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 鍛治師の魔王っ!?

 「で、ミスリルの防具を僕が加工して、お前らの為に仕立て直せと?」


 僕らはそれからすぐに夕食をとることとなり、急遽増えた勇者パーティーの為に、夜遅い時間だというのにオークのお手伝いさんにご足労願った。全く、迷惑な奴等だ。


 その夕食の席で、地下迷宮での成果に話が及んだとき依頼が来たのである。


 まぁ、鎧ってのは個々人のサイズに合わせて造る、オーダーメイドが普通だからな。


 しかし………。


 「アタシはグリーブを」


 「俺は左腕から胸にかけて」


 「私は余った素材で重くなりすぎない、簡素なものを頼む。発動の補助式を備えてもらえれば言うことはない」


 「私は防具である必要はありませんわ。九節鞭が使えない状況で、魔法の発動を補助していただけるものを」


 「………服の下に着れる………、………軽い帷子………」


 それぞれがバラバラの注文だ………。別に悪いとは言わないが、オーダーメイドとなるとコレの方がちょっとねぇ………。


 「………高いぞ?」


 「………覚悟はしてる………」


 シュタールは一度唾を飲み込んで頷く。


 つーか、鎧に使われてるミスリルの量を考えれば、アニーさんとミレの注文はやや厳しいぞ?どっちもミスリルの薄いチェインメイルが良いと思うし。シュタールにも魔法の補助式はあった方がいいだろうし、アルトリアさんはなんかアクセサリーでも良いだろうから、量は要らないな。


 まともに造ったら、たぶん1ヶ月はかかる。だが僕には商売もあるし、『逢魔が宴』も近い。他にも予定がびっしりで、出来ることなら断りたい注文だ。


 ただ、ここでこの注文を受ける事には大きなメリットがある。奴等が地下迷宮を踏破した事は、迷宮レコードでソドムの街の冒険者には知られているだろう。そんな奴等が迷宮から帰還した時、華々しくミスリルの鎧とオリハルコンの武器を装備して帰ったらどうだろうか?


 今までもクチコミで、冒険者の数は徐々に増加傾向にあった。それがどれだけ増えるか、少々楽しみである。


 そもそも、こいつらを迷宮に招いたのは広告塔としての働きを期待しての事だったが、その点でこいつらは何もしていないに等しい。それなのに、教会には捕まるわ、指名手配にはなるわ、僕の神殿に住み着くわで、今まで全然役に立っていないのだ。

 だからこそ、今回こそはと思うのだ。こいつらの宣伝効果、今度こそ発揮してもらいたい。


 だからちょっと裏技を使おう。まぁ、鋼の刀剣を造るときには使えないが、ミスリルやオリハルコン、その他の金属であれば使える裏技だ。


 「まぁ、材料は持ち込みだからな、その分はさっ引いてやる」


 「ダンジョンで拾ったから、ある意味お前からもらったんだけどな」


 「そうか、じゃあ材料費も請求するか?」


 「ちょおっ!?」


 「冗談だ。じゃあ、早速明日から取りかかるから、お前らは残りのボス攻略がんばれ」


 「あ、いや、俺ら明日は動けねぇんだわ。比喩でなく、物理的に」


 チッ、とっとと厄介払いしようと思ったに。


 となると、アレにも参加することになるのか?まぁ今さら中止にするわけにもいくまい。くそ、相変わらず運の良い奴め。


 「全く、つくづく勇者となんか知り合いになるべきじゃなかったよ」







 裏技。


 それは言ってしまえば、土魔法の応用である。土魔法の中には、土や砂、その中に含まれる金属の構造を弄れるものが存在する。デロベがレライエとの戦闘で使っていたのも、この魔法だろう。


 下手な動かし方をすると原子レベルで崩壊してしまうし、分子の構造を知らなければその可能性の方が高い魔法だ。だから、鉄と鋼の配合は手作業の方が確実なのだ。満遍なく炭素を混ぜて、完全な鋼にしてしまうなら魔法の方が早いだろうが、そんなただ硬いだけの剣では二流品だろう。


 さて、ではどうするかといえば、ミスリルを一度分解して銅、銀、錫、その他微量の金属と希土類にしてしまう。その後、銅を加工してからそこにもう一度それらを加えて合金にしてしまう。


 分解と再構築は、専用のマジックアイテムで行う。

 ま、今は僕も魔法が使えるから、要らないと言えば要らないんだけどねっ!

 ………ごめん嘘。そんな精密な作業をしながら、魔法にも集中力を割くなんて無理………。マジックアイテム様々。


 こうすることで、現在は加工不可能とされるオリハルコンでも簡単に加工することができるのだ。しかも早く。まぁ、ミスリルは元々加工しやすいから、こんな方法使わなくても鎧くらい造れるんだけどね。ただ、その方法だと時間がかかる。こっちの方が断然早いのだ。


 既にオールの部下の武具も完成しているし、材料以外でオリハルコンとミスリルの加工は、普通の武具を造るより早く出来るし問題は少ない。


 正直、槌も振るわず、炉に火もくべずに物を造るなん味気ないし、気も振るわない。


 なんかこー『造ってるっ!!』って感覚がないんだよね。鉄を打つ方が時間はかかるけど、やっぱりそっちの方が僕は好きだなぁ。


 僕はその日の内に、シュタールの鎧とレイラの脚甲、ミレとアニーさんの鎖帷子、アルトリアさんの首飾りを完成させて、床に着いた。


 はぁ、今日は色々やって本当に疲れた。色々と問題も残ってるし、明日を楽しみにぐっすり眠って、それから考えよう。




 あれ?そういえば何か忘れてる気がするな。なんだろ?





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― 新着の感想 ―
[気になる点] チッ、とっとと厄介払いしようと【思ったに】。 ではなくて、【思ったのに】 正直、槌も振るわず、炉に火もくべずに物を造る【なん】味気ないし、 ではなくて、【なんて】ですね。
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