暴君の末路っ!?
炎の嵐が消えたとき、コションはまだ立っていた。
全身の至る所が焼け爛れ、ただでさえ汚れていた甲冑は、煤で真っ黒だ。
「ゴロ゛ズ!!」
喉を焼かれたせいで、ただでさえ聞くに耐えなかったダミ声が、余計酷いことになっていた。
それでも、握りしめた斧を振りかぶり、こちらに歩み寄ってこようとする辺り、そうとう僕を恨んでいるようだ。
僕はパイモンに向き直って、声をかける。
「パイモン、後を任せていいか?」
「はっ。しかし、私の実力では………」
パイモンは、不安そうに言い澱むが、僕は強い口調で、パイモンを唆す。
「パイモン。僕はお前を差別しない。僕はお前を蔑まない。
だがなパイモン、お前はお前を差別し、お前を蔑む。
自分は1本しか角の無いオーガだと、弱いオーガだと、お前がお前を貶める。
僕はそれを許さない。
僕の仲間を、大切な家族を侮辱するのは、例え本人であろうと許さない。
だから、僕がお前に自信をあげよう。
僕のパイモン、僕の造ったその武器で、僕の敵を打ち倒せ」
僕は、パイモンに真摯に語りかける。
パイモンは、俯き、携えた棍を強く握りしめていた。
「キアス様、ご命令を」
顔を上げたパイモンの目には、強い意思が宿っていた。
「殺せ」
僕は、にこやかにパイモンに命じる。
バネ仕掛けのように、パイモンは勢いよく飛び出した。
「仰せのままにっ!!」
パモンは、笑っていた。
「地走り!!」
パイモンの速さが、一段階上がり、2人は肉薄する。
「ガァァァアアア!!」
コションは鬱陶しそうに、パイモンを追い払おうとするも、振り回された斧は空を切る。
「ハァッ!!」
斧を振った、無防備な体勢のコションの腹に、パイモンの棍が叩き込まれる。
「ブゴォ!!」
その巨体が、軽々と吹き飛び、数m後ろの壁に、轟音と共に叩きつけられた。
「ナガッ!?」
パイモンの追撃は止まらない。
再び『地走り』でコションに近づくと、目にも止まらぬ連撃を繰り出し、コションを叩きのめした。
「ボガッ!グゲッ!バロ゛!」
聞くに耐えない呻き声に、フルフルは耳を塞ぎ、目を固く閉じていた。
どうやら、お風呂の精霊にはまだ早かったようだ。
「ま゛、ま゛でっ!!」
コションは、片手を上げてパイモンを制止する。
「お前は、あ゛のどきのオーガだな゛っ!?」
どうやら、コションとパイモンには面識があったようだ。
冷めた目でコションを見下すパイモンを見るに、大した繋がりでもなかったようだけど。
「わ゛、わ゛がはいの、配下にい゛れでやろう。そこの魔王よ゛り、厚待遇をや゛やぐそぐする。だがら゛―――」
「遺言はそれだけでよろしいですか、コション様?」
冷徹にそう返したパイモンに、コションは目を剥いて驚いたようだ。
いや、この状況で驚くような事かい。
「ま゛、ま゛て!!」
「それ以上の寝言は、死んでから仰ってくださいっ!!」
ゴシャァァァアアア!!
何かが砕ける音と、液体が撒き散らされる音が響き、
第11魔王コション・カンゼィール・グルニは、今度こそ死んだ。
僕は、死んだコションの死体から、もう一度ステータスを確認する。
コション・カンゼィール・グルニ 《レベル78》
まおう ぼうくん
たいりょく 0/23802
まりょく 72/560
けいけんち 1422/48000
ちから 1502
まもり 1480
はやさ 92
まほう 1400
わざ
おの レベル47
かし
ひまほう ▼
そうび
よろい
おの
けん
たんけん
かたびら
実は、コイツがパイモンに勝ってるのって、レベルと体力くらいのものなんだよね。あ、あと魔法。
だからコイツがダンジョンに来たときも、安心して対応できたし、今もなんの心配もなくパイモンを戦わせた。
だって、数少ないアドバンテージだった体力すら、パイモンを下回っちゃってたから。
これはこの魔王が弱かったのか、ウチのパイモンが強いのか。
まぁ、前者だろうな。
エレファンとタイルと比べれば、歴然とした差があったし。
しかし、ホントに疲れた………。
何で今日に限って、こんな色々あるんだ。
早くお風呂に入って寝たい………。
今現在のパイモンのステータスです。
パイモン 《レベル53》
まおうのふくしん まおうごろし オーガのはぐれもの
たいりょく 2700/2700
まりょく 124/124
けいけんち 208/24724
ちから 1820
まもり 2927
はやさ 300
まほう 5
わざ
ておいのけもの
こんぼう レベル71
じばしり
りょうり
サバイバル
ぼうぎょ
そうび
がくラン
こん
スニーカー
ナイフ
レベルが1上がりました。