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 2人の魔王と2人の魔王っ!?

 「い、今の話は本当なのかっ!?」


 遅っ!?

 反応おっそっ!!


 食いつかんばかりに質問を投げ掛けてくるクルーンに、僕は呆れながら答えた。


 「本人が認めてただろ?」


 「し、しかしっ!!」


 「まぁ、俄には信じられねー話っすよね………」


 3つ目もまた、クルーンに同調して頷く。そしてヌエもまた、それを肯定するように何度も首を上下させている。


 「我輩達魔王は、後天的に魔王になる者と、先天的に魔王である者がいる。前者は第2魔王殿や我輩もそうだ。そして後者が第1魔王殿やアムドゥスキアス殿だ。


 故に、デロベが後天的に魔王になった事は問題はないのだが………」


 「出自が大問題っす。

 勇者ってのは、人間が魔王に対抗しうるための、唯一の兵器みたいなもんっす!それが魔王になっていたなんて、これが問題にならないわけないっす!」


 そうか?

 別に誰が魔王になっても、大差ねぇだろ?


 「そんなん言ったら、タイルだって変わんねーんじゃねぇの?」


 「人間が魔王になるなら問題はないのだっ!!

 勇者が魔王になった事が大問題なのだ!!」


 おいこらヌエ、唾飛ばして喋るなよ。汚いなぁ。

 にしても、皆勇者とか魔王とか意識しすぎなんじゃないの?別に僕たち、そんな大した存在でもないでしょ?


 「わかっていない………。キアス、お前はまるでわかっていないぞ?」


 大袈裟なジェスチャーで首を振るクルーン。なんかイラッとくる。


 「後天的に魔王になった者は、魔王になった時爆発的に強くなるのだ。普通は魔族から魔王になるのだから、そこまで大した能力ではないがな。

 しかし、もしそれが元々魔王を倒すだけの力を持った勇者なら………」


 ちょっと待て!

 今なんつった?後天的に魔王になると強くなる?つまり、生まれながらの魔王である僕って………。


 あ、だからコションが楽勝ムードで攻めてきたのか。


 「僕はこれから最強を目指す事も出来ないのか………」


 「ええい!話の論点はそこではないと言うに!

 まぁいい。至急『逢魔が宴』を開くぞ!場所はキアス、お前の街を貸してもらう!」


 何勝手に話進めてんだ、このピエロ!?僕の了承もなくっ!


 「うむ、布告は我々が担当しようぞ。これから魔王には、それぞれアムドゥスキアス殿の通信用魔道具を持っていていただこう。こういう場合、招集は早い方がいい」


 「そっすねー。では某は宴用の酒と食料を集めておくっす」


 何勝手に話進めてんだ、この3バカ!


 って、もしかしてこれからは僕もこいつらと同列に扱われるのっ!?







 「て言うか―――」


 3バカがワイワイと楽しそうに計画を練っている様子を、僕は少し離れたとこから見ていた。

 大まかな役割分担が決まったところで、唐突に3つ目が僕を見て口を開いた。


 「この結界、攻撃完全シャットアウトはありがたいっすが、いい加減邪魔っす。アムドゥスキアスさん、外してもらっていいっすか?」


 「ああ、そっか忘れてた」


 この場に3つ目とヌエを呼ぶにあたり、2人には「絶対に攻撃が通らない結界を張り、安全に召喚する」と伝えていたのだ。実際、ミュルがあたり構わず投げつけたプッシュナイフが、何本か当たっていた。


 「そうだったね。アンドレ、頼む」


 『承りました』


 アンドレの返答を聞きながら、僕は2人の魔王へ向き直る。


 「ところで、2人は僕とクルーンがそれなりに親密な付き合いを持っているのは知ってるよな?


 この『オリハルコン同盟』に加わることに、本当に不満はないのか?」


 クルーンは僕の仲間になってしまっているので、僕に敵対したり危害を加えたりが出来ない僕の部下、仲間だ。端から僕とクルーンは一蓮托生なのである。

 ただ、そこに加わる2人はどんな心境なのだろう。ただでさえ、今僕は悪どい手段でデロベから組織を奪い取ったのだ。警戒、ないしは不信感を持たれても仕方がない。


 結束が緩くなればデロベの二の舞だ。


 まぁ、僕の協力が無くなればこの組織、簡単に干上がるんだけど。


 「別にないっすねー」


 「そうだな。アムドゥスキアス殿の事は信用している」


 ………………………。


 胡っ散臭っ!!

 こんな薄っぺらい台詞、どこかのピエロが前に言っていた言葉並みだ。信用できねぇー………。


 ただ、それを顔に出すようなら僕は商人として失格だ。


 「そっか!なら良かった!」


 心底嬉しそうに、まるで疑念を抱いていないかのように満面の笑みで、僕は言う。




 「じゃあ僕らは今日から『仲間』だ。

 お互い、疑ったり裏切ったりは無しだよ?」




 僕は2人に手を差し出す。


 「お、おいキアス―――」


 「ああ、よろしく頼む」


 「某もよろしくっすー」


 クルーンが慌てて止めに入ろうとするが、時既に遅し。


 僕の手の上に2人の手が乗り、全員がにこやかに笑っていた。


 クルーン以外。




 召喚陣は消えていた。





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