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 憤怒


 気にくわない。


 全くもって気にくわない。




 我輩は、魔大陸北方を統べる魔王、コション・カンゼィール・グルニである。

 にも関わらず、我輩になんの断りもなく、『魔王の血涙』に居を構えた新参の魔王が居るのだ。


 気にくわない。


 あの地は、真大陸との唯一の道なのだ。

 既に、再び真大陸に攻め入るための軍勢も整えつつあったというのに、高々新参の魔王ごときが我輩の道を塞いだのである。


 気にくわない。


 今、彼の地には巨大な城壁が屹立しているらしい。よりにもよって、魔大陸側にである。

 確かに、真大陸の脆弱な種族どもに対するのに、城壁など必要ないだろうが、だからといって魔族側を拒絶するとはどういう了見の愚か者だろうか。

 これでは、真大陸に魔族が攻め入ることも難しくなるというのに。


 気にくわない。


 我輩は今、その魔王に会うべく、彼の地に赴いている。

 勿論、軍勢も引き連れてである。


 様々な上級の魔族、その中でも精鋭を揃えた、大軍団である。

 もし、新参者が我輩の言い分を聞き入れ、真大陸侵攻に協力するならば良し。

 そうでなければ、この軍勢をもって開戦の贄となってもらう。


 気にくわない。


 勘違いしてもらっては困るが、我々魔王は決して仲間でも、同族でも、同胞でもない。

 相手が我輩の機嫌を損ねたのなら、生かしておく理由も、そうしなければならない法もない。


 軍団も、魔王の1人を贄にすれば、自信も付き、士気も上がる。

 また、もし配下にメスでもいれば、よい餌となろう。猛った戦士というのは、いつだって精強だ。


 よし殺そう。


 よく考えれば、生かしておく理由など何もなかった。


 「我輩の軍団よ!」


 我輩は、背後に連なる軍団に声をかける。


 「我輩は決めた!!彼の地の魔王、奴は我輩の機嫌を害した。我輩は、それを許さん。



 彼の地の魔王には、死んでもらうことに、今決めた!!」


 我輩の堂々たる宣言に、軍団は一瞬沈黙し、怒号のような雄叫びをあげた。


 やはり、こやつ等も血に飢えておるのだ。


 「壊し、奪い、殺し、犯せ!!我輩が許す!!」


 再びの怒号が響く。


 新参の魔王など、この軍団の前では、塵芥に等しい。もし、手に余るようであれば、200年で培った我輩の力で、木っ端微塵にしてくれる。




 大歓声を上げながら、軍勢は進む。


 件の城壁は、もう目前だった。







 『マスター、侵入者です』


 「おっ、マジか。今度こそちゃんとダンジョンの試運転になれば良いな」



 『そうですね。ただ、魔族の数が862。魔王が1人居ます。警戒だけは怠らないでください。先の2人の魔王の件もありますから』


 「なんか、最近千客万来って感じだな。まぁいいさ。問題が起きれば、その都度対処しよう。奴等の動きを逐一報告してくれるか?」


 『了解しました』


 「ふふっ。なんか、楽しみだな」


 『そうですね。一体どこまで進めるでしょうか』


 「魔王が居るんだし、地下迷宮までは行くんじゃないか?」


 『私は、困惑の迷宮までだと思いますけどね。あの、無酸素回廊は凶悪です』


 「お前ホント、あの回廊好きだね」


 『ふふふっ。あれを造り出したことは、マスターの生涯で唯一の功績です』


 「僕まだ0歳だけど、人生は終わってるんだね?」


 『冗談です。落ち込まないでください。鬱陶しい』


 「ねえ、最後の一言って必要っ!?」


 『うるさいですよ。侵入者が長城迷宮に侵入したのですから、マスターも少しは気を引き締めてください』


 「はいはい。んじゃ、まずは警告でも、してやるかな」


 『警告、ですか?』


 「ああ。その為に長城迷宮の入り口にはスピーカーとマイク(魔力製)を付けてあるんだ」


 『そういえばそうでしたね』





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