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 ツワモノどもが前夜祭・1

 できあがった巨大闘技場。その中に犇めく万を超える魔族と、たった一人取り残された俺……。

 ガラじゃねぇが、それでもなんだか心細い……。


『さて! さてさて! さてさてさてっ!!』


 そんな、俺含め、誰一人としてついていけない展開を知ってか知らずか、キアスは朗々と語る。


『察しのいいものはもう気付いているだろうが、それでも形式上、これからなにをするのか、僕直々に説明してやろうっ! 武闘大会であるっ!!』


 …………。

 いやおいっ! 『であるっ!』じゃねえだろっ!? なんでいきなり、戦争が武闘大会になるんだよ? 意味わかんねーし、誰一人納得しねーだろ?


『ちなみにこのエリア魔法は、発動させたが最後、トーナメントの勝者が決まんない限り、外にはでっられませぇーん! 他の方法での脱出は不可。そもそも、会場の破壊そのものが不可。それどころか、《試合》以外での暴力行為もろもろが不可能なので、体力と魔力と精神力の無駄遣いはオススメしないよ。まぁ、やるってなら止めないけど、それを敗北の理由にするような、情けない真似はしないでね。

 つまり、これからここでは、否応なく古式ゆかしい少年バトル漫画の王道、武闘大会編に突入するわけだ。天下一武◯会とか暗◯武術大会とか裏◯闘殺陣みたいなやつね』


 どうでもいいが、キアスのその軽すぎる口調にイラっとくる。それは、この戦場――――というか、今や会場になったこの場所に収容された連中、全員が頷くところだろう。なんぜ、真剣に戦争してたら、いきなりそれを、遊び半分みたいな大会にされたのだから。

 だが、空気の読めないキアスの野郎は、なおも明るく続ける。


『さぁさ、細かいルールなんかは、後任に引き継ぐんで、そっちに聞いてほしい。僕から伝えなきゃならないのは、あと二つ。この大会の賞品と、大会の名前だ。


 この大会の優勝者には、オリハルコンの武具一式を贈呈する。勿論、第五魔王軍に属す者や、アベイユさん本人でもね。あ、黄金重歩兵団のみんな、心配しなくて大丈夫だぞ。君たちにも参加する利点はある。なにせ、これは貸与ではなく贈与だ。つまり、今はただオールから借りているオリハルコンの武具も、この大会で優勝すれば、正真正銘自分のオリハルコンの武具を手に入れるってわけだ。あ、勿論、黄金重歩兵団以外のみんなにも、同じように贈与扱いだから、その実力を存分にひけらかしてくれ』


 オリハルコンの武具が賞品と言われたあたりから、魔族連中の反応に変化が現れた。あからさまに興味を示し始め、それまでキアスの言葉に呆れや怒りの態度をみせていた者の中にも、その雰囲気を薄れさせて、飢餓にも似た欲望を発露するやつもいる始末。

 やっぱキアスの言った通り、魔族のこの、オリハルコンに対する感覚ってのは、人間のそれとは違うんだと実感する。

 キアスが話し始めてから、時間を追うごとに薄れていく戦争の空気。しかし、それをよしとできない者がいた。




「これはどういうつもりだッ!!」




 まぁ、説明するまでもなく、第五魔王である。

 蜂特有の、あの耳に残る嫌な羽音を響かせて、上空に浮遊した第五魔王。さらなる上空に遊弋するキアスのマジックアイテムを睨みつけながら、その怒声はまるで地面を震わせるかのごとく、周囲一帯にまき散らされた。


「第十三ッ!! アムドゥスキアスッ!! 貴様、いくさに生きる全ての戦士を愚弄するつもりかッ!?」


 第五魔王の、ある意味尤もな言葉に、緩みかけていた緊張感が戻ってくる。しかし、それを台無しにするかのように、キアスは飄々と答える。


『おや? てっきりアベイユさんは気に入ってくれると思ったんですがねぇ、この趣向。バベルに来たときも、楽しそうに闘技場で遊んでたじゃないですか?』

「それとこれとは話は別だ!! 戦とは、切迫し、逼迫した死の瀬戸際。生の隣に死があり、生き抜く事は薄氷を履むかのごとく、死に方の選べぬ弱者は意味もなく、選べる強者もまた、別なる強者によって華々しくその命を散らす。度し難く、愚かしく、生産性など皆無の、ただただ原始的な闘争心の巷。しかし、だからこそ美しく、だからこそ尊い、生物の生物たる根元の姿だ!!

それを貴様は、このようなまやかしで糊塗し、物欲を煽って陳腐化させる……ッ!! 恥というものを知らんのかッ!?」


 まさに、怒髪天を突くような勢いでその怒りを語る第五魔王。たしかに、この第五魔王の言い分は、頷けるところがないでもない。

 真大陸にも、戦という場所に生き甲斐を見出し、そこに美学を求める戦士ってのはいる。最近でこそ、戦争が少なくなってきて見なくなったが、少し前までは真大陸でもこんな戦闘狂はよく見かけたものだ。ああ、アレだ。アムハムラ王とか、結構そんな感じ。

 そんな連中にとって、キアスのこの行いは、自らの存在意義そのものを軽侮し、嘲弄されるようなものなのだろう。

 とてもとても、許容できるものではないだろうし、強要されても素直に頷けるものでもないのだろう。

だが、それでも、本当の本当に、私見かつ、勝手な物言いをさせてもらえるならば――――




『「くっだらねぇぇぇえええ!!」』




 おや、どこかの魔王と被っちまったな。




『ダンジョンの魔王は最弱っ!?』五巻、十一月十七日発売です。


 勇者がいっぱい登場したり、魔王がいっぱい登場したりします。うん、多かったですね……。もう少し間隔をあけて登場させればよかった……。

 ともあれ、五巻で光の勇者とゆかいな仲間たち(笑)のイラストが全員揃うみたいですね。お楽しみに。


 あ、できますれば、内容の方もお楽しみにしていただければ幸いです……。

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