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 むごっ!?もごもご、ぐれしゃむ、むぐが、がごごっ!?

 『マスター、ソドムの街が包囲されました』


 「むごっ!?」


 『聖騎士1800名、勇者が4名混じっていますね』


 「もごもご!!」


 『間違いなく、先日の報復、ではありません』


 「むぐが?」


 『前回は電撃的素早さで押し寄せ、それでなお失敗したのです。まさかそれを理由に包囲戦に切り換える筈もありません。違うアプローチから、こちらを追い詰めるつもりかと………』


 「がごごっ!?」


 『いい加減にしないと、捻り切りますよ?』


 はい、ごめんなさい。


 ごくりとケーキを飲み込み、紅茶で一息吐く。ほぅ、と一息吐いて僕は集まる注目に口を開く。


 「ここのケーキ、めっちゃ美味いな!」


 『捻り切ります』


 「まてまてまて!既に入り口はロックして、マジックアイテムの使用も禁じたなら、もう別にやる事無いだろ?」


 僕だって、前回の襲撃での失敗を踏まえて対策はこうじてあるのだ。

 アンドレが異変を関知したら、独断で扉とマジックアイテムをロック出来るようにしたし、扉の周りには防衛用のトラップも造った。このトラップは、冒険者達が手動で使える装置であり、連射式のバリスタもどきや、中級程度の攻撃魔法を発射するものも揃えた。相手が扉から入ってくるなら、万の軍団も一網打尽にできる。

 ロックと同時に警報が鳴るので、住民達もすぐに避難できるし、冒険者達もすぐに扉へと集まるように指示してある。さらに、万が一街内部に入られた時に備えて、全ての住人に防犯ブザーのようなマジックアイテムも持たせたのだ。これで、以前のように中に入られても人を呼びに行く必要はなく、戦闘要員でない者はこの音を聞いたら近付かないよう、気を付ける事ができる。

 それだけじゃない。

 前回はダンジョンのマジックアイテムを完全に封鎖してしまい、ダンジョン内の冒険者が非常に苦労したという報告が上がっていた。信頼の迷宮はともかく、困惑の迷宮には致死性のトラップも多く、魔物も出る。幸い、偽勇者軍団にかかずらっていた時間はそこまで長くはなかったので、死者はいなかった。だが、次もそうとは限らない。

 なので、ソドムの街に帰れない場合、ゴモラの街に転移させ、そこからマジックアイテムではなく常設型の転移陣を使って戻れるようにした。勿論、これは信頼の迷宮、困惑の迷宮、地下迷宮からの転移に絞り、さらに口頭での転移ではなく、ダメージを受けた時の強制転移だけの処置である。また、この場所は今後交易で使う場所であり、当然僕の仲間が見張っている。ゴモラの街の責任者は基本的にレライエであり、不穏な真似をすればレライエに今回の龍に対するもの以上の制裁を受ける事だろう。その為の許可も出してある。

 まだある。

 エリア魔法対策として、エリア魔法を使われた場合、『非殺傷結界』よりも強固な『排他的茶会』というエリア魔法を街全体に付与するようになっている。これは、サージュさんのエリア魔法なのだが、実に良く出来ていたのでパクらせてもらった。ただ、こんなものを常時使っていたら、コストがバカ高くなる上、住民の生活に支障が出る。何せ、お茶を淹れる以外は雑談くらいしか出来ないのだ。街の中なので、エリア外から上書きされる心配もなく、侵入者に対処する時間稼ぎには最適なのだが、最終的には僕が手ずから解除しないと誰にも解除できなくなっている。発動したら手早く対処しないと、かかったコストで泣きを見ることになる。

 僕はこれらを、自らへの戒めも込めてゴンドーシステムと呼んでいる。

 なぜか一度も伝えた事はない筈なのに、街の冒険者達もそう呼んでて驚いた覚えがある。どこかでポロっと溢しちゃったのかな………?


 というわけで、基本何も心配は要らない。


 にしても、包囲で別のアプローチね。成る程、そう来るか。


 「裏はどうなっている?」


 商人達の使う、資材搬入用の街の裏。あそこまで止められてしまうと、少々厄介だ。とはいえ、それならそれでゴモラとの共同生活にすればいいのだ。丁度、交易の準備も進めていたところだし、その品目は立て籠るには最適だ。


 『裏は問題ありません。当然です。繋がっているのはアムハムラ王国のベヒモスとズヴェーリ帝国のゴーロト・ラビリーントですよ?

 ソドム側からは街に入らなければ、裏には入れませんし、アムハムラ王国とズヴェーリ帝国の一地方を勝手に包囲する事など、両国に喧嘩を売るようなものです』


 「へぇ、じゃあ普通に出入り自由じゃん」


 『まぁ、そうなりますね。ただ、正面からは誰も入れなくなりました』


 「いや、誰がこんな時期にアムハムラから『魔王の血涙』まで陸路で動くアホがいるんだよ?」


 アムハムラも『魔王の血涙』も、既に極寒地獄で深い雪に覆われているのだ。


 『今ソドムの前に1800人程いるようです』


 「死ぬよ?いや、マジで」


 『ですよねぇ………』


 冗談ではなく、テントなんかでは何人死者が出るかわからない。せめて、暖炉のついたログハウスでも作らなきゃ、マジで明日には1800の凍死体の山になる。


 『流石に前回侵攻してきて、その寒さに追い返されたのです。何かしらの対策はしてきているでしょう』


 「してきていなかったら?」


 『臍で鉄を沸かします』


 「じゃあ僕は、アンドレの臍でナイフでも作るよ」


 結局、教会のアホ共は何がしたいんだ………。




 ああ、いや、何がしたいかはわかっているのか。




 僕を『魔王の血涙』に押し込んで、真大陸から閉め出し、僕の発行する通貨を駆逐するつもりなのだろう。





 それが自殺行為どころか、ただの自爆行為だとも知らずに………。





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