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 陰陽五行と四大元素っ!?

 四大元素は、火、水、土、風からなる、世界の全てがその四つの元素で構成されているとする理論。そして五行は木、火、土、金、水からなる五つの元素で世界を説明してみせるもの。五行の方が、単純に一元素多い。これを魔法の元素の概念として使うのは僕も一瞬考えたのだが、残念ながらこの世界の土魔法は土気と金気の性質を両方持っているので、新しい魔法を作る意味がなかったのである。

 さて、ではサージュさんの言う『金気術』が司る、雷が五行で何に属すのかといえば――


 「『木気』です」


 「――――…………。……しにたい……」


 顔を真っ赤にしたサージュさんが、顔を俯けて恥じ入るように呟いた。まぁ、結構な人数に聞かれちゃったからな。


 「五行なら、ちゃんと相生そうじょう相剋そうこくを理解しててくださいよ……」



 「うぇ? ……ご五行相乗と……五行相克やよね! うん、うん。覚えとる、覚えとる」

 「木火土金水。木生火、火生土、土生金、金生水、水生木が五行相生。木剋土、土剋水、水剋火、火剋金、金剋木が五行相剋ですよ。本当に憶えてますか?」

 「えー……、ああ……、うん……?」


 絶対知らなかったな。まぁ、勉強するために使った資料が僕の造ったものなので、そのせいで不勉強だったのかもしれないな。

 僕がこの陰陽五行を魔法の新元素として扱わなかったのは、わざわざそんな事をしなくても土魔法で土気と金気、風魔法で木気を代用できているからだ。


 「なんで木気が風魔法やねん!? 木気なら木やろ!」

 「木の葉が揺れて風が見える。稲妻が木に落ちる。自然界にある目に見えない物は、だいたい木気なんですよ」


 図にするとわかりやすい。木火土金水を相生の順に時計回でに五角形に配置すると、相剋が五芒星を描く。陰陽五行と言えば、この図式だ。あ、有名なのは太陰対極図の方かな。


 「よーわからん」

 「わかりやすいのはこの前の戦闘です。サージュさんの『木気術・・・』で偽勇者を攻撃した時、鎧を着たトロワを避雷針にして金髪が回避したでしょう? 金気で木気を剋したわけです」


 因みに、偶然だが土気に属する土魔法を持っていたトロワが、木気術でダメージを負った訳だ。まぁ、同じく木気に属していたドゥーもダメージを受けたので、やはりただの偶然だろう。


 「……ああ、あそこにいた冒険者全員が、ウチをわろうとる気がする……」

 「大丈夫! 陰陽五行思想の書物なんて読んでる人、冒険者にいるわけないじゃないですか。ここにいるみんなが口を噤めば、誰にもわかりませんって!」

 「もしくは、シュタールの口を封じるとか……」

 「大丈夫! シュタールには今の話、欠片も理解できた内から!」

 「ああ、うん。キアスもサージュも、何言ってんのか欠片もわからねえ」


 羞恥のあまり、突拍子もない事を言い出すサージュさんを慌てて止め、僕は続ける。


 「さて、『木気術』はそれでいいとして、陰陽五行を魔法に取り込むってのは悪くないと思うんですよ、僕は」

 「でも、キアス君かて陰陽五行しっとって魔法にせんかったんよな?」

 「そうですね。ただ、今回サージュさんが『木気術』を生み出した事で考え方が変わりました。『木気術』――いえ、『五行術』は体系として確立させる価値がある」

 「……そこまで言い切る根拠は?」


 「相性です!」


 属性の相性。水は火に強い、みたいな単純な属性の相性。陰陽五行はそれが明確なのがいい。実は既存の魔法には、そういった相性というものが存在しない。


 「水の魔法が火を消すのに役立つのは事実だが、風の魔法でも吹き消せるし、土の魔法でも消せる」

 「せやな。小さい火を確実に消すんなら、土で覆うんが一番やな」

 「そう。しかし、これを五行説で解釈するなら、火は灰となって土へ還った。つまり火生土。水で火を消すのはそのまま、水剋火となる」

 「割と何でもアリなんやなぁ。そんなんで、相性確立したって言えんの?」


 サージュさんの質問に、僕は自信をもって頷く。


 「はい。だって、今の魔法って強い人が強いじゃないですか。相性とかあまり関係なく、ただ魔法出力が高く、魔力の多い人が強い。それが『五行術』なら魔法の能力が低くても、相性によって魔物や対人で有効に使用できます」


 とはいえ、劇的な変化という程のものではないだろう。少なくとも、現状の四大元素の魔法から劇的に威力が増す、という事は無い。ただ……――


 「ああ、成る程……。……うん……。うん、うん! わかった! キアス君が言いたい事!

 今の魔法は火魔法が燃焼という現象、風魔法が気体、水魔法が液体、土魔法が固体いうんが特徴や。土魔法は物質であるがゆえに防御に強く、また、戦闘以外での利点も多い。不可視の風魔法は攻撃、奇襲に優れる反面、逆に戦闘以外での利用価値が低い。単純な威力では火魔法の燃焼が強力で、これは戦闘も戦闘以外でも結構利用価値の高い魔法や。水魔法は水なら空気中からやろうと、固体であろうと利用できるけど、操れるのは水だけやね。そんかし、水っちゅうんは生物、非生物、土地、空気に深く関わる元素や。それを操るっちゅうんは、結構な利便性を持つ。どれもこれも、魔法っちゅうんはすごい事のできる技術やけど、相性と呼べる程の優劣はあらへん。あるのは状況に置ける利便性のみや。今あるアンチマジック、対抗魔法もそういった視点からは作られとらん」

 「そこなんですよ、サージュさん」


 僕が、それだとばかりに指をさすと、サージュさんも心得たとばかりに頷く。


 「うんうん、わかっとるわかっとる。キアス君が言いたいんは、攻撃やのうて防御、相性によって効率的に魔法を阻む術が『五行術』にはあるゆーんやな?」


 そう、劇的ではないかもしれないが、『五行術』はより効率的な対魔法運用ができるのではないか、と僕は考える。


 「ええ。四属性の魔法も、『五行術』で防御できるとなれば、言う事はありません。あるいは、現状不可能とされている、闇属性の魔法の効率的な防御法も確立できるかもしれません」

 「うわっ! それは気ぃ付かんかった! 研究者として飛びつかんわけにいかん話題や!」


 うん、この分野はこれから開拓されていくにふさわしい分野だと思う。僕の理想としても、この世界を地球のような物質文明にするのはあまり気の進まない話なので、魔法文明を確立させる為にも、多彩な魔法の開発には力を入れていきたい。


 「さて、では『五行術』は一先ずこれでいいでしょう。四属性と同じで、これにも適正が必要な事はわかりましたし、研究には多くの魔法使いの協力と、研究者と、時間が必要です」

 「せやな。ウチの適性は、どうやら木気だけのようやし、土魔法の適性が『土』なんか『金』なんかは研究を重ねないとわからん。ウチの弟子たちも総動員して、まずは『五行術』のとっかかりをつかまんと、これ以上の話にならん」

 「では、次に『魔方陣魔法』と『歌唱魔法』について聞きましょうか――と、言いたいところですが急用があります」

 「えーーー、またお預けなん? キアス君の意見聞きたいー」


 駄々をこねるサージュさんに、僕はキッパリと言い放つ。これは、今じゃないといけない案件なのだ。




 「僕はお風呂に行きます!!」

 「よっし! ウチも行こう!」




 早くしないと、女性陣が上がってしまう。





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