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 斧と鉞程度の違いっ!?

 聞けばゴンちゃんは、土魔法の『ギ・ツェクリ』で戦斧を作って戦っていたらしいが、それがまさに鉞のような形状だったらしい。しかも、巨大な両刃の鉞………。


 「いや、鉞が悪いんじゃないぞ?

 形状的にも、ポールウェポンや大きなの戦斧なら珍しいと言うほどでもない。大斧(だいふ)やクレセント・アクスなんかは、基本的には鉞のような形状を持つから。

 手斧のようなサブウェポンの場合は、フランキスカ以外はほとんど見ないというだけさ」


 そもそも、斧と鉞の違いなんて、刃の形状の違いでしかない。刃先に向けて幅広になるのが鉞、程度の違いだ。

 ただやはり、手斧として鉞の形をした武器というのはほとんど無い。先ほど挙げた例でも、確かに鉞のような形はしているが、ポールウェポンでも刃の大きさは農具とさして変わらない。

 巨大な両刃の鉞なんてのは、日本のアニメでしか見られないものなのだ。


 「べ、勉強になります………」


 「おい、旦那。授業の邪魔すんな、つったろーが。ったく。


 あーっと、さっき旦那が言ったが、戦斧には手斧、つまり剣やナイフのような中、近距離用と、ポールウェポン、つまり槍みたいな長い柄のついた遠距離用の物がある。


 近距離用の戦斧は、さっき例に出したトマホークや、フランキスカだな。これがトマホークで、こっちがフランキスカだ。

 中距離用の戦斧は、少し大きな、このタバルジンや一般的なバトル・アックスだ」


 そう言って、次々と刃引きした戦斧を並べるゲイル。


 「そして、ポールウェポンが、さっき旦那が言ってたクレセント・アクスやハルバート、ジャッドバラ・アクスだ」


 槍や薙刀よりも威力は高いが、その分先端も重く、取り扱いには十分な力がいる戦斧。

 先程ドワーフの少年がいたが、力は強くともドワーフではポールウェポンの戦斧は恐らく使えないだろう。どうしたって身長と体重が、こういった武器の効率を潰してしまう。武器に振り回されてしまう。


 これが、力は強くともドワーフが戦闘面で特筆されない理由でもある。

 身長が小さいので、歩幅が短く足が遅い。おまけに、攻撃できる間合いも狭く、それを補うためのポールウェポンは不向きとまで来れば、戦闘は獣人、エルフ、竜神族に一歩及ばなくなってしまうのだ。


 「おら、じゃあ今から戦斧を使った訓練に移るぞ。まずは普通の中距離用のヤツからだ。投げ斧は上級者になってからだぞ?」


 「「「えーーー」」」


 「何ならやってみるか?何人怪我するかは知らねえが」


 「せんせー、僕タバルジンがいいー」


 「こっちの穴が開いてるのは?」


 「2つ付いててお目めみたい」


 「これ、斧のくせに細ーい」


 「よし、じゃあ始めるか」

 満足そうに頷くゲイル。ホント、先生が板についてきたみたいだな。

 因みに、2つの穴がある戦斧がアクゥー。人という漢字を模したような刃が横向きに付いたものがブローバだ。

 まぁ、どっちも刃引きはしてあるけど、打撃武器としても使えるのが戦斧だから、ゲイル先生には十分に注意してもらおう。

 まぁ、『非殺傷結界』があるから、心配要らないんだけどね。だからこそ、こんな授業も怪我人を出さずに出来る。


 「さて、じゃあ次に行きましょうか?」


 「せやな。中々おもろかったわ」


 「戦斧って、奥が深いのねぇ………」


 「はい。他の授業も見てみたいですね。まぁ、私は純粋な魔法使いですから、あまり役には立たないでしょうけど」


 サージュさん、イルちゃんさん、ラトルゥールさんはそう言いながら、僕の後に着いてきた。


 さー、次はどの授業を見学しようかなぁ。


 「ゲイル先生!バトル・アックスを投げるのは、やはり誉められた使い方ではないんですよね!?」


 「あ、ああ………、多分な………」


 当然、ゴンちゃんだって引っ張って連れていったよ。教師をスカウトしたはずが、生徒になってしまったのでは意味がない。







 「ここは、算術の授業を行っているようですね」


 「算術かぁ、子供って何でか算術嫌がるんよなぁ………」


 「ええ、苦労したわ………」


 「そうですね。かく言う私も、昔は算術が苦手でした………」


 「フランキスカ………」


 サージュさん達一行を連れ、教室の後ろのドアからソーっと入る。


 が、


 「あー!誰か入ってきたよ、せんせー!」


 「キアスのにーちゃんだ!」


 にわかに子供達に発見され、軽く騒ぎになってしまった。


 「こらこら、授業中ですよ!キアス様、見学の話はさっき校長から聞きましたが、授業の邪魔しないでくださいよ」


 「ごめんごめん、できるだけ邪魔しないよう、こっそり入ってきたんだけどね」


 プリプリと怒る教員に苦笑しながら謝り、僕らは教室の後ろで静かに並ぶ。


 「はーい、皆、見学者がいるからって、緊張しないでね」


 なんとか静まったものの、子供達はやはり僕らが気になるらしくチラチラとこちらを窺っている。


 「キアス君て、この街の住人に人気あるよなぁ。前にお店訪ねた時も、皆心配しとったし」


 「まぁ、この街の黎明期には、ほぼ住民との共同生活のようなものでしたから。面映ゆいですが、色々と感謝されているみたいです」


 僕の隣のサージュさんが、周りには聞こえないような小声で話しかけてきた。でも、子供達は結構気付いていて、そんな僕らにやたらとソワソワしている。


 あれだ、授業参観の小学生と同じ心境なのだろう。いや、実体験はないので、僕には未知の心境だけど。


 「はーい、じゃあ復習からです。

 三平方の定理。

 直角三角形ABCの直角を挟む2辺の長さをa、b、斜辺の長さをcとすると、どんな関係が成り立つかなー?」


 「「「a2乗+b2乗=c2乗」」」


 「その通り!

 ではこれも前回やった、その定理の証明問題。このように、直角三角形ABCの外側に、辺BC、CA、ABを一辺とする正方形が3つあり、それぞれの面積がP、Q、Rとすると、どうやって一辺の長さを求めればいいのかな?」


 「はーい、はーい!」


 「じゃあ、カロンちゃん、答えてみて」


 「はい!

 P=BC2乗、Q=CA2乗、R=AB2乗です!」


 「良くできました!じゃあ次に、この証明問題がa2乗+b2乗=C2乗となる理由を聞いてみよう!じゃあ、サロン君!」


 「P+Q=Rと面積の問題に置き換える事が出来るからです。

 P+Q=Rになる理由は、前回やった図の問題で、正方形Pから直角三角形ABCの面積を―――」




 「キアス君………、これ、何の呪文?」





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