乱世の始まりっ!?
『逢魔が宴』の翌日。
すぐには行動を起こせないという、クルーン、サンジュ、ポワソンの3バカ魔王の言葉により、僕はいつも通り仕事をしていた。
「フォルネゥス、お前、仕事はどうした?」
「うん?おぉ、まおうではないか」
用があって立ち寄ったアカディメイアで、うず高く積まれた本の隙間から、色黒な子供がぴょんと顔を出した。
フォルネゥス。
れっきとした人間でありながら、魔大陸で活動する唯一の存在だ。
「仕事はきちんとこなしている。1週間分の書類を3日で片付けたのだ。何かイレギュラーでもない限り、小生の手を煩わせることなく事が進むよう、マニュアルを作っておいた。ここアカディメイアは、滅多に事件らしい事件も起きない平和な街だからな。
これで残りの4日は本が読み放題なのである!」
ゆ、優秀だなぁ………。
僕や、レライエにだって、今以上の仕事の効率化って出来なかったんだよ。
所詮僕は、中学高校で使う教科書を暗記した、凡庸な奴でしかない。
こういった実務的な仕事においては型通りの事しかできない。商売以外は、本当に凡庸の謗りを免れない男なのだ。
ホント、得難い人材だよ、お前は。
「そうか、なら転勤だ」
「なぁっ!?」
「ゴモラ、アレクサンドリア、バベル、天空都市を順繰りに巡って、もっと仕事を効率化してくれ」
「まおう!それはいくらなんでも無体ではないか!?」
「4日間グータラしようとしているお前が言うな。ウチは魔王以外は週休1日だ」
「むぐぅ………」
「仕事さえしてくれれば、図書館には連れてきてやる。それに、しらみ潰し的に仕事を効率化していけば、いずれはどこへ派遣されようと、ずっと本を読んで過ごせるんだぜ?」
「成る程!」
その騙されやすいところさえ直せば、お前は本当に優秀な人材だ。
効率的に、早く仕事を終えることができるという事は、その分他にも仕事ができるということじゃないか。
「まおう、他の街の書類はゴモラに集まるのだな?」
「ん?ああ、基本的にはな」
「ならば他の2つの街に行く必要などない。ゴモラにいる内に、全て効率化してみせよう!!」
「お、おう………」
恐ろしく能動的な安楽椅子型だな………。
『マスター!!』
フォルネゥスと別れ、次の仕事へと向かう最中、アンドレの声が響いた。
嫌な予感がする………。
アンドレがこんな声をあげるときは、大抵そうだ。
『勇者が現れました!』
勇者だと?
それはシュタール以外の勇者という事だよな?
僕はスマホを取り出し、画面を確認して、―――絶句する。
「なんだ………こりゃあ………?」
【勇者】24匹
24?24匹?24人?は?
これはつまり、勇者が24人現れたという事か?いや、それ以外に理解のしようがない。
これは、もしかしてスマホが壊れたのか?
そうとしか考えられない。
「アンドレ、平気かっ!?お腹痛くないか!?頭痛は!?どこか怪我したのかっ!?」
『落ち着いてください、マスター!私は大丈夫です!
それより対処を!』
対処?
ああっ!24匹の勇者の対処か!
そもそも、勇者が24人もいるってどうなんだ?いや、確かアニーさんの言では勇者は全部で5人ではなかったか?
いや、今はその言葉の信憑性はいい。今考慮すべき事ではない。後でいい。
今は目の前の勇者だ。
徒党を組んで現れた以上、奴等の目的が平和なショッピングだとはとても考えられない。
目的は恐らく、僕という魔王の殺害。それ以外には特に思い付かない。
ならばこういうのはどうだろう?
全員に2割引で剣を売ろう。
うん。僕の対勇者経験からして、上手くいく確率は高いな。
『落ち着いてください。そんなもので落ちるのは、光の勇者(笑)だけです』
そうか。いや、そうだ。
いくらなんでもこんな手で籠絡できるのは、シュタールのアホだけだ。
ならばどうする?
『ダンジョンに誘い込みましょう!
時間稼ぎもできますし、恐らくダンジョン内で全て打倒する事が可能です!』
「そうだな………」
そうなると、しばらく真大陸側のダンジョンは使用不能か。致し方ない。
くそっ、自由都市構想のためにも、今はソドムの商人に力をつけてもらいたい時期だというのに!
マイクを設置してある部屋まで駆ける。随分と久しぶりな部屋に入り、相手がスピーカーの前に立つのを待つ。
「やぁ、ようこそ。
突然だけれど、君たち何しに来たの?」
余計な遊びは省き、単刀直入に聞いてみた。
純白のローブに身を包んだ集団は、こちらの声に驚くこともなく、無反応。不気味というより、既に不穏だ。
『………魔王か?』
返ってきた声は、僕の質問に対する答えではなかった。
「はいそうですよ。第13魔王、アムドゥスキアスです」
『………そうか』
いや、まず答えろよ!自己紹介受けたんだから、てめえも名乗れや!
もういい。勝手に見るから。
僕は遠く離れた白ローブ達の内、1人を鑑定してみようとした。のだが、不覚にも相手が続けた言葉に、意表をつかれてしまった。
『今日は、お前に用はない。
我々は、人間でありながら魔王に与する異端者を粛正する』




