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 判決は独断と偏見によってっ!?

 「そうして妾は、この哀れな龍共に教育を施して差し上げた次第です」


 「うん、そりゃお前らが悪いな」


 僕は正座するヤーデに向けて、そう言い放つ。


 「なッ!?たかが挨拶の為に、我等が龍の聖域を壊滅に追い込んだのですぞ!?」


 「いや、こっちが送った使者に危害を加えようとしたんだ、それくらい当然だろ?」


 ヤーデ、ドワーフ王、秘書が、それでも「えー………」とばかりに表情を曇らせた。


 「こっちはヤーデの縄張りに足を踏み入れるんだから、筋を通すためにも、誤解による衝突を避けるためにも使者を送った。なのに、あろうことかその使者に対して問答無用で攻撃をしかけた。

 これって戦争になってもおかしくないよな、ドワーフ王?」


 「それはそうだが………。

 だからって返り討ちにするか普通?それも龍を相手に………」


 なおも納得いかなそうなドワーフ王。

 いや、自分の部下が同じ事されてみろって。絶対ムカつくだろ?


 「ぶっちゃけ、レライエに傷でも付けてたら、僕直々に滅ぼしに行ってた。良かったな、てんで敵わなくてボロボロにされてるようだから、今回は許してやるよ」


 「………」


 「お礼」


 「は、はいぃ!無知な我等に教育を施してくださり、ありがとうございました!」


 僕の言葉に、やや非難がましい顔をしていたヤーデも、レライエに促されてべたーっと平伏しつつ謝辞を述べる。どうやらレライエは、ヤーデにそうとう根深いトラウマを残したようだ。


 「あ、あの、キアス様?」


 話も一段落つき、各々思うところはあれど納得した場に、おずおずとレライエが口を挟む。


 「誤解も解けたようですので、この『おしおき』はやめて良いでしょうか?」


 その言葉に、僕はもう一度レライエをじっくりと見る。


 豪華にフリルをあしらい、ロングではなくミニのスカートからすらりとした脚線美が覗けば、奥にわずかに見える白のガーターベルト。黒を基調とし、しかし汚れなき純白が印象的なエプロンドレス。

 そう、誰がどう見てもメイドさんだ。


 いやぁ、とある事情で我がダンジョンはメイド服禁止だからね。他の服装なら『おしおき』の名目で自由に着せ替えもできるけど、こればかりは今ノーム連邦にいるからこそ出来る『おしおき』だ。



 「ダメ」


 「えぇえっ!?」


 レライエが情けない表情で、情けない声を上げた。


 「そも、今回妾は何故『おしおき』されているのでございますか?」


 「まぁ、いつものノリで」


 「えー………」


 いや、だってねぇ。レライエがボロボロの女の子引き摺ってたら、ねぇ?


 「それに、今回レライエに全く非がなかったかと聞かれると、必ずしもそうじゃない」


 龍が話の通じない相手だとわかった時点で、引き返してくるという選択もあったはずだ。いや、引き返さないにしても、僕に連絡をするくらいはすべきだった。

 その場合、龍達とは完全に没交渉で、今後の関係も一切絶たれていただろうけど、これがレライエじゃなく、普通の魔族であるロロイやグリフォンのバルムだったら、普通に殺されていた可能性が高い。いや、レライエだって、真大陸の龍の実力なんて知っていたわけではないようだし、もしかすればレライエの身だって危なかったのだ。実際、弱肉強食が常の魔大陸でも竜種はともかく、龍ともなれば1つの領域の主になろうと誰も文句は言わない実力を持つ。つまり魔王と同等の存在と見られている。

 因みに、竜は西洋竜、龍は東洋龍のような姿で、実は魔大陸ではこの2種族は犬猿の仲だ。竜は魔族よりも直情的で強欲、欲しいものは殺してでも奪う。龍は理性的ではあるが、他の幻獣種と同様に厭世的。闘争を好みはするが、基本的に自ら他者を攻撃したりはしない。比較的安全な存在だが、これが竜相手となれば例外と言って憚らないので、魔大陸の龍だってそこそこ頭が固い。そんな気質の違いから、竜と龍はお互いに嫌い合っているというわけだ。


 閑話休題。


 結局、今回の話も、レライエに責任がないだけで、いつもの独断専行。いやむしろ、相手の非に乗じてやりたい放題やってのけたに等しい。

 龍に死者がでていたら、本当に僕と龍で全面抗争になっていた可能性すらあるのだから、完全に白というわけではないのだ。


 「全くもう、レライエはいつも勝手なことばかりして」


 「も、申し訳ございません………」


 一応口頭でも注意しとく。聞かないだろうけど。


 「龍達も悪かったけど、レライエも悪かった。だからおしおき」


 「しかし、キアス様の使者を軽んじられるという事は、キアス様を軽んじられる事と同義ですし………」


 「別にいいじゃないか。相手が勝手に侮ってくれるなら、わざわざ騙す手間が省けるってもんだ」


 むしろ、今回のドワーフ王のように、端から僕に最大限の警戒を向けている相手こそやりづらい。

 まぁ、それくらいじゃなきゃ交渉もやりがいがないんだけど。


 「し、しかし、戦略的にこちらを小規模に装う事と、日常的にキアス様を軽侮される事とは、全く違う意味合いが―――」


 「おいおい、レライエともあろう者が何を牧歌的な事を言ってるんだい?」


 「え?」


 「ここは真大陸で、つまり敵地だ。戦略的でない行動がどこにあるんだい?」


 僕は魔王。ここは真大陸。

 その2つの要素だけで、僕の言いたい事は完結する。



 「………ごもっとも。お恥ずかしい限りでございます………」


 レライエはなー、頭はいいのにちょっと短絡的なんだよなぁ。軽侮も軽蔑も大歓迎じゃないか。軽く扱われるなら、身軽に動いて軽業師。ウルトラCを決めて、ほくそ笑んでみせればいいのさ。


 「あのレライエ様がまるで子供扱い………。魔王………、なんと恐ろしき存在か………」

 「はぁ………。どこで間違ったんだろうなぁ、俺の人生。こんな魔王に会う予定なんて、無かったはずなんだけどなぁ………」


 ヤーデとドワーフ王がブツブツと独り言に現を抜かし始めたので、こっちもそろそろ本当にお暇する事にしよう。




 早くしないとミルク料理を堪能する時間が削られてしまう。





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