表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
286/488

 これさえあれば、きっと世界は平和だろっ!?

 「あーあ、ホント、面倒臭い事になったよなぁ」


 「本当でございますね。ささ、御一献」


 「お、悪いなレライエ、お前の慰労の席なのに」


 「いえいえ、キアス様にお酌ができるなんてこの上ないご褒美にございます」


 レライエが嬉しそうに注ぐ果実水を、僕は口にしながら恍惚のため息を吐く。


 あぁ、ここは天国だなぁ………。


 美しい女性に囲まれて、うまいものを口にして、しかもそこが風呂!


 これが至福でないわけがない。







 僕らは元小物連合、現オリハルコン同盟の本部から帰還し、いの一番に風呂へ入っていた。だって久しぶりにコーロンさんとレライエがいるのだ。入らないわけがないっ!!

 コーロンさんとレライエの任務は今日で終わり。明日からはそれぞれ、元の仕事に戻ってもらう。

 レライエはともかく、コーロンさんは毎日一緒にいるわけじゃない。シュタール達が帰ってくれば、レライエとの入浴も厳しくなる。


 なら今入らない理由などない。混浴しない理由などどこにもない。あったとしたらその理由を叩き潰す!!


 「コーロンさーん」


 「うわっ!?こら、裸でくっつくんじゃねぇ!」


 「久々の尻尾、ケモミミー」


 「ちょ、てめっ、どこ触ってやがるっ!?」


 相変わらずコーロンさんは恥ずかしがり屋さんだなぁ。そんな君も可愛いよ。


 「キ、キアス様っ、ささ、もう一献っ!」


 「うん、ありがと。

 今回はレライエのお陰で、大した労力も使わず小物連合を乗っ取れたよ。あの商圏と、何より僕の領地以外で通貨を広めてくれた功績は大きい。大金星ってやつだ。


 何かご褒美を出さないといけないよなぁ」


 それもこれも、レライエがあの時独断専行しなければ成し得なかったのだから、本当にレライエはお手柄だ。


 「そ、それでしたら、ねねねね願わくは、キ、キアス様から、せせせせ―――」


 せ?


 「せっぷんを―――」


 「あ、そう言えば長巻折れたんだっけ?オリハルコンの長巻造ってあげるよ!」


 ただ、長巻の刀身は日本刀と同じ造りなのだが、オリハルコンだと日本刀の良さが潰されちゃうんだよなぁ………。

 切れ味と耐久度。それが日本刀の美点なのに、そのためには粘りのある鉄、それに炭素を加えて鋼にし、炭素の配合率で層を作っらないと無理だ。オリハルコンはただ硬い金属。硬度は鋼を遥かに越えるものの、粘りがない。そして、硬い剣は折れやすいのだ。

 日本刀の硬くてしなる、という矛盾を体現させる機能美、それが出来るのは今のところ、鉄が一番なんだよなぁ。それをオリハルコンでも再現しないといけないんだよなぁ。

 どーすっかなぁ………。


 「武人としての私は快哉を感じておりますが、女としての私は………」

 「レライエ、このアホにそっちを期待すんな。虚しくなるぞ?」


 一度実験はしてみたんだよな、オリハルコンと加工しやすい粘りを持ったミスリルを使って。ただ、やっぱり完全に違う金属の2つを併用するのは難しいという結論になったんだよな。

 ホント、どうすっかなぁ………。


 「ました、ミュルも、ぷっしゅないふ」


 ああ、デロベに放った分がほとんど使い物にならなくなったんだっけ。あいつのあの体、剣には致命的だよな。マルコの圏もそろそろ専用の武器に変えたいし。圏は大きさと重さで、せっかくのマルコの速度が死んじゃうんだよね。


 「おーし、また造ってやるからなぁ。マルコもな」


 「マスタ、ありがと」



 「わーい、ました、大好きぃー」


 2人は相変わらず可愛いなぁ。


 「ま、まおうっ!なぜ小生まで一緒に入らねばならないのだっ!?」


 ああ、そういえば今回は新参のフォルネゥスがいたんだっけ。レライエとコーロンさんは初対面だったよな?


 「レライエ、コーロンさん、あの子はフォルネゥス。新しい僕らの仲間だよ」


 「無視をするな!今まで通り、男女別々に入れば良いではないか!?なぜ一緒に入る必要があるっ!?」


 「まぁまぁ、皆でお風呂に入ると仲良くなれるんですよ、フォルネゥス。だからキアス様と一緒に入って、もっと仲良くなりましょう?」


 「えぇい、放すのだパイモン!小生は婚前に異性に肌を見せてはいけないと、お祖父様に教えられた!何より恥ずかしいではないか!?」


 フォルネゥスはパイモンに『だっこでお風呂』状態だ。極上の感触だろ?


 「コーロンさぁん………」


 「うおっ!?ウェパルがのぼせかけてんな。アタシ、先にあがんぜ?」


 チッ、逃げられたか。


 まぁいい、シュタール達が帰ってくるまで何度でも機会はある。奴等にはそれ相応の餌も与えているしな。







 「お、よぉキアス!今かえ―――」


 「魔王キーック!!」


 「うぉ!?」


 僕の渾身の飛び蹴りは、あっさりとシュタールにかわされてしまった………。

 リビングに戻ると、勇者パーティーが勢揃いしていた。湯上がりに運動させんな!


 くそぅ!?なんだってこいつらこんな早く帰ってきやがった!?まさか、他の武器の存在に気づかなかったのか?

 「いやぁ、実はアルトリアが無茶しやがってなぁ、帰ってこざるを得なかったんだ」


 成る程、アルトリアさんのせいか。

 アルトリアさんに少々お灸を据えようかと見てみれば………………、




 「フーッ、フーッ」




 パイモンとレライエに取り押さえられながら、目を血走らせた鼻息の荒いアルトリアさんが僕を凝視していた………。


 無理、怖い。あんなのに苦言を呈すなんて無理だよぉ………。




 こうして、僕の混浴計画は水泡に帰した。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 【切】れ味と耐久度。それが日本刀の美点なのに、 ではなくて、【斬】ですね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ