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 対決っ!? 偽勇者っ!!


 『開幕一発目っ!?』から『覚醒っ!?』までを書き直したものです。

 話の流れそのものは変わっていませんが、色々と修正したり書き直したり書き足したりした話です。


 細かい部分を修正した話なので、『覚醒っ!?』の続きは次話となってます。飛ばして読んでも齟齬はあまり無いですので、細かい部分を気にしないという方は、次話から続きをお楽しみください。





 「つーかよォ、そのチビってなんなワケっ!?」


 あ゛っ!?


 「よくわかんねーケド、偉そうだし、後ろに神の敵ゾロゾロ従えてる感じだし、まさかクソ魔族? って、んなわきゃぁねぇよなぁ!? んなちっさくて、んな弱そうな魔族なんかいるわきゃぁねぇっての! 俺様、ちょっと反省っ!」


 よし、アレだな。

 別に僕が戦う必要なんか無かったんだけど、コイツは今ここで殺しておこう。

 思いは同じか、パイモンは静かに神鉄鞭に手をかけ、フルフルは何故かぶわっと水色の髪が広がる。マルコとミュルは、僕にもわかるぐらいに獰猛な殺気を放ち始め、今にも襲いかからんばかりにそのボルテージを高めている。


 実を言うと、僕にだってこいつらに蟠りくらいある。以前ソドムに侵入し、冒険者ゴンドーを殺したのはこいつら勇者部隊だ。死体や、動かない奴等をタイルが生体実験や解剖に使ったり、枢機卿を暗殺したり、落書きしたりと、こちら側もかなりの復讐行為は行っていたが、僕個人としての報復は後回しになっていた。

 こいつら偽勇者は、僕の街で殺人を犯した者の仲間。そしてその行為は、僕の誇りを汚すものである。


 まぁ、ロードメルヴィン枢機卿がこれから何をするかも気にかかるし、他に思惑が無いでもないが、今この場では僕の復讐心が優先である。


 「つーわけで―――」


 僕はこれ見よがしにハルペーを抜く。ヘラヘラと笑っていた金髪も、他の偽勇者も一気に臨戦態勢だ。

 無論、僕の後ろでは仲間達もとっくに臨戦態勢。


 「―――一番槍、もーらいっ!」


 ―――言うが早いか僕の姿はその場から消える。


 もちろんこれは、僕が目にも止まらぬ速さで動いたわけではなく、転移の時空間魔法である。

 連続転移軍靴(いだてん)を使えるように、予めこの付近一帯にマーキングしていたのである。それくらいの保険は必須だと、アンドレやパイモンに言われている。


 奴等の背後に現れた僕は、そのまま金髪に斬りかかる。


 「おわっ!?」


 あわやこれで終わりかと思ったが、金髪は難なくこれを避け、数瞬の内に剣を抜いて逆襲の体制を整える。所詮僕の戦闘力なんてこんなもんだ。戦闘力たったの5か、ゴミめ。


 「おもしれぇじゃねぇか、クソドチビ! オラァ! 次のかくし球出しやがれ! じゃねぇとあっさり死んじまうぞォ! コラァ!?」


 体捌き、足捌き、剣捌き、どれも見事にこなし、とても僕に対抗できないような金髪の剣技が迫る。


 ―――だが。


 「がぁあ!?」


 ―――金髪は背後からの一撃を受け、僕の隣を吹っ飛んで雪に埋まる。

 僕が転移したと同時に動いた、パイモンによって。


 「貴様の言動は非常に不愉快だ。キアス様を愚弄する者は、例え誰であろうとこのパイモンが生存を許さぬと知れ」


 カッコいい………。

 普段は物腰の柔らかいパイモンも、敵にはこういう言葉遣いもするんだな。

 金に光る神鉄鞭を両手に携え仁王立ちするその姿は、まさに戦士そのもの。凛々しい顔も、その王子様性質も相俟って、まさしく騎士って感じだ。


 「ちょっとぉ、アンだけ独り占めはズル―――」


 『―――いんじゃ』という言葉の余韻だけ残して、少女の姿が消える。

 一瞬で入れ替わるようにそこにいたのは、手から血を滴らせたマルコだった。聖騎士達が必死で雪かきした後の雪山が吹き飛び、恐らくそこに少女が吹き飛ばされたのだろう。

 そこにさらに、追い討ちがごとくフルフルがプッシュナイフをこれでもかと投げ込む。踊るように変幻自在の体を伸ばし、カタパルトのように次々とナイフを飛ばす。普段もあざといまでに可愛らしいミュルだが、その姿にはいつもと違う華麗さや清廉さが見て取れるような気がした。まぁ、毒持ちだけど………。


 「あらぁ? ご指名はお子様2人ぃ? ドゥー的にはぁ、あっちの黒鬼のお兄さんが好みだったんだけどなぁ〜」


 しかし、相手も伊達に勇者を名乗ってはいないらしい。いつの間にかマルコとミュルの背後に現れた少女。お腹の辺りの服が破けてはいたが、そこに傷はない。いつあの雪の山から出てきたのかもわからなかった。

 そう上手くもいかない、という事か………。


 「まぁいっか! 楽しめそうだしぃ、ドゥーもちょっと本気で遊んじゃうよっ!」


 そうして、ドゥーと名乗る少女とマルコ&ミュルの戦いが始まった。


 見た目通り魔法を駆使して戦うドゥー。無属性魔法の結界、風魔法、回復魔法、身体強化魔法、時空間魔法と、多彩かつ高度な魔法を使い、マルコとミュルを翻弄する。

 結構強いぞ、この子………。

 ロードメルヴィン枢機卿に聞いてはいたが、以前街を襲った偽勇者連中とも一線を画す実力だ。あるいは、マルコとミュルには厳しい相手かもしれないな………。


 「やれやれ………。私としては、まず始めに任務を片付けてしまいたいのですが………。とはいえ、どのみち口封じは必須ですからただ順序が入れ替わっただけですがね。

 それに、私としてもあなたと戦うのはやぶさかではありません。愛らしい顔も、美しい髪も、蠱惑敵な肉体も、私の好みです。是非あなたを殺してみたい」


 「うぅ〜、き、気持ち悪いの………」


 フルフルの気持ちもわかる。

 長身の包帯男と相対したフルフルだが、男の言動にやや及び腰になっている。それもむべなるかな、包帯の上からでも、舐め上げるようにフルフルの肢体を吟味し、口端を吊り上げているのがわかるのだ。正直、生理的に受け付けない感じのキモさだ。

 つーか、僕のフルフルをそんな目で見てんじゃねぇよ、この変態が!


 雪から出てきた金髪とパイモンがキンキンと剣戟の音を打ち鳴らし、ドゥーが派手に魔法バトル。フルフルと包帯男が対峙して、聖騎士共が役立たずとなれば………。


 「………………」


 僕の相手は自然とこの巨漢になってしまう………。つーか、完全にミスマッチだろこれ!? どう見たってこいつの相手はパイモンがベストじゃねーの? まぁ、だからって僕が金髪を抑えられるワケじゃないんだけど………。


 「恨みはないってワケじゃないけどさ、ぶっちゃけ君達の事も、ロードメルヴィン枢機卿事も、たいして重要じゃないんだ。僕にとってはね」


 「………」


 ヘラヘラと笑いながら、僕はその巨漢に近付く。右手にはハルペーを持ったまま。


 「だからさ、これって言わばただの八つ当たり。君達のお仲間が僕のポリシーを傷つけた、八つ当たりさ。

 だからまぁ、悪いんだけどここで死んでくれないかい?」


 「………」


 ん? 何か、黙りっぱなしだぞこの人………。


 「つーわけで、邪魔の入らない場所まで移動しないかい?」


 「………」


 おい。


 「あ、あのー………、………。じゃ、じゃあ! こっちね! ホラ、行くよ!」


 「………」


 イルァ………ッ!

 いい加減にしろよ、この無口キャラ!!

 口上を無視されてるようで、かなり恥ずかしいんだぞこっちは!!


 憤りを抑えつつ、僕はてくてく指定した場所まで歩こうとそいつから視線を外した―――

 ―――ドッ………。

 その瞬間、すかさず僕の肩の上に鈍色の刃が降り下ろされた。

 バトルアックスの大きな刃に写り込む自分の顔と目が合う。そして目の前の巨漢にもう一度視線を向け―――


 ―――僕は笑う。




 「今、何かした?」




 僕の顔より大きな刃を持つ近接戦闘の雄、バトルアックスは、その役割を全く果たせず僕の肩に乗っていた。


 「………ッ………!」


 咄嗟に飛びすさる巨漢。

 おーおー、ようやく人間らしい感情が顔に浮かんできたじゃねぇか。それでこそだよ。

 目一杯ベソかかせてやんぜ。この、無口キャラ殺しのエリア魔法。




『|スゥインドラーズ《間抜けな詐欺師の決闘法》』でなっ!!




 ○●○




 小さく間を開けて対峙する僕と巨漢。何が起こったかわからず、不審な目を僕に向ける巨漢と、ヘラヘラと笑う僕。


 本当はもう少し皆から離れて使いたかったな。

 僕は念のためエリア魔法を張り、ここを離れたら解除するつもりだった。そうやって、仲間がこの『スゥインドラーズ』に巻き込まれないようにするつもりだったのだが………。

 ただまぁ、こうなってしまった以上は仕方がない。

僕がとっとと目の前の巨漢を倒してしまえばいい話だ!


 「とぉー、りゃっ!」


 僕はまっすぐに巨漢に飛びかかり、ハルペーの一撃を見舞う。

 何かと雑魚扱いされる僕ではあるが、極振りされた素早さはそこそこある。一般人や重戦士相手には、ひけをとらない程度には動けるのだ。


 僕のハルペーは、中空に金色の軌跡を描いて無口の巨漢へと向かう。


 ガキャッ!!


 と、耳の痛くなるような音を奏で、巨漢の盾が振り下ろした僕のハルペーを阻む。


 盾とハルペーを構え、僕と巨漢は静止する。が、それも一瞬。僕は振り下ろしたハルペーの向きを、盾の上を滑らせて下方向から横方向へと変える。

 上を向いていたC字型の刀剣の弧は、盾をその弧内に食い込ませたまま水平を向く。そのまま、外へ向けて力を加えると同時に、鎖袋からショテルを引き抜く。

 戦斧の十八番の技を奪ってやった。奴の持つバトルアックスなら先端のピックで突けば、ここでほぼ試合終了だが、生憎と僕のハルペーは刺突には向いていない。

 そこでショテルの出番だったわけだが、一瞬盾をそらされそうになった巨漢が、すぐに力ずくで元に戻してショテルを防ごうとする。力比べになったら僕が不利。逆にハルペーを盾に引っ掛けられ、僕の方が体勢を崩されかねない。

 なので、僕もショテルを戻して反転。ハルペーを盾から外して飛びすさる。


 両手にハルペーとショテルを構えた僕と、前面に盾を押し出すように構えた巨漢。

 今度こそ僕らは静止する。


 中々やるじゃん僕!


 こんないかにもな屈強な戦士相手に、そこそこ戦えてんじゃん! それに、狙いは過たず成し遂げられた!

 こりゃあ、最弱の称号は返上した方がいいかもな。もう、スライムより弱いとは言わせないぞ、アンドレ!


 まず動いたのは巨漢。ゆっくりと盾を戻すと、再びその武骨な視線がこちらを覗く。しかし、その視線にそれまでの無機質さは感じられない。

 驚き、警戒、不審。

 幽かにだが、それが窺えた。

 完全に盾を構え直した巨漢。前面に構えられていた盾が、体の左側に構えられる。それまで隠れていた、巨漢の上半身がようやく見えた。




 その鎧には、それまで無かったはずの、大きな傷が刻み付けられていた。




 しかし、鎧だけか………。できればもう少し深い傷を付けたかったな。奴の心に。


 「………どうやった………?」


 胡乱な眼差しをこちらに向けて、ようやく巨漢が口を開く。だが、こちらを無視しておいて、自分は質問に答えてもらおうなどという態度はいただけないな。


 「はっはっはっ!

 トリックを明かすマジシャンがいるか?手札をバラすギャンブラーがいるか?少しは自分で考えなっ!


 さぁさぁ、希代のトリックスター、アムドゥスキアスの舞台の開幕だ!」


 僕は、左手のショテルを逆手に持ちかて腰の後ろにまわすと、ハルペーの右手を左から右へ開いてお辞儀する。そう、丁度マジシャンのように深々と。


 ―――ドッ―――


 軽い衝撃に肩を見れば、そこには再び戦斧があった。


 何の躊躇もなく、僕がお辞儀したのを隙と見なして一瞬でりに来やがった。さっき後ろを向いた時といい、こいつ、マルコやミュルと同じくらい見境がないかも。

 それに意外と素早いや。少なくとも僕より。まぁ、巨漢の動きが遅いなんてのは、結構偏見だしな。


 普通だったら僕はここで殺されていたわけだが、残念ながら今は無駄だ。


 「狭量だねぇ。こういう隙は見逃すのが、強者の礼儀だぜ?」


 「………化け物が………っ!」


 心外だなぁ。それはミュルの代名詞であって、僕はあそこまでじゃないと自負してるね。


 退かれる前、ここぞとばかりに僕は剣を振るう。左のショテルが直接喉を狙うが、盾ではなくバトルアックスで受けられる―――が、そちらは囮。僕は下段から滑り込ませるようにハルペーで股間を狙う。鎧の場合、可動域の防備が薄い。特に股間は人体の急所であり、股関節にまで傷が達すれば最早戦闘どころではない。肉体的にも、精神的にも。

 だが、これも盾を下げる事で普通に防がれた。そして三度、僕と巨漢の距離が開く。

 やはり中々固い。当然のように僕の2ヶ所の急所狙いが防がれた。おまけに、もう1つの方は不発か………。


 「ではでは、ここからが僕のショータイム。ご堪能くださいな。この世の最後の楽しみに―――ッ!!」


 僕は再び駆け、ハルペーを振る―――と見せかけてショテルを振る―――というのもフェイントで、僕は飛び蹴りを放つ。

 あっさりと盾で防がれたが、その瞬間キンキンと音がして、巨漢のプレートメイルにさらに二条の傷が走る。

 1つは腕のガントレット、もう1つは胴鎧の背後だ。


 「………フェイントの………実体化………か」


 静かな声が盾の後ろから聞こえる。


 流石に気付くか。だが残念!この空間の本質はそこじゃあない。


 「―――ッ!!」


 僕は巨漢の背後をチラリと見ると、驚愕を表情に浮かべて咄嗟に回避行動をとる。横っ飛びに地面を転がり、巨漢から距離をとった。

 僕の行動を不審に思った巨漢も、とりあえず僕が離脱した事を確認し、背後に向き直り盾を構えた。


 この場には、僕らだけじゃなく聖騎士だっている。彼が警戒したのは、恐らくそれだったのだろう。

 1人の聖騎士が剣を振りかぶり、巨漢へ向けて振り下ろす。盾を構えた巨漢は、余裕を持ってその剣を受け止めようとしたが―――まるで盾をすり抜けるように、聖騎士の剣は巨漢へと向かった。


 「………ッ!?」


 目にも止まらぬ速さで回避して見せた巨漢は、しかしその見事な身のこなしに反して、焦った表情だった。


 何故なら、たった今斬りかかったはずの聖騎士はどこかへと消え失せ、鎧には深く傷が残っていたからだ。


 「………どういう事だ………? ………あんな技量の聖騎士等、いるはずがない………。………それに、いったいどこへ消えた………?」


 「おいおい、そりゃあいくらなんでも傲慢だろ? 俺たちゃ天下のユウシャサマだから、一般人じゃ敵わないってか?


 そうやって傲るから、足元を掬われるんだぜ?」


 実際、お前はこんな弱い僕に、いいようにあしらわれてんだ。自覚しろよ、この間抜け!


 再び駆ける僕だったが、今度は向こうも待ってはくれなかった。見かけからは想像もつかない速さで突貫してくると、その大きな盾で僕を弾き飛ばそうとしてくる。


 シールドバッシュ。


 盾という存在に縁の薄い日本人は誤解している者も多いが、盾というのは必ずしも防御だけに使われる物ではない。

 刃や棘の付いた、攻撃力を持つ盾は珍しくないし、力の強い者なら、こうやって武器ではなく人を弾いて隙を作ったり、また、武器に気を取られた者の爪先を盾で突き刺したりする技もある。

 下部の尖った盾というのは、基本この『爪先潰し』を想定したものだ。


 しかも、ただの張り手ですら、簡単に僕を弾き飛ばしそうな巨漢のシールドバッシュだ。普通に食らえば、意識を失いかねない衝撃に見舞われた事だろう。


 ―――だが、それも無駄だ。


 僕の身長ほどもあろうかという大盾が目の前に迫り、そして激突する―――が―――そんな衝撃は僕に通じず、額から盾にぶつかったにも関わらず、微動だにせず僕はすぐさま反撃に移る。


 「はい、いただきッ!」


 その大きな盾の後ろから、ショテルを滑り込ませて腕を狙う。この剣は、そもそもこうやって隙を突くための剣だ。


 「―――ッ!?」


 堪らず盾を逸らして後退する巨漢。しかし再びガントレットに傷が走り、今度は小さな血飛沫まであがる。

 ようやく傷らしい傷を与えられたらしい。いやぁ、硬い硬い。


 「………………」


 今回の攻撃はフェイントではない。確実に、死角から手首を取りにいったのだ。それでも通った攻撃に、いよいよもって巨漢の動揺が表情に浮かぶ。


 僕はきっと、嫌ぁな笑みを浮かべている事だろう。このスカした巨漢の動揺が、面白くて仕方がない。ややもすれば、咄嗟に吹き出してしまいそうな程だ。


 「ハッハァ!!

 楽しんでくれているかな、この演目を?」


 「………化け物め………ッ!」


 同じ台詞を繰り返す巨漢にため息を吐き、僕が何かを言おうとした瞬間―――


 「おあっ!?………ってありゃ?なんともねぇ」


 金髪の声が聞こえた。

 苦虫を噛む思いでそちらを見れば、やはりパイモンと金髪が結構近い距離で相対していた。

 どちらにもまだ傷はない。だがお互いの武器には明確な差が表れていた。金髪の持っていたそこそこの剣は、見るも無惨にボロボロ刃零れしていて、パイモンの神鉄鞭には傷一つ窺えない。まぁ、鉄鞭という武器は剣との戦闘と相性がいい。それに加えて、材質も、製造技術も、おまけに戦闘能力まで鑑みれば、ある意味必然の結果である。

 だが、そんな状況でありながら、動揺しているのは2人とも。パイモンも動揺しているのだ。




 ―――クソッ。やはり、エリア魔法を使う場所が近すぎた。




 状況から見て、恐らくパイモンが金髪に一撃見舞おうとしたのだろう。そしてそれは成功し、だが何の効果も無かった。それどころか、攻撃の反動すら感じなかったはず。ここは、そういう空間になっているのだから。


 納得いかなそうな顔で首を傾げながら、ポンポンと体を触る金髪。それを見て、巨漢が何かに気付く。すぐに自分のバトルアックスの刃先で自らの頬を傷付けようとするが、当然傷なんか付かない。


 そう、ここは通常の武器や魔法では、傷1つ付かない空間なのである。いわゆる、武器も魔法も使えない空間。『非殺傷結界』や『排他的茶会』に近いエリア魔法なのだ。


 しかし―――


 「―――ならばなぜ………」


 僕の攻撃は通るのか?


 さらに懐疑的な顔で僕を見る巨漢に、僕は不敵な笑みで答える。


 「どうしたどうした、勇者サマ!? お手々がお留守じゃござーせんか!?」


 ショテルを振るい、ハルペーを薙ぐ。当然巨漢は盾を構えてそれを防ぐ。何度か盾の上を滑った火花は、虚しい残響を残して消える。

 向こうはまだ、この空間での攻撃方法がわかっていない。だからこそ、こちらの様子を窺っているのだろう。


 と―――思っていたら来ましたよ攻撃。


 相手がバトルアックスを構えたと思ったら、気付けば胸の中央を先端のピックで突かれてました。スゲー、全然見えなかった。


 だが、当然その攻撃は通らない。僕はショテルを振るうが、今度はバトルアックスを持った腕で防がれた。激しい金属音はするが、きっと傷どころか衝撃すらないだろう。

 僕が弱いからではなく、エリア魔法の効果で。


 「………フェイントの………有無ではないのか………」


 ああ、さっきの攻撃、フェイント入れてたのね。気付かなかったわ。

 どうやら色々考えているらしいが、この空間の特性に未だにわかっていないようだ。ここは畳み掛けるべきだろう。


 「おやおやぁ?

 種明かしがして欲しいのかなぁ?」


 お互いの武器が届く距離―――というより、既に届いた状態で僕は話す。

 ずずいと相手に顔を寄せ、ニンマリ笑って告げる。


 「して欲しかったら自己紹介してみろや、無口キャラ。笑顔忘れんなよ?」


 そう言って離れる。向こうも無理に追っては来ない。追ってきても、カラクリがわからないんじゃ、有効打を与えられないと思っているのだろう。


 「………………」


 「………………」


 これでもダンマリかい。いい加減にしろ。


 「『狂戦士達の戦場』」


 巨漢の選択は、実利よりプライドだった。エリア魔法を上書きし、純粋な肉弾戦に持ち込むつもりらしい。

 だが甘い。

 その選択を予想できないわけがない。僕は鎖袋からある物を取り出すと、それを投げる。


 「バカの一つ覚えって言うんじゃね、そういうのっ!!」


 まぁ、ただのブーメランなのだが、あれも一応マジックアイテムだ。ただ、ブーメランといっても僕の趣味。普通のそれではない。

 ンギーグエ。

 アフリカ系の投げ棍棒であり、金属製なのでマジックアイテムとして造りやすい。因みに、ンギーグエは男性用の物であり、女性はンガ・ティルという一回り小さい物を使う。

 一応習わしなので僕もンギーグエを使うが、あまりそこに頓着はしない。実際、ンガ・ティルも造ってあるし、実はそっちの方が投げやすい。

 効果は、投擲後5秒で僕の持つ首飾りの方角へ向けて『スゥインドラーズ』を発動する事。因みに使い捨てで、使用後は壊れてボロボロになるので回収の手間要らずである。


 エリア魔法の弱点は多い。その一つが、馬鹿げた必要魔力量。

 あんな高コストの魔法、どんなに優秀な魔法使いでも、戦闘中に使えるのは3回が限度。

 エリア魔法が使える術者は、もうそれだけで高位の魔術師なのは言うまでもないが、そんな術者であっても、その能力を最大限過大評価して試算してみて、さらに偽勇者という要素をかけ算してみても、エリア魔法を3回使えばただの人だ。


 ブーメランが光り、再び空間が僕の支配下におかれる。壊れて風に溶けるブーメランを見て、どうやら巨漢もその効果を覚ったらしい。当然か。僕もなんだか、身体能力が上がったり下がったりする不快感を感じているし、相手は術者本人。自分のエリア魔法が上書きされた事くらいは気付くか。


 僕の場合、巨大な魔法陣を使わなくてもマジックアイテムを作れるというのが、この場合は凄まじい利点となる。予め魔力を込めたマジックアイテムさえ用意しておけば、僕は戦闘中何度もエリア魔法を使える。


 これで、エリア魔法の弱点、乱発による魔力消費はある程度安心出来る。予め仕込んでおく時点で、魔力消費の絶対量そのものは変わらない、という部分には目を瞑ろう。お兄さんとの、約束だ。

 まぁ、『排他的茶会』では『物を投げる』なんて茶会と関係ない動作は、恐らくキャンセルされるので完璧ではないが。


 「………………」


 「はぁ………。これでもダンマリかよ………。じゃ、もういいや。お前殺して、とっとと他の連中に加勢しよ」


 やっぱりマルコとミュルがちょっと苦戦してるみたいだし。


 「………ロワ………」


 あん?


 「今なんか言った?」


 「………私の名は、トロワだ………」


 相変わらずの仏頂面だが、どうやら自己紹介らしい。巨漢の名前はトロワか。よしよし、名前をきけたってのはこのエリアでは大きな戦果だ。自分の名を呼ばれる、というのは、意外と強く意識を揺さぶるからな。


 「そうか! トロワ、僕の名はアムドゥスキアスだ。親しい者はキアスと呼ぶが、君も呼びたかったらそう呼んでくれていいぞ、トロワ」


 「………アムドゥスキアス………」


 あ、フルネームで呼ぶのね。ま、いいけど。この空間じゃ、舌噛むぜきっと。


 「さて、では約束通り種明かしをしてやろう。

 とはいえ、口で説明するより見てもらった方が早いし、僕の口から出た言葉をそのまま信じてしまうようじゃ、そもそもお前に生き残る術なんて無いぜ?」


 対峙する僕とトロワ。トロワは内心を読ませない無表情を堅持していたが、僕はヘラヘラと笑う。


 この笑顔だって、実を言えば攻撃の1つ。攻撃する際にベラベラ喋ったり、やたらハイテンションなムカつくノリも、本当は全部演技だったりする。


 つーか、僕は本来あんな『ヒャッハーッ!!』じゃない。クールで無口な暗殺者タイプだ。

 ………何? 何か文句でも?


 いい加減、あのテンションを維持するのも疲れたし、とっとと種明かしと実演を踏まえて、分かりやすく教えてやろう。




 「あ、ドラゴン」




 トロワの後ろを指差し、そう呟く。咄嗟に振り向き、盾を構えるトロワ。その眼前に迫るドラゴン。


 そう、本当にドラゴンがトロワに襲いかかっていた。


 真っ赤な目、黒い鱗、翼を広げて横幅はゆうに10m、尻尾まで含めた全長はたぶん30m以上ある。まさに悪の邪竜を絵に描いたような姿。それが今まさに、整然と並べたナイフのような歯を剥き出しに、頭からトロワへと迫っていた。


 つーか、どんだけ過大評価してんだよ。そんなデカい竜、真大陸にいねぇだろ。竜の巨大な顋へ向け、盾を構えたトロワは叫ぶ。


 「『ギ・アスピダ』!!」


 トロワの構える盾に、雪を退け土が集まる。そもそもこの一帯の雪は、ほとんど聖騎士達が除雪してしまったので、あまり雪が残ってはいなかった。踏み固められた平らな雪原。それを『魔王の血涙』の土やら砂やらが混ざって、一気に雪を汚く染めてゆく。

 集まった土はトロワの盾を何倍にも分厚く、大きくする。


 「『アミナ』!!」


 続いて防御の身体強化魔法。トロワの踏みしめた雪が、ギュッっと音をたてる。徹底して守りの姿勢のトロワの背後で、僕はやれやれとため息を吐いた。


 そんなの、無駄なのに。


 竜とトロワが激突し、トロワが汚い雪を巻き上げて押されてくる。だがまぁ、この程度で済むあたり、こいつの自信も相当だな。

 目の前に来た大きな背中に、僕は暢気に声をかけた。




 「ウ・ソ・だ・よ」




 途端に、盾もトロワの力も無視して、邪竜がトロワに食らい付く。


 そう、さっきの聖騎士のように。


 「この空間で唯一の武器、それは『嘘』。

 嘘を吐き、騙し、相手の精神の動揺が現実として実体化する。嘘以外の攻撃は不可。攻撃の強度は、相手の動揺の度合いによる。軽く鎧に傷が付く程度から、そんな馬鹿デカい竜を生み出してしまう程まで。


 フェイントもその1つだね。攻撃すると思わせ、攻撃しないという嘘。

 まぁ、僕みたいなド素人の動きだからこそ、僕の攻撃がフェイントかどうかわからなかったろう?

 達人ほど、どんな手でこられてもいいように、全ての攻撃に対処する。本当に攻撃されてもいいように。だが、この場合は対処してしまう事こそが問題なのさ」


 バキバキとトロワの鎧が悲鳴をあげ、あと少しで噛み砕くという所で竜は消える。突然竜という台座を無くしたトロワは、はらはらと空中を舞い、ガシャンと落ちてくる。


 足から着地できたのは見事だが、それでも片膝をついて息を切らす姿に余裕は見られない。それどころか、竜の牙に砕かれた鎧の下から流れる血が痛々しい。


 「要は、ただの精神攻撃だよ。今の竜も、さっきの聖騎士も、全部お前が生み出したのさ。僕が斬りつけた傷も、僕の攻撃じゃなく、トロワ、君が自分を傷つけたんだ。君の精神がね」


 これが僕のエリア魔法、『|スゥインドラーズ《間抜けな詐欺師の決闘法》』の効果である。

 無口キャラ必殺の空間である。まぁ、ミレには使えない魔法だけどね。あの子、何気にポーカー強いし。


 僕はにっこりと0円スマイルで首を傾げて、イラッとくる感じに可愛こぶってみる。




 「精神攻撃は、基本でしょ?」




 勿論これも演技だよ?




 ○●○




 とはいえこの『スゥインドラーズ』には、致命的な弱点がある。


 それは―――


 「オラオラッ!!」


 僕の剣撃もフェイントも無視して、トロワが突っ込んできた。

 お、嘘吐くのか?


 「………っ、くっ………」


 吐かねえのかよッ!?

 いや、吐けなかったのか。

 このエリア魔法の最大の弱点、それは種が割れた後の攻撃の難しさにある。それは当然、僕にも当てはまる。


 何も知らされていない状態で嘘を吐かれるのと、「これから騙すよー」と言われてから騙すの、どちらが難しいのかは言うまでもない。


 ではなぜ、僕はこのエリア魔法の種明かしをしたのか―――さて、わかるかな?


 「………………」


 相変わらずの無言だが、そこには疲労とダメージが如実に見て取れた。そしてもう1つ。




 不信感。




 僕が圧倒的優位に立っていた状態―――まるで素人相手に麻雀の勝負をするような、相手は役もルールもわからない―――そんな状態を自ら崩す僕に、トロワは不審を抱いているのだ。


 一方的なタコ殴り状態から、相手の手で五分の状態へと戻される。普通に考えれば、ただ単に舐めていると思うだろう。

 怒り? そんな精神状態になってくれれば御の字だ。後は煮るなり焼くなり好きにできる。


 だが、普通はそうはならない。こうして、お互いの攻撃が全く意味をなさなくなり、ただ無為に時間が流れる程、相手は考えるだろう。


 嘘を吐くとわかっている相手を騙すには? 自分が騙されない為の方法は? そして本当に、僕の告げたルールは正しいのか?


 間抜けだろう?

 嘘を吐くしか攻撃方法が無いのに、その嘘が嘘だとバレている。こんな状況で騙される奴なんていない。―――そう、普通なら………。


 「おいおい、ちょっとは頑張ってみようぜ? ホラ、何かの拍子に騙されっかも知れないし、トライトライ! 振らなきゃバットに当たらないぜ?」


 「………ッ!?」


 見よう見真似で、トロワが何かを避ける動作をする。これは聖騎士にやられた時のやつの真似か。

 僕はゆっくり振り返り、そこに何も無いのを確認する。


 間抜けにパントマイムを繰り出したトロワだけが残され、辺りにシラケた空気が漂う。

 ああ………っ、らしくなってきた………っ! 今、僕らは最っ高に間抜けだ!


 「………こんなもの、タネが割れてしまえば、意味など無いではないか………ッ!?」


 その無表情を僅かに赤らめ、トロワが体勢を立て直す。やはり、今のはかなり恥ずかしかったらしい。

 まぁ、そうだよな。


 「無意味だって? どうして?」


 「………私も攻撃できないが………、………貴様とて私に攻撃できまいッ!?」


 だいぶ語調が強くなっている。どうやら、もうかなり良い感じに出来上がってるみたいだな。


 「ハッハッハッハッ!!

 面白い事を言うじゃないか、トロワ。なぜ僕が君に攻撃できないんだい?」


 「………何故だと………? ………こんな状況で騙される馬鹿などいない………」


 「だからなぜ?」


 「馬鹿にしているのかッ!? ………いや、さっきのルール………、………やはりあれは嘘か………」


 「いやいや、あれは本当だよ。信じてくれ」


 白々しく、真剣な面持ちで言ってみる。面白いように苦い表情を浮かべるトロワに、今度はヘラヘラと笑って告げる。そう、宣告だ。


 「それに君を騙す事など造作もない。例えこんな状況だろうと、ね。

 そうだね、今から僕は5回嘘を吐こう。その5回の間に、君を騙してみせる」


 にやぁっと、あえて悪い笑顔を浮かべてみせ、僕はハルペーを肩に担ぐ。


 この空間、実を言うと嘘そのものの精度など問題じゃない。全てが嘘だと疑う相手を騙すには、言葉ではなく心を攻めなくては意味が無いのだ。


 焦ったり、怒ったり、迷ったりと、不安定になった心。その揺れる動きを動揺と言うのだ。そんな心を騙す事など、児戯にも等しい。


 「では、1個目の嘘といこうか。

 君は僕の動きを捉えられない」


 斬りかかる僕を、余裕を持って盾で受け止めるトロワ。金属と金属のぶつかる、けたたましくも耳心地の良い音が響く。最初に盾に防がれた時とは違い、こちらも相手も本気ではないからこその音。


 「お? 騙されなかったか。やるねぇ!」


 「………舐めるな………ッ!!」


 すぐに盾で僕を弾こうとするトロワだが、ある程度以上の圧力を持たせた物体は、この空間では肉体に影響を及ぼさない。


 「さぁ次の嘘だ!

 『アネモス・トロヴィロス』!」


 風の魔法を詠唱するが、当然発動なんかしない。嘘で実体化もしないので、トロワは騙されなかったようだ。


 「………フン………。………やはり、ハッタリではないか………!!」


 攻防の無意味さを覚ったのか、トロワは盾もバトルアックスも下ろしてしまう。どうせ僕が攻めれば念のため防御するのだろうが、もうあちらから攻撃してくるつもりはないらしい。




 「今だ、パイモン!!」




 僕は叫ぶ。トロワの背後、金髪と戦っていた筈のパイモンに向けて。嘘だと疑ってかかっていたら、こういう咄嗟の時に騙される―――


 「………フン………」


 ―――事もあるのだが、残念。

 当然、近くにパイモンなんていない。少し離れた場所で、今も金髪と対峙している。ただ、お互い攻撃が通らないので、膠着状態のようだ。


 「やっべー………、どうしよ。今ので騙すつもりだったんだけどな………」


 「………ならば、もうとっととこんな無為な空間は解除しろ………。………嘘も吐けない嘘吐きに、価値など無い………」


 ちょっと余裕を取り戻し始めたトロワが、皮肉を言う。でも、そういう精神状態が一番ヤバイんだぜ? 気付いてるか? お前、かなり口数増えてんの。


 「じゃあ別のエリア魔法を使おうか。『ライアーズ・ハイ《嘘吐き症候群》』」


 そんでもういっちょ。




 「―――今だ、パイモン!!」




 虚空から現れた黒い鬼が、トロワに襲いかかった。

 トロワの体勢は悪い。当然だ。油断して防御のための準備を、全て放棄していたのだから。

 だから迫る黒鬼に対し、出来たのは回避という選択だけだ。地を転がり回避するトロワと、神鉄鞭を空振る黒鬼。


 「クッ………!!」


 はっきりと、表情に屈辱が浮かぶ。もうこいつには、自分の激情をコントロールする事などできない。あと一押しすれば、恐らく終わりだろう。


 「さて、宣言通りになったみたいだな?」


 「………ふざけるな………っ!!」


 ダンと地を踏み鳴らし、トロワが立ち上がる。怒りを表情に出し、僕の側の黒鬼を指差す。


 「………そのオーガ………、………予め潜ませていた伏兵だろう………ッ!!」


 成る程、そう考えるわけか。まぁ、別にそれでもいいし、この場合そう思い込んでくれるならその方がいいかもね。


 「………私は、騙されていないッ!!」


 語気を強めて言い切ったトロワだが、その様子は目に見えて余裕がなくなっている。


 「あーあー、疑心暗鬼って言うんだぜ、そういうの。心理的に一番不安定で、一番騙しやすい状態だ」


 「ほざけッ!!

 貴様の5つの嘘は全て見破った………ッ!! とっととこんな無為なエリア魔法、解除してしまえ………ッ!」


 「見破ったなら、別に解除する必要も無いんじゃないの? 僕は魔王。そうそう危ない真似は仲間が許してくれないんだよ。

 君が僕を攻撃できないなら、僕がここに留まるのも許してくれると思うし、僕の攻撃が君に届かないなら、君だって安全だ。そうだろう?

 まぁ、とはいえ僕、君を騙せないなんて欠片も思ってないけど」


 「………ッ、………ッ!!」


 そしてトロワは逃走を始める。それは、恐らく今までプライドで拒否していた、逃走というエリア魔法の対処法。

 こちらに背を見せ、エリアから脱走を図るトロワは、贔屓目に見たって明らかな敵前逃亡である。


 だが甘い。まだ甘い。


 僕はトロワの進行方向にンギーグエを投げる。それと同時に、武器も抜く。


 「伏兵か。そうだね、いい案だ。それ、採用」


 言葉という刃を。

 僕の周囲に、おどろおどろしい姿の異形が現れる。全員がクトゥルフ神話から厳選したんじゃないかと思われる程、吐き気を催すような姿の邪神群だ。

 スゲーSAN値下がるわ………。まぁ、これはあいつが考えたんじゃないので、文句は全て僕に跳ね返るわけだが………。


 「おいおい、頼むぜ。僕まだ嘘ついてないじゃんよー。勝手にこんな気持ち悪い邪神群呼んでんじゃねーよ」


 それを見たトロワが一路エリア外に向かうも、トロワを追い越したンギーグエが発動。崩れるブーメランと共に『スゥインドラーズ』が発動し、それまでの空間を上書きする。

 当然邪神群や黒鬼も消える。


 「あ、そーか。エリア魔法上書きすると、それまで実体化していた嘘まで消えちまうんだ。失敗失敗。

 まぁ、さっきは嘘つく前に発動したからノーカンって事で。じゃあ、そろそろ仕上げと参りますかぁ!」

 僕は尚も走るトロワに向かって叫ぶ。




 「トロワ!! お前はもう、僕を捉えられない!!」




 1つ目の嘘。僕はそれを繰り返す。

 振り向いたトロワがギョッと目を剥いたのもそのはず、逃走し、かなり距離の開いていた僕が、文字通り目と鼻の先まで迫っているのだから。


 僕が腰だめに構えたハルペーは、そのままゆっくりと走り続けるトロワの背へと吸い込まれてゆく。


 「ガッ………ゴブ………ッ!」


 「バターみたいに鎧に刺さったな。どんだけ騙されてんだよ?」


 『間抜けな詐欺師の決闘法(スゥインドラーズ)』に支配された空間で攻撃をするのは、敵ではない。自分自身である。自分自身の弱い心が、自分に牙を剥くのだ。

 僕に対抗できなくて、逃走を選択した時点で、こいつに勝ち目など無かったのである。


 「どうだい。僕の決闘の作法、楽しんでくれたかい?」


 「………ふ………ふざけるな………」


 そしてトロワは倒れる。どうと俯せに倒れたトロワに引かれ、ハルペーまで僕の手を離れた。


 そうか、これ以上の危害が加えられないという事は、このハルペーも抜けないんだな。トロワが死ぬまでは。

 むしろ苦しみと痛みを持続させてしまうような気もするが、まぁ、これは僕も想定外だったのだから許してほしい。ゴメンね?


 雪の上が、今度は赤く汚されていく。


 「………カハッ………ゴホ………」


 「なぁ、僕に騙されてくれよ? そしたら、一思いに楽にしてやるぜ?」


 「………ふざ、けるな………。………そんな事、………を言われて、騙される………など不可能………だろ………うが………」


 「まぁ、確かに」


 「………こ、今度は………ッ、………素直に認めるのだな………」


 苦笑するように言ったトロワの声音は、さっきまでの動揺が嘘のように消え失せていた。


 結局、騙される騙されないってのは気の持ちようだからね。死に瀕した人ほど、落ち着いちゃうってのはある。


 ただ、わかってないねぇトロワは。この空間では、まず最初に騙さないといけないのが、敵ではなく自分だという事を。


 『自分は騙されない』なんて脅迫じみた嘘ではなく、『自分は絶対に相手を騙せる』という嘘で自分を騙さなくちゃ。


 それが詐欺師の作法なのさ。




 ○●○




 さて、じゃあする事も無くなっちゃったし、種明かしといこうか。5つの嘘の内訳だ。


 1つ目、2つ目はそのまま宣言通りの嘘である。次に、パイモンを呼んだあれも嘘。ここまでは誰にでもわかる。


 次に言った『今ので騙すつもりだった』あれは本当だ。僕はどんな時でも、嘘を吐くときは本気で騙す。もしあからさまに嘘を吐くなら、それは後の伏線だ。


 次の『ライアーズ・ハイ』も本当。


 『ライアーズ・ハイ』は、そもそも『スゥインドラーズ』に重ねがけするためのエリア魔法だ。


 効果は、ただ単に幻術が魔力コスト1で使えるだけ。しかも、攻撃は一切通らない『非殺傷結界』仕様である。

 そう、実は黒鬼も邪神群も、全部幻。トロワは、本当に騙されてなどいなかったのである。


 ただ、騙されると嘘が実体化すると思い込んだ彼にとって、僕がポンポン幻を実体化させる様は、自分が騙されていると錯覚させられた事だろう。動揺し、逃げ出した先に『スゥインドラーズ』を発動してやれば、もうどんな嘘でも信じてしまうくらいに。


 だってその頃にはもう、誰よりも自分が信じられなくなっているのだから。


 因みに、ンギーグエが『スゥインドラーズ』、ンガ・ティルが『ライアーズ・ハイ』という使い分けである。

 この2つエリア魔法の使い分けこそ、僕の必勝法。必殺技と言っていい組み合わせだ。


 そして最後の、もしくは最初の『君はもう、僕を捉えられない』という嘘。


 これで5つ。

 これから嘘を吐くと言われて、僕の言葉が全部嘘だと騙されたなら、お前には嘘吐きの才能が無いよトロワ。


 言ったじゃないか。

 「僕の口から出た言葉をそのまま信じてしまうようじゃ、そもそもお前に生き残る術なんて無い」ってね。




 ○●○




 ふぅ………。


 ようやく余裕ができ、僕は確認がてら戦場を俯瞰してみる。

 パイモンと金髪は互角、かな? いや、ぶっちゃけあまりよく見えないんだけど………。フルフルと包帯男は、割とフルフルが優勢か。の、割にはフルフルが常に逃げ腰なのだが………。あっ、またチャンス逃した。


 ただ、問題は………―――


 「んふふぅ〜。ドゥー、ちょっと飽きてきちゃったかもぉ〜」


 ―――ドゥーと名乗る少女とマルコ&ミュルの方である。ぶっちゃけ、かなり劣勢。

 彼女はどうやら、マルコとミュルの弱点に気付いているようで、上手く立ち回っている。


 マルコとミュルの弱点。それは、ステータスの偏りである。

 マルコは素早さが高い反面、他のステータスは軒並み一般的数値の域を出ない。多少攻撃力も高いが、勇者や魔王に迫る数値でもない。

 ミュルだって防御特化の数値であり、物理攻撃無効のスキルまで持ってはいるが、フルフルと違って水魔法や火魔法に対抗できる恩恵は無い。攻撃力など、冒険者どころか一般人のレベルであり、実際に触れて毒を使わなければ、ミュルは一般人だって倒せるかどうかわからないのである。

 魔法出力はそこそこあれど、残念ながらミュルに魔法の適正はない。その力は、精々体を軟体化させたり、容量を増やす程度にしか使えないのである。

 だからこそ、弱点を補い合うように、マルコとミュルは2人で組ませているのだが………。


 「うぐ………かたい………」


 マルコの攻撃を結界で防ぎ、ミュルとは距離をとるドゥー。時折ミュルがプッシュナイフを投擲するも、マルコとタメを張るとは言い難いが、素早いドゥーの動きに着いていけていないし、そもそもその程度で結界を通るわけもない。何より、残弾が無いのかミュルの攻撃が散発的だ。

 しかしあの程度の動きで、なぜマルコの初撃をかわせたのだろう? マルコの攻撃を結界で防いでいる事から見ても、彼女はマルコの動きについていけていない。実際、反撃も広範囲の風魔法を使っているが、それすら避けられている始末。でなきゃ、とっくに勝敗は決している。

 本気を出したマルコは、本当に目に見えないような速さで動くのだ。その攻撃力がいかに低くとも、クリティカルに急所を狙えば倒せない者など居ない程に。


 ちょっと気になるが、それより手助けしてやろう。このままじゃ、たぶんジリ貧で負ける。

 ハルペーは失ってしまったが、トロワが死んでからゆっくり取り返せばいい。僕はゆっくり歩を進める。


 「あれぇ?」


 「マスタ!」


 「うぅー………、ましたぁ………」


 意外そうな顔で間延びしたすっ頓狂な声を出すドゥー。そして嬉しそうな満面の笑みのマルコと、泣きそうな顔で駆け寄ってくるミュル。三者三様の表情だ。


 「ぷっ。何あれ〜、だっさぁ〜。トロワの奴負けてるぅ〜」


 僕の背後で俯せに倒れるトロワに気付き、指を指して笑い始めるドゥー。こいつ等には、仲間意識すら皆無なようだ。


 「ドゥー、で良かったか? こっからは、僕ら3人が相手なわけだけど、文句ある?」


 「ぜぇーん、ぜんっ!あはっ、なんだかあなたを殺すの、楽しみになってきちゃったっ!」


 あっそ。ま、嫌って言ってもやるんだけどね。




 ○●○




 静かになった雪原に、強い風の音が響き渡った。

 倒れ伏す4人の影。

 金髪はパイモンの頬に一筋の傷を付けたが、勝利にまでは能わず、地に伏している。それでも、武器の特性で有利だったパイモンに対して、こいつは結構善戦した方だろう。

 運悪く剣と水の魔法しか使えなかった包帯の長身男は、なす術もなくフルフルに打倒された。どうやら、今回の戦いで一番のミスマッチはこの組み合わせだったらしい。

 そしてドゥーも、結局はトロワと同じ末路を迎えた。


 トロワが土魔法、ドゥーが風魔法、包帯男が水魔法で、金髪が火魔法。

 それがこいつ等の勇者としての特性だったようだ。 どうやら光魔法の特性を持っている奴はいないようだが、それも何かを示唆しているのだろうか………? こいつ等の存在について考えながら、僕はチンクエディアという幅広の短剣を取り出す。やっぱりとどめって言ったら古今東西短剣だよね。


 チンクエディアとは、イタリア語で『五本指』を意味する名の短剣であり、その名の通り、手の平が納まるほどに幅の広い刀身が特徴的な剣である。

 東洋やアフリカ系の奇剣とは違い、姿形こそ普通の剣に近いが、これ一本で戦えてしまいそうな程に立派な幅広の刀身は、十分に寄剣の域だ。

 まぁ、そんなに気に入っているわけではないが、首狩り用のハルペーが手元に無いので代用である。ショテルは結構刃零れしているので、この場合は使いたくない。トロワやドゥーとの戦闘で酷使したからなぁ………。そろそろ寿命かもしれん。


 その太い刀身を、背後から心臓を狙って突き刺していく。トロワどうすっかなー。他の部分は鎧があるし、頭蓋骨突き刺すのって大変なんだよ………。

 確認してみれば、既にトロワに脈はなく、呼吸も止まり、瞳孔が開いていた。わざわざとどめも必要無さそうである。

 だからハルペーを引き抜こうとしたが、なぜか抜けなかった。肉体的には死んでいても、まだ蘇生可能な段階だからだろうか?

 だとしたら、エリア魔法も解きたくないな………。意識を取り戻したりして、最後の力を振り絞って来られたら怖い。どうすっかなぁ………。


 あ、いっそミュルに食ってもらうか! なら別にエリア魔法使い続けなくてもいいし。


 その手があったかと踵を返し、ミュルに声をかけようとしたその時―――


 ―――ズブッ―――


 鈍い擬音が聞こえたかと思える感触が腹に届き、そこから見慣れた金の蛇が顔を覗かせていた。

 その鎌首をもたげ、僕の顔を覗き込んでいる蛇は、僕の愛刀ハルペー。そう、僕のハルペーだった。


 「キアス様ッ!!?」


 悲痛なパイモンの声にそちらを見れば、今まさにこちらに駆け寄ろうとするパイモン―――の背後に迫る包帯男の剣。

 さっきより動きが速い。きっと『狂戦士達の決闘場』を使われた。僕のエリア魔法を上書きしたんだ。


 「パイモ―――」


 「ア、ガッ―――ッ!」


 間に合わないとわかっていた声は、やはり決定的な事態を止められない。包帯男の剣が走り、赤い飛沫が舞う。


 「きゃあっ!」


 同時にフルフルがドゥーの風魔法の直撃をくらい、マルコとミュルに金髪が迫る。

 見事な不意打ちだ。対してこちらの陣営は動揺が隠せない。皆僕に気を取られ過ぎてまともに対処できていない。

 そして僕は振り向く。そこにいる人物が誰か、既に確信していながらも。


 「よぉ、元気そうじゃん。トロワ?」




 ○●○




 さっきまでの満身創痍はどこへやら、元気に動き回る偽勇者共。そして目の前で傷付く僕の仲間達。


 「………これも騙し討ちか………?………ようやく一矢報いたわけだ………」


 そして僕の背後には、トロワ。あの盾の巨漢が、僕のすぐ後ろ―――鼻息が首筋を擽るほど側まで近付いていた。僕の背後から、僕の愛刀で、僕を突き刺しながら。

 んな事に拘らなくても、ここに『間抜けな詐欺師の決闘法(スゥインドラーズ)』なんて、張ってねぇっての………。


 「ぐ………っ!」


 まるで、焼けた鉄を呑み込んだかのように、脇腹に熱を感じる。ダバダバと景気よく流れ出る血液に、一瞬現実逃避してスゲーと思ってしまった。

 僕の体って、こんなに血が入ってたんだ………。


 「………貴様は危険だ………。………ここで………、………確実に殺す………ッ」


 「ハッ………。ハハッ!ナマイキ、な事言ってくれる、じゃん?さっきまで、ベソ、かきながら、逃げてた、クセに………っつ゛っ………」


 それにしても痛い。刀身が弧を描いているから当然傷口も広がって、おまけに押し込まれれば押し込まれるだけ、内蔵がぐちゃぐちゃにされている気分だ………。我ながら、こんな凶悪な剣で戦っていたのかと少し自嘲する。ある意味、戦斧よりこえーわ………。


 「あぐっ………!」


 背に傷を負ったパイモンは、それでも懸命に戦っていた。しかし包帯男1人でも手に余っていたのに、そこに金髪まで加わったのでは流石に厳しい。

 動きの鈍ったパイモンに、金髪の魔剣技が襲いかかる。


 金髪に狙われていたマルコとミュルの方を見れば、淡い光に包まれ、消える寸前だった。


 「マ、マス………タ………」


 「………だめ………ま、したぁ………」


 自分の身もボロボロだというのに、なおもこちらに手を伸ばすマルコとミュル。

 良かった………。緊急時に離脱できるよう、腕輪を着けさせてて、本当に良かった。


 「あああ!!」


 金髪と包帯男の猛攻に、とうとうパイモンも均衡を崩してしまう。包帯男の剣を防いだ神鉄鞭を掻い潜り、金髪の剣が腹部を一閃。赤い花が雪の上に咲き乱れる。


 「キ………キアス、様………」


 光に包まれ、傷を癒されながら転移する寸前、パイモンが泣きそうな顔で手を伸ばす。苦笑する僕に、涙を溢すパイモン。

 その手は僕に届く事なく、虚空に消える。


 「キアス!」


 駆け寄ってきたフルフル。だがその姿もボロボロで、いっそ今すぐにでも転移してしまいそうである。


 「『プネブマ・ネロ・パノプリア』!!」


 フルフルの水の防壁が僕を包み、ようやくトロワが僕から離れる。どうでもいいが、意図した形ではなかったけどハルペーは取り戻せた。やはり、バクテリアの餌にするには惜しい傑作だからな。

 まぁ、そもそもバクテリアごときが風化させるには、何千年もかかると思うが。


 しかしヤバい………。一気に形勢逆転されてしまった。


 僕を庇うように立つフルフルと、それに対峙する4人の偽勇者。

 フルフルは強いが、流石にこの人数差はどうしようもないだろう。僕だってしばらく戦えないだろうし、完全に劣勢に追いやられた………。


 ったく………。それはそれで勇者っぽくはあるが、一度ピンチになってから逆転とかするなよな………。やられる魔王としちゃ、迷惑この上ない話だ。


 「なぁ、トロワ?」


 「………………」


 相変わらずのだんまりかい。


 「お前らって、心臓別の所にあんの? いや、よしんば他の3人がそうだとしても、お前が死んでんのは、僕がきっちり確認したんだけど、なぁにピンピン生き返ってんの?」


 チンクエディアできっちりとどめは刺したし、トロワの死亡だってきっちり確認した。

 また無口キャラに戻ったトロワの代わりに、ドゥーがあっけらかんと僕の質問に答える。


 「あぁ、うんうん。ドゥー死んだよぉ。ってか、あの『奥義』ってズルくない? ドゥー的に、あれって反則だよぉ。ドゥーオリジナルの『奥義』も全部潰されちゃったしぃ〜。最初のモヒカン君と合わせて、今回2回殺されちゃったよぉ」


 あっさりと流して、自分勝手な話を始めるドゥー。正直こいつは苦手だ。さっきも『間抜けな詐欺師の決闘法(スゥインドラーズ)』使ってなお手こずったからな。


 「ハハッ!! なぁにほざいてんだ馬鹿が」


 そこに割り込んできたのは金髪だ。中性的なその顔に、嗜虐的な笑顔を浮かべてゲラゲラ笑っている。


 「魔王と戦う勇者が危機に陥れば、そりゃあ神が助けてくれんだよ!」


 「神だぁ?」


 教会なんて屁とも思わない彼等が、まさかそんな事を言うとは思わなかった。

 もしかしてアレか? こいつら、ロードメルヴィン枢機卿は否定した、教会の腐敗を嘆くタイプの信者なのか?


 だが、どうやらそういうわけでもないようだ。


 「ハッ! 神の力を使えば、お前等魔族なんてメじゃねぇっての!」


 神の力を使う? どういう事だ? それは信仰や教義を持つ事で得られる、あるかないかもわからない神の加護の話ではなさそうだ。もっと具体的な、実体のある力。


 そう、まるで僕が本物の神様から貰ったスキルのような―――


 「我々は神に選ばれた使徒なのですよ。文字通りね」


 包帯男が説明とばかりに、金髪の言葉の後を繋ぐ。


 「我々が授かりし恩恵の名は『覚醒』。我々が窮地に陥る度に、我々の傷を癒し、我々に新たな力を授ける恩恵! 神から直々に賜った究極の力!」


 テンションの高まった包帯男にフルフルが嫌な顔をすると、今度はドゥーが言葉を紡ぐ。


 「ドゥー達はねぇ、神様によって選ばれた存在なのぉ! あっははは! そんなの信じれないっ!?」


 そしてようやくトロワも口を開く。


 「………我々は神直接言葉を交わし、そしてこの力を授かった………。………信じる信じないはどうでもいい………」


 どうでもいいけど順番に喋んな。誰か代表だして話せ。まともに会話できそうな奴なんかいないが………。


 「よーするにっ!! 死んで、生き返って、死んで生き返る! その度に強くなり、そしてその度に相手を殺す! それが俺様達が勇者である証明だッ!!」

 金髪の持つスキルには、確かに『かくせい』があった。拡声かと思っていたが、どうやら覚醒だったらしい。いや、だって五月蝿いんだもん。

 持っている事には気付いていたが、そのスキルを軽視していたのには理由がある。以前ソドムを襲撃した偽勇者部隊、あいつ等も全員所持していたスキルだったからだ。


 このスキルが、もしこの金髪が言うようなものなら、ソドムで倒した時や、タイルが解剖や人体実験を繰り返していた時に発動しそうなものだ。『拡声』だと思ってしまっても仕方がないというものだ。




 しかし神様ね………。足りなかったピースは、それか………。





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