、できる事ならもっと複雑な機能を持たせたい。

 しかしそうなれば、当然ある程度高い運転技術が要求されるようになる。そういった将来の為に、あらかじめ専門の技術者を育成しようと目論んでいるのだ。

 それによって、安全性や運用の効率が改善して、さらなる成果が見込めるうえ、魔族のおバカもちょっとは改善するのではないかと思うからだ。

 しかもこの部隊は、本来戦争に使わない人材である、下級魔族をメインに構成しているので、軍の負担という面ではかなり軽い。戦力となる魔族を引き抜く必要がないので、レライエも大絶賛の部隊なのだ。


「ふむ……。しかし、輸送を主任務とする部隊なのですよね? この状況で、あの場所に投入するのですか?」


 アリス君が、第十二魔王軍の連中がまごついている方へと視線を向ける。肉眼では見えないが、そこではサイクロプスの魔族が猛威を振るっており、魔大陸の常識では、ただのゴブリンにどうこうできるような戦況ではない。

 とはいえ、僕だってこの状況で実験部隊を投入するのが、吉と出るか凶と出るのかはわからない。本当になにもできず、失敗で終わるかもしれないのだ。だが——


「まぁ、所詮実験だよ。失敗したら失敗したで、それはそれ。人材さえ無事なら、運用実験としては問題ない」


 これはなにも、実験部隊に所属するゴブリンたちの身を案じているわけではない。いや、案じてはいるのだが、それが全てというわけではない。なにせ、ここまで彼等を育てるのには、それなりの時間と費用がかかっている。そんな人材を、ただの実験の為に死なせていては、いつまでたっても人材育成なんて終わらない。

 ではなぜ、そんな危険を冒してまで戦闘を許容するかといえば——


「補給専門とはいえ、それがイコール無力な軍では困るんだ。敵に狙われちゃうしね」

「はぁ……」


 要領を得ないとばかりに頷くアリス君に、僕はいたずらっぽく笑いかける。


「まぁ、見てればわかるよ」




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