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 カーニバルナイト。品評っ!?

 「と、いうわけで、この度魔王の皆々様にご足労いただいたわけです」


 クルーンの演説は、今回は誰にも邪魔されることなく、つつがなく終了した。

 まぁ、前回邪魔したのってパイモンだしね。


 「ふうむ………」


 話を聞いたオールは、唸るように息を吐きながら天井を見上げた。やっぱりこれって、それくらい大事件だったのかね?


 「クルーン、1つ聞きたい」


 「何でしょうか、オール殿?」


 「貴様が我々を招いた理由はわかった。成る程、確かに特異な存在が現れたものよ。


 だがな、


 それが我らに何の関係がある?よもや『皆で協力してデロベを討とう』などという戯れ言を聞かせはすまいな?」


 不機嫌そうにクルーンを睨み付けるオールに、クルーン以下3馬鹿魔王は身を縮こまらせる。


 「我らを取り込みデロベを潰すつもりならば、それは前回の『宴』で我らを使いキアスを貶めようとしていた事と大差ない。適当な口車に乗せて、上手い事利用してやろう、とな。つまり、貴様らは我らを侮っているという事になるが?」


 「い、いえっ、決してそのような事はっ!」


 オールのプレッシャーに耐えかねたのか、ヌエの方が慌てて言いつのる。


 「我輩達はただ、デロベの危険性を周知しようと!」


 「ならば使いを出して知らせるだけでよかろう?それこそ、今回の招集に、各地に飛ばした使いにでも手紙を持たせれば良かっただけの事。なんとなれば、我やエレファン、タイルは、キアスと直通のホットラインを持っておるし、エキドナ、アベイユの領地にもキアスの力を借りれば瞬く間に布令を出せたのではないか?

 なぜわざわざ『逢魔が宴』まで開いた?」


 「うっ………」


 ヌエが言葉に詰まると、会場の魔王たちから冷ややかな視線が3人に集中する。


 そう。

 魔王、魔族という種族において、相手が強いことというのは大して大きな問題ではない。徒党を組む理由にも、敵対する理由にもならない。むしろ、弱いことの方がその理由になる場合すらある。


 つまり、再三述べた通り強さこそがルールなのだ。


 相手が魔王でも、勇者でも、その両方であったとしても、敵対する正当な理由さえなければ不干渉が基本である。


 まぁ、過去に『何となくムカついた』という理由で戦争を起こした事例もあったらしいので、結局は魔王次第ではあるのだが。『正当』というのは、あくまで魔王個人にとって正当性であり、他者の審判を必要としない基準なのである。


 「ふふふ。そういじめないでくだされ、オール殿」


 「ほぅ………」


 クルーンがヌエを庇うように一歩前に出ると、オールは品定めでもするように目を細める。


 「確かに我等が今回皆々様を招集した理由の1つは、我らと同じくデロベと敵対する魔王がいるやもと思っての事です。

 しかし、一番の理由は我等に味方をする者ではなく、敵対する者を見定める為です」


 「………………」


 「我等は既に、デロベに対して敵対を宣言しております。なればこそ、他の魔王様がどう動くかが気になるのです。それこそが勝敗を左右すると言っても過言ではないと言える」


 「このまま貴様等とデロベが敵対しているのであれば、流石に優位に立つのは貴様等だ。いくら奴が勇者と魔王のハイブリットだろうと、倒すだけならば方法はないではない。数的優位もあるだろうし、兵站、行軍、伝令はキアスがいれば圧倒的だ。

 だが、我等他の魔王が敵側につけば優位は覆る、か?」


 「ええ。我等は所詮、小物の魔王。キアスがいるとはいえ、皆様方のいずれかが敵になれば、戦況を覆す事など容易いかと」


 「成る程、の」


 オールは何かを考えるように俯くと、小さく呟く。


 「ご理解いただけましたか?」


 「うむ。どうやら本当に見違えたようだな、クルーン?」


 「恐縮です」


 「あとはそうやってガチガチに緊張するのを克服すれば、言うことはない。

 それと、キアスの人材育成能力もまた、目を見張るのう?」


 「ただひたすら残業させて、泣くまで書類を書かせただけだぞ?」


 「キ、キアスっ!」


 なんだよ、別に隠すような事じゃないだろ?本当に半ベソかいてたし。


 「ふむ………、そういえばそろそろキアスに貸していた人材が返ってくる頃合いか?」


 「ああ、そうだな」


 「楽しみにしておこう」


 いや、過大評価してくれてるとこ悪いけど、彼等も書類仕事してただけだぞ?ガナッシュとの戦争にすら参加していない。




 「―――ねぇ?」




 唐突にかけられた声は、僕らから少し離れた席からだった。そこにはエレファンとタイルが座っていた。

 「確認するんだけど、デロベは間違いなく『元勇者』で、後天的要因によって魔王になった、でいいんだよね?」


 「はい。第6魔王であったデロベは、他者を自分の眷属として魔族にする能力を持っていたとか。勇者のデロベはその能力を受けて魔族になるも即座に新たな魔王として顕現し、魔王であったデロベを討ち取った、という事だと我々は考えています」


 まぁ、眷属だったデロベの領地の住人が滅びているのに、勇者だったデロベは生きているんだから、僕もそうだと思う。


 つーか、魔王のデロベと勇者のデロベってややこしい事この上ないな!!


 「どうしたんだ、タイル?」


 僕が問いかけると、タイルは複雑そうな表情で苦笑する。


 「んー、ちょっと気になる事があってね。

 いや、でも、流石にねぇ………。500年前の話だし………」


 「気になること?」


 それは当然、デロベに関する事なんだよな?そういえばタイルも―――


 「そういえばキアス君は、真大陸でも暗躍していたよね?」


 「あ、ああ」


 「だったらさ、聞いたことはないかな?」


 タイルはそこで一度息を飲むと、真剣な表情で噛み締めるように言った。




 「『聖人計画』って言葉に、心当たりは?」





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