チートゲットっ!?
声の主、改め神様の言いたいことは分かった。
だがどうだろう?この『お願い』を聞いた場合、僕は各勢力を、十把一絡げに敵に回してしまう。
学ランから覗く手を見てみる。
ただの手だ。
ただの人間の手。どう見たって、今まで喧嘩の1つもしたことのないような、ごく普通の手だ。
さて、考えてもみてくれ。
「これから君達に、殺し合いをして貰います」
と言われたときどう思うだろうか?
僕は今、
「これから君に、世界を相手に喧嘩売って貰います」
と言われたわけだが、少しは僕の気持ちが分かっていただけたであろうか。
とにかく、僕に荒事なんて不可能なわけで、もしそんなことになれば、フリ○ザ様に立ち向かうド○リアさんくらい、結果は見えているわけで。
うん、無理!
丁寧に説明してくれた神様には悪いが、僕だって命が惜しい。そういうのは不死身の男コ○ラか、ジョー・〇リアンにでも頼んでほしい。え?同一人物だって?
ああ、創作物の登場人物なら思い出せるんだな、僕。いっそこの記憶を元に、漫画家か小説家にでもなろうか。
著作権?なにそれ美味しいの?記憶ないから憶えてないや。
というわけで、大変申し上げにくいのですが、今回はご縁がなかったということで引き上げてもらおう。
『勿論、断ってもらっても構わない。これはあくまでお願いだからね』
こちらの心中を見透かすように、神様の声が響いた。いや、もしかしたら本当に見透かしているのかもしれない。何せ相手は神様だ。
『だが、さっきも言った通り、君は魔王だ。結局、望むと望まざるとに関わらず、世界にとって君は敵だ。安寧を求めるならば、こここそが君にとっての安住の地なんだよ。
まぁ、私に君を止めることなどできないがね』
うん、僕の事逃がす気無いよね、神様。
「でも、ここにいたら殺されちゃうんじゃ………」
そう。結局世界の全てが敵になるなら、逃げ隠れした方がいい。こんな場所にどっしり構えてたら、軍隊が突っ込んでくる可能性もあるし、魔王の対義語、勇者も恐い。そうなれば、いくら難解で広大な迷路を造ったところで、人海戦術の前に成す術なく血祭りだ。
『だからほら、私が君に恩恵を授けてあげるんだよ。私直々にそんなことをするなんて、大盤振る舞いの出血大サービスなんだよ』
うーん、つまり神様からチート貰って無双しろってことなのだろうか。だとしたら、ちょっといいかもな。できれば勇者も鼻クソほじりながら倒せるくらいの、イージーモードなチートがいいな。ゲームと違って間違っても死ねないし。
『うん。でもその前に、ダンジョンの操作の仕方から説明しようか。これも結構、楽しいはずだよ。胸ポケットからスマートフォンを出してごらん』
「あれ?スマホなんて持ち込めたんだ?」
それはそれで、異世界情緒丸潰れなんだが。取り敢えず電話帳チェックだ。
あれ?
なんだかお願い聞く方向で話進んでない?