天空の城っ!?
天空迷宮。
その名の通り、天空に浮かぶ城塞だ。
地上の迷宮から時空間魔法の転移で移動することができ、僕の造るダンジョンの、最終防衛ラインとなる予定だ。これを突破されると、僕との直接対決となる。
嫌だよー。戦いたくないよー。
まず、周囲の長大な迷路。これは普通の石材で造った。だから影も黒い。これは、ただ単にガラスの城が映えるからという理由だけで造ったわけではない。
上空数百mにある入り組んだ迷路は、ぶっちゃけ下が見えると超怖い。なんて。まぁ、そんな下らない理由だけではない。
この空中迷路にもトラップが仕掛けてあり、ガラスにしてしまうと、仕掛けが丸見えなのだ。この迷宮の入り口が、まずはこの空中迷路『蛇の道』となる。
因みに、なぜこの天空迷宮が飛行対策になるかと言えば、僕のダンジョンを覆ってしまうほどのこの長大な『蛇の道』の周囲には、古代魔法の1つ、重力魔法が付与されているからだ。
つまり、この空中に浮かぶ迷路には、強力な重力がかかっている。迷路の上は10倍の重力が発生し、踏破には強大な身体能力か、膨大な魔力量と結界技術が必要となる。既にこの時点で無理難題なのだが、迷路の外、空中では地上の100倍近い重力がかかり、とても飛行どころではない。
迷路上の重力はこれ以上上げると通行そのものが不可能と見なされ、セーブ出来なかった。その周囲は通行には関係ないし、ズル対策にもなるので、100倍の重力も可能だったわけだ。これが今僕に出来る精一杯だ。
因みに、重力に左右されない、体重0のゴースト系の魔物が出るので、戦闘もこなさなければならず、ムズゲーを通り越してムリゲーの域に片足を突っ込んでしまっている。
危険度は7。
さらに城塞の外周部、城壁にも、飛行対策はとられている。
なんとこの城壁、自動迎撃装置付きなのだ。無理矢理侵入しようとすれば、城壁が自動迎撃に入る。勿論、通路に居る侵入者もターゲットにされるので、このダンジョンは中に入るだけでも残機がいくらあっても足りないぜ。
各種最上級属性魔法が近づいた侵入者に容赦なく攻撃を加えるので、これで空から侵入する奴は一網打尽だ。万が一、飛行でこの領域まで来ても、重力で鈍ったスピードでは通過は困難の極み。100倍の重力で飛べれば、の話だが。
因みに、ガラスで出来ているので仕掛けは丸見えだ。
危険度は9。
さらに、城内部にも自重はしていない。各種トラップが待ち受け、既に魔物も配置している。
ある場所ではガラスの中にある仕掛けが丸見えで、それを避けたり解除しようとすれば、部品全てがガラスで出来た透明なトラップが発動したり、いくつも壁を隔てた向こうからゴースト系の魔物が壁を透過して襲ってきたりと、実に危険極まりない仕様だ。
因みに魔物は、1度スマホで生み出してしまえば、後はダンジョンの維持さえしていれば殺されても所定の位置で復活する。復活、というか、同じ種類の別の魔物が召喚される。殺されて素材を剥ぎ取られた残骸も、ダンジョンの維持エネルギーに再還元可能なので、実にエコロジーだ。
城塞内部の危険度は、最高値の10であり、さらに僕も色々工夫を凝らした逸品である。正直、これをクリアされたら、もう僕は相手を称えて素直に殺されてあげる、ってくらいの自信作である。
『なんと言うか、今さらな話ですけど、非常識極まりないダンジョンですね』
アンドレの声も、感心を通り越して、どこか呆れに近い感情が込められている気がする。
まぁ、僕もやり過ぎたとは思う。でもしょうがないじゃんっ!
僕自身は史上最弱の魔王なんだからっ!
少しでも迷宮の難易度を上げて、尚且つ創意工夫を凝らして、ようやく安心できるってレベルなんだから。
これだけやったところで、やっぱりどこか足りない部分があるんじゃないかと不安になりもするのだ。
まだどこかに抜け道があるんじゃないか?
本当にこの程度で、突破されないのか?
むしろ今からでも、とんずらかまして逃げ延びるべきじゃないのか?
そんな事を考えたりもするが、もうどうにもなんないし、諦めよう。諦めて超凶悪なダンジョンを造ろう。
今僕に出来ることを、精一杯やる。
今はただそれだけだ。
うん、良い事言った、僕。
「よっし!じゃあ既存のダンジョンの確認をしようか。
魔物の侵食率はどうだ?」
『はい。今現在、魔物はダンジョンの12%まで増えました。
各所の魔力溜まりの状態も良好です。余程強い魔力嵐が起きたのでしょうね』
まぁ、神様が原因らしいからね。
『しかし、何度も言うように、素晴らしい発想です。
『召喚』を使わず、意図的に魔力溜まりを造り出し、魔物を自然発生させ、それをダンジョンの維持と侵入者対策に当てるとは。
魔力溜まりそのものは単なる魔力ですので、維持も簡単ですし『召喚』に比べてかなりの低コストで魔物を利用できます。
出現する魔物がランダムなのが痛いですが、魔物はその環境に合ったものが生み出されるので、マスターの希望通り、長城迷宮には飛行可能な魔物が増えています』
そうでないものは、城壁から落下してエネルギーになっているそうだ。
『ダンジョンマスターの面目躍如ですね』
「まぁ、それほどでもないよぉ〜?」
『おっと、少しおだてすぎましたね。
豚もおだてりゃ木に登るとは言いますが、あなたは少しおだてただけで、蝋の羽もないのに太陽まで突っ込んでいきそうですね』
相変わらずのアンドレは、この際笑顔で受け流す。
まだまだやることは多いからね。