戦争という政治っ!?
「とはいえ、あくまでも今回の戦争に限り、という事になるがな」
「でもお前、戦争なくしたかったからここにダンジョン造ったんだよな?」
そう、一見僕の行為は神様からの依頼を放棄するに等しい行いだ。だが、それでも今ここで戦争を起こしておく事には、様々な利点がある。当然、被害は最少に抑えるつもりだが、それでも少なくない死者が出るだろう。
だが、これは真大陸と魔大陸との争いではない。僕が神様から依頼されていたのは、真大陸と魔大陸との争いを止める事である。
詭弁に聞こえるかもしれないが、真大陸と魔大陸が争わなくなったって、真大陸でも魔大陸でも争いがなくなる事は無い。いずれ、国同士、魔王同士で争いだすのは自明の理だった。だから、関係のない真大陸はともかく、魔大陸での戦争くらいには介入し、現実的で堅実的な着地点を提示する事が、神様の為にも僕自身の為にもなると思う。
まぁ、これを契機に武具を売ったり、衣料を売ったりで荒稼ぎしているのは事実だが、それはそれ、これはこれ。
実際、こういう戦争はこれからも起こるだろう。それらをすべて、僕一人で止める事は出来ない。神様だって、そこまでの〝お願い〟はしなかったのだから、それでいいと思う。それでいいと、勝手に思う。
「ここで戦争しておけば、ある程度僕が戦争を管理できる。後々起これば、どうなるかわからない。なら、僕が戦争に介入して、戦争の規模を小さくさせればいい」
「戦力はあるのか?」
シュタールの顔にはどこか釈然としない色がうかがえたが、それでも余計な口出しはしないようだ。
「戦力は足りないが、それを言っても始まらない。無きゃ無いで、やり方ってのはあるのさ」
「ふーん」
「それよりも、何でお前は僕の造ったコピスとコピシュ持ってるんだよ? それ、僕のコレクションなんだぞ?」
ヒヒイロカネのコピスとコピシュは、僕が僕の為に造っていたコレクションだ。オリハルコンのコピスとコピシュはどうしたんだよ?
「ああ、アンドレさんにもらった」
「またあいつは……」
まぁ、あいつのおかげで助かったのであろう事は想像に難くないので文句はないのだが。だからって、僕のコレクションを勝手に渡すなよな……。
『はんっ! 何を言うかと思えば。トリシャ、レライエ、コーロンの武器を造って、いの一番にその二振りを造っておいて、何がコレクションですか。どうせ、その内そこの勇者に渡すつもりだったのでしょう?』
………………。
「おはよう、アンドレ……」
『おはようございます、マスター。案の定こんな事になってしまい、とても残念です』
残念です、とか言いながら『ほれ見た事か』というニュアンスを感じる……。まぁ致し方ない。鬼の首は取られてしまったのだから。
『それと、勇者連中に対して照準してた強制転移ですが、マスターが覚醒した今、警戒レベルを一段階下げても良いと思われます。どうしますか?』
「ああ、通りで人がいないと思ったら、アンドレが僕の係だったんだ」
そりゃあ、アンドレが言ったら、みんなも勇者連中に僕の看病を譲っちゃうよな。
「なんや、怖い事言われたような気するな?」
「サージュ、アンドレさんに逆らっちゃ駄目だぜ?」
ほら、勇者連中のアンドレに対する評価もコレだ。
『それと、魔人がまた一人誕生しました。今はパイモンと一緒に行動させていますが、後で名前を付けてあげてください。また地下迷宮は、そこの勇者の影響でしばらく魔人が生まれそうにありません。これからは地下迷宮に侵入者も増えるでしょうし、あそこで人材を育てるのはしばらく無理ですね。しかし、魔人を生み出す方法は有用です。新たに蠱毒の迷宮を造ってもいいかもしれませんね。幸い、あの偽勇者と龍共のおかげでエネルギーは十分にあります』
「いつになく上機嫌ですね、アンドレさん……」
僕はげんなりしつつも、他の人にコイツは任せられないのでそう呟いた。
『色々と、急がなければならない案件が立て込んでいますから。用済みですので、とっとと勇者連中も追い出さなければなりませんし』
着せろ着せろ。もうちょっと、歯に、衣を!
「ちょい待ちちょい待ち! ウチかてキアス君に用あるんやて。新しい魔法もキアス君に役立つよって、話だけでも聞いてんか?」
と、アンドレの用済み発言に慌てて反論するサージュさん。そういえば、革命から帰ってきてからと思っていたが、今は色々と丁度いいか? アンドレも、それならばと何も言わない。
「そんでそんで、金気術はもうええな? 次の――」
「――いいえ、まずはその金気術から話しましょうか?」
そう、あの金気術だ。雷を操り、速攻と生命に対する威力が絶大そうな、サージュさんが編み出した新たな魔法。あれには、重大な瑕疵がある。それは――
「あの金気術、操ってるのは金気じゃないですよ?」




