表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
321/488

 カーニバルナイト。第2の魔王っ!?

 「聖人計画?」


 いきなり聞きなれないながらも、創作物にありがちな仰々しい単語が飛び出したな。しかも『聖人』と来たもんだ。

 できれば関わり合いになりたくないなぁ。


 「いや、聞き覚えはないな」


 「そっか、ならいいんだ。

 ぶっちゃけ、こんな古くさくて廃れた危険思想、生まれたばかりのキミが知っていたら、正直どうしようかと思ってたよ。うん、良かった良かった。


 何せ、魔王を生み出しちゃった計画だしね」


 いや、ごめん。知りたくないんだけど?勝手にはなさいでくれないかな?


 「っていうか、ボクが魔王になった原因でもある。

 そもそもは、勇者を人工的に造ろうとした計画だったんだけど、どこをどう間違い、何を何で誤ったかわからないけど、ボクを魔王にしちゃったんだよね。ちなみにこの時まで、世界には魔王はエレファンしかいなかった。だけどボクが生まれた後には、ちょくちょく魔王が生まれ始めたっていう、世界の七不思議のひとつでもある。

 あ、当然、計画に関わった奴は片っ端からボクが手ずからぶっ殺したし、研究施設どころか、その国ごと粉々にしちゃったよ。まぁ、大地を割ったのはエレファンだけどね。


 今は昔の、もう誰も知らない真大陸の黒歴史ってやつさ。


 だから、そんなものが現代まで残ってるわけもなく、もし残ってたところで第2の魔王を生んだ計画なんて誰も引き継いだりはしないだろう、とは思うんだけどねぇ………。

 でもねぇ………。なぁんか、今回の話に似てると思うんだよねぇ………。


 最後にもう一回聞くけど、本当に聞いたことない?キミのオトモダチとかからさ」


 勇者ねぇ………。つーか、量産してどうするつもりだったんだよ。


 僕は大量のシュタールの群れを思い浮かべて、心底ゲンナリする。


 嫌すぎる………。


 「いや、やっぱり聞いたことはないな」


 「そっか。

 まぁ、そうだよねぇ………。ボクの耳にも入ってないし、無関係と考えた方が妥当だね。アレは少なくとも、勇者を生みだす計画で、魔王を生む計画ではなかったからねぇ」


 「だろうな」


 確かに引っ掛かることはあるが、勇者を生む計画で勇者を魔王にしてしまう意味はない。

 むしろデロベの存在は、下手をすれば真大陸側にも不利益を被りかねない話なのだ。魔王が生まれて困るのは、どちらかと言えば魔族より人間なのだから。


 「お二方、そろそろ本題に戻っても良いだろうか?」


 「ん?ああ、ごめんごめん。続けてくれていいよ」


 僕ら2人のやり取りを静かに見守っていたクルーンが、仕切り直すようにそう言うと、タイルはにこやかに答えて手を振った。


 「先程も申した通り、我々の目的は皆さま方の意思確認にございます。こちらに与するか、敵対するか、不干渉の中立か、できますればこの場でお教え願いたい。

 無論、敵対であろうと中立であろうと、我々はそれを厳粛に受け止め、無粋に理由を追求したり、逆恨みなどはしないと約束しましょう。

 もし敵対したとしても、その時は今宵の宴を戦の前の最後の語らいの場とし、後日魔族らしく正々堂々雌雄を決しましょうぞ」


 なんか堂々としてんなー、クルーンの奴。以前の完璧に阿るような弁舌じゃなく、ある意味宣戦布告。下手をすれば恫喝紛いの弁論だ。

 まぁ、これが人間だったら問題だろうけど、この魔大陸だと―――


 「カッカッカ!!

 面白い!!貴様がどの程度成長したか、とくと見てやろう!!我は貴様等に味方してやろう!!」


 「あははは、ホント別人みたいだよね。あ、ボクとエレファンは中立で。で、いいよね?」


 「ん」


 ―――中々に好印象で受け入れられたりするんだ。


 「キアス、陣中では夜這いに気を付けよ!」


 「なんで味方の癖に僕に宣戦布告してんだテメーはっ!?」


 「男と女の仲はいついかなる時も戦ぞ!」


 「いっそ敵対してろよ。その方が安心だから!僕の貞操的な意味で!!」


 「その場合は、敵陣を突破してでも夜這いに向かう」


 「安心できねー!!」


 どこまでも色欲に生きる奴だ。


 と、そこで僕とオール以外の視線が残りの2人へと向かう。


 第5魔王、アベイユ。

 第8魔王、エキドナ。


 別にデロベの味方をしてもこの人達に得はないし、多分中立でいてくれるだろう。


 魔王とは本来、よっぽどの理由がなければ他者の戦に介入したりはしない。

 自分の力をアテにしなければ戦もできないような奴に、本来何の興味も抱かないからだ。


 とはいえ、これは絶対ではない。


 魔王とはひどく利己的で、自己中心的で、気まぐれで、ようするに自分勝手な存在なのだ。『なんとなく』で戦を起こすこともある、「こいつら勇者に滅ぼされても仕方ないだろ。だって人間からしたら、意味不明で迷惑だもん」思わせる存在なのだ。

 ハンパじゃない力を持ち、それゆえに人望をもつ独裁者が、己の趣味嗜好を何よりも優先する。実にはた迷惑だと僕も思う。


 だからこそ、クルーンはこの場で魔王達の意思を確認したかったのだろう。


 真っ先に口を開いたのはアベイユさんだった。




 「敵対する」





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ